映画「GODZILLA ゴジラ」を見る~荒ぶる神とあらがう人と……~

 今年の夏の話題作ぐらいはきちんと押さえておきたい。なんとかアルバイトにもありついたので、たまの休みに映画ぐらいは見ても誰も咎めはしないだろう。今回は近年の映画業界がやけににぎわいを見せた、「GODZILLA」を見てきたので、つらつらと書いてみたいと思う。あと「思い出のマーニー」と「トランスフォーマー ロストエイジ」だけは何とか今月中に見ておきたいと思っているので、見たら書きます。とはいえ「トランスフォーマー」については2,3作目をDVDで見直してから4作目に挑みたいと思っている。知識的にも気分的にも盛り上げてから劇場で見ておこうかと。だって3時間もあるしねw(長いよ)
今回のゴジラについては、公開直前に渡辺謙さんがTVにラジオに引っ張りだこで、毎日のようにどこかでインタビューを受けていたほど、事前のプロモーションが過剰だったのだが、それがちっともイヤじゃなかったのは、謙さんのお人柄であり、映画への愛だと思えるあたりは、この際は高評価だろう。これまでのゴジラ映画の前宣伝の淡白さと比較すれば異常なほどであったのだが、それでも見に行ってしまったのだから。


Godzilla: The Art of DestructionGodzilla: The Art of Destruction
(2014/05/13)
Mark Cotta Vaz

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<前フリ的な何か>
 さて今回の映画「GODZILLA」であるが、まずはその位置づけから確認しておきたい。日本におけるゴジラシリーズは、1954年に最初の映画「ゴジラ」が公開されてから、2度の中断を挟みつつも、断続的に2004年に公開された「ゴジラFINAL WARS」で28作品を数えるシリーズとなっている。シリーズを振り返ると、昭和50年の第15作目「メカゴジラの逆襲」の後と、1995年の第22作「ゴジラVSデストロイア」の後の2回の中断があり、それぞれ9年と4年の至福の時を経ての復活となっている。ところが昭和30年に第2作として公開された「ゴジラの逆襲」から第3作「キングコング対ゴジラ」の間も7年の期間が空いているのだ。実はゴジラシリーズは3回中断していることになる。これが何を意味するか?
 「VSデストロイア」の後でゴジラシリーズが中断した際、実はハリウッド版ローランド・エメリッヒ監督による「GODZILLA」が1998年に公開されている。「VSデストロイア」が1995年に公開された背景には、前作「ゴジラVSスペースゴジラ」(1994)から間が空いてしまうために、プロモーション的な事情により穴埋めのために製作されたという背景があったらしい。その後、エメリッヒ版「GODZILLA」公開の翌年にはシリーズ23作目「ゴジラ2000ミレニアム」によって復活の狼煙を上げることになる。「ゴジラデイズ」(集英社文庫,1998)に収録されている特技監督・川北紘一氏の発言によれば、ハリウッド版のゴジラは3部作が予定されており、その製作期間は日本ではゴジラを作らないことになっていたようだ。だが日本でゴジラは作られた。つまり日本におけるゴジラシリーズの復活は、ハリウッド版ゴジラの公開が遠因となって復活している事情がある。そして最初に7年の中断となって復活した「キングコング対ゴジラ」ですら、ハリウッドのキャラクター「キングコング」という稀代のモンスターと、日本の怪獣王が戦うという企画ものであるのだから、こちらもハリウッドが直接間接に関わらず、日本におけるゴジラの復活に一役買っているというわけだ。とあるCSの番組で佐野史郎氏が指摘しておられたが、そもそも54年の最初の「ゴジラ」にしたところで、前年に公開された「原子怪獣現る」を参考にしている。「ゴジラ」の出自とその復活劇の舞台裏には、ハリウッドの動向と相互に関係し合っていたのである。そこから思考を進めると、日本人にとってのゴジラはすでに役目を終えていたにもかかわらず、海を越えたアメリカにおいて、怪獣映画というジャンルが「ゴジラシリーズ」に結実してリスペクトされ、ハリウッド的な災害パニック映画のジャンルと結びついて再評価につながった。もちろんキングコングとの対決などもその一環だったろう。そしてまた逆輸入の形で日本でもエメリッヒ版はそれなりにヒットを飛ばし、コンテンツとしての優秀性を認められて、日本の製作会社自身がゴジラを再認識するという形で新たなシリーズが紡がれてきたと思えるのだ。そしてまたギャレ・エドワーズ監督による本作もまた、日本におけるゴジラシリーズの復活への道標となるのであろうか。

