「中二病でも恋がしたい!」シリーズ~物語の中心にいる中二病~

 「中二病でも恋がしたい」(2012)、「小鳥遊六花・改」(2013)、「中二病でも恋がしたい戀」(2014)と3作続けて見た。いわゆる「中二病」を患った中高校生によるラブコメであり、どこかのほほんとした雰囲気の作品だったので、ぼんやり見ていたのだけど、TVシリーズの終盤あたりの緊迫感のある展開は充実していて、なかなかに見ごたえがあった。ラブコメにもいろいろあるし、すべて見ているわけではないのだが、「中二病」で「京アニ」で可