<怪獣映画として>
 本作の映画の内容については、現在公開中であるので詳細は省くことにする。ぜひともこの作品を多くの皆様に劇場でご覧いただきたいからだ。なおネット上に溢れんばかりの作品評に関してはおおむねどれも正鵠を射ているのだが、だからといってあなたの感想や感情はあなたのものである。ネットの情報に振り回されることなく、ぜひとも自分の目で確認した上で、ご自身の感想を持ってほしい。
 そもそも「ゴジラ」という怪獣の出自に関しては、大きくアレンジされている。ビキニ環礁における核実験によって太古の恐竜が怪獣化したというゴジラの出自は、すでにゴジラがいたものとして変更されている。かつて太平洋上で繰り返された米ソの核実験の実体は、実はゴジラを抹殺するためだったというのである。だがそれによってゴジラは核エネルギーを蓄え、ムートーの寄生先として標的となってしまう。ある映画評論家の言によれば、それはアメリカ人特有の呑気な改編だということだが、罪の意識から逃れたいという想いは、何かわかる気がするので、これ以上ツッコまないでおきたい。とはいえゴジラが肥大化し、核エネルギーを蓄えた事情はやはりアメリカおよびソ連にあるわけで、どの道ゴジラを怪獣化させた事情から逃れることはできていない。しかもご都合主義的にゴジラが人間を襲わず、ムートーだけを目の敵にして、ラストシーンでサンフランシスコを離れることにも、まったく納得がいかない。これではアメリカが正義の味方を作りだしたとでもいいかねない。
 怪獣映画として筆者がこの作品に対して思うところは、怪獣の活躍シーンが短いと感じた点だ。もちろん筆者が特撮作品の愛好家であるからして、特撮部分、特に怪獣バトル部分が少ないと感じることは、映画の評価を損なうものではないのだが、終盤のサンフランシスコでの大激闘を抜かせば、それ以外の怪獣登場シーンがいずれも短すぎる上、すぐに人間側やアメリカ軍側にシフトしてしまうのが、やや残念だった。
 本作にはムートーと呼ばれる対戦怪獣が登場し、この謎の怪獣の出自や生物的な行動原理が物語の中核にある。もちろんそれを打倒しようとするゴジラが脇に回ってしまうところが残念な部分ではあるが、このムートーの千両役者っぷりが見事だった。原子力をエネルギーとし、放射能を蓄積させていたゴジラに寄生して生き延びてきた点、雌雄一対で行動し、子孫繁栄を願い人間の持つエネルギーを利用して子孫を残そうとする点、何より電磁波に溢れかえった都市部に干渉し、電気で稼働するものを無力化する爽快さなど、見るべき点は多い。とはいえ子孫を残すあたりはかつての「エイリアン」シリーズを彷彿とさせるし、エメリッヒ版「GODZILLA」も思い出させる。また人間の生活圏の弱点を突くあたりはゴジラシリーズよりも「ガメラ2 レギオン襲来」に登場したレギオンを想起させる。そういう意味でも日本で花開いた怪獣映画のコラージュとしての側面が感じられるのだが、それは批判のタネではないだろう。
「パシフィックリム」でも見られた怪獣バトルのCGは本作でも生かされているが、何より生物的な動きに留意して作られたゴジラとムートーのバトルは見ごたえがある。少なくてもロボット・イェーガーに感じた見せ方のあやふやな点などほとんどなく、タメも見栄えも十分にある絵作りは好感が持てた。さて一部に評判の悪いややでっぷりとしてゴジラのフォルムであるが、インタビューに応えた渡辺謙さんはそれをして「マッチョ」とおっしゃっていた。ところが着ぐるみなら見ていられなかっただろうが、CGでこれが動く分には、かなり見栄えがいいのである。やや前傾姿勢で足も太く、手にも太いボリュームがある筋肉を感じさせるこのゴジラはむしろ頼もしい。

<災害パニック映画として、怪獣シミュレーションとして>
 今回のゴジラ、実はパニック災害映画としての側面が強すぎるきらいがある。先述のとおり、怪獣同士のガチバトルはなりを潜めており、野外で戦っている2大怪獣を尻目に、町やビルの中で震えている市井の人々、アメリカ軍による作戦行動を丹念に描くなどのシーンが連続する。サンフランシスコやハワイの町並みが破壊されるシーンは、昨今のハリウッド映画らしく相変わらず9.11を思い出させるし、ハワイ沿岸での怪獣登場による津波の被害のシーンは、どこか海洋性地震によって引き起こされた津波の被害を思い起こさせるし、何より東日本大震災の際に中継が送り込んできた津波の情景を思い出させる。また物語序盤に発生する原子力発電所で発生する事故は、あの時の福島をやはり思い出させるのだ。90年代以降、湾岸戦争を含めた世界で現実に起こっている大きな事件の映像は、そのままリアルな災害の情報として広く認識されたが、同時に災害のリアルとはこうなのだという映像を刷り込まれてきたということでもある。災害シミュレーションとしての映像も、もはやリアリティを感じる以上にその映像を見せつけられた人々にとっては、決して気持ちの良いものではないかもしれない。また核エネルギーを吸い込んでエネルギーとするがゆえに、放射能を無効化するムートーという存在が、原発事故の被害とその後の政府の対応を批判するネタになっていることで、その重さから逃れようとしていることは明らかだ。ゴジラというキャラクターの宿命性は、こうした設定と相まって希釈されてしまい、そこから逃げるように設定は変更される。それを否定語として語ることはたやすいと思える。そこを批判するのではなく、そこからどう立ち上がるかを問題にするのであれば、逃げ惑う人々、ゴジラを含めた怪獣災害に立ち会ってしまった人々を描くことに、なんら問題はないと思う。とはいえ、あまりにもエンターテイメントに寄りすぎていて、深刻さがないのはいかんともしがたい。

 「ガメラ2 レギオン襲来」は、怪獣災害シミュレーション映画として大ヒットした映画であるが、もちろんその萌芽はゴジラシリーズにもあった。とはいえ現行兵装のほとんどが無力な怪獣相手に架空の兵器に頼らざるを得ず、最後の手段はゴジラと戦う対戦怪獣に運命を委ねてしまうあたりの呑気さは、ゴジラシリーズの問題点でもあった。その意味においてゴジラシリーズに怪獣災害シミュレーションとしての設定を正しく持ち込んだ作品だといえる。ただし、エメリッヒ版を思い出してみれば、ゴジラが生物学的に子孫繁栄を望んでエイリアンのごとき卵を山のようにうみつけていたり、ビルの谷間をトカゲのごとく逃げ回っていたりという表現は、現行兵装で何とかなりそうなゴジラというパワーバランスが絶妙だともいえるわけだ。だからといって評価が高まるわけではないけれど。

 さて、最後に指摘しておきたい事項がある。日本では科学者・芹沢役で登場する渡辺謙氏がとにかくTVやラジオにでまくって過剰なほど宣伝していた本作であるのだが、彼の役である科学者が物語を牽引するのはほぼ前半で終わりなのである。しかもゴジラの研究を長年務めながら、謙さん演じる科学者は核ミサイル攻撃を制止する以外、目立って科学者的な立場でゴジラに人間が相対する方策についてアドバイスするシーンも少ない。日本人科学者として、本来の設定のゴジラであれば、アメリカ軍にいくらでも物の言いようってもんがあるだろうが、ゴジラの設定改編により日本人科学者は発言を封じられてしまっているのである。日本人としても科学者としても発言を封じられている日本人俳優が、果たしてこの役どころに相応しかったのかどうか?

 今回は映画を見たばっかりなので、印象論で書き終えた感じが強い。時間を置いて映像ソフトで自宅で見直すと、また違った感慨がわいてくるかもしれない。少なくても筆者にとっては美点も多いし、欠点も多い。けれどそれを含めて丸っとまとめて見たとき、怪獣映画というジャンルの空想科学映画としては大変面白いと思える作品だった。筆者が上記で指摘した事項は大体において瑣末な点ばかりだから、気にしなければどうということはない。むしろ日本の怪獣映画の枠組みに災害シミュレーションやリアリティを付け加えて、エンターテインメントとして作られた映画としては、十分に楽しい映画であった。ソフトの発売を心待ちにしたい作品だ。
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コメント

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No title

どうもです!

色々と観たり見たり聞いたり考えてみた結果、もうゴジラ、延いては怪獣に関しては、「巨大で強力でどうしようも無い圧倒的な存在」であってくれれば良く、怪獣映画はそれに立ち向かう、或いは向き合っていく人々をどういった視点で描いているのか、という点を観れば良いか、みたいな考え方になってきました。

今回の『GODZILLA』は、色々と言いたい事もある作品ではありましたが、その点で言えば本当にギャレス監督はほぼ100点満点の「怪獣映画」を創ったと言え、今はただただ「有難う!」と言いたい気分ですかね。

No title

飛翔掘削さま

 コメントありがとうございます。

 今回のこの作品、なんだかんだと私も好きですよ、やっぱり。きっと掘削さんもお好きなんじゃないかとは思ってましたし。ちゃんとゴジラではありましたし、見せ方がやっぱり上手くって、見せたい絵が見たい絵になっている画像作りは、作り手と観客の幸せな共犯関係ですから。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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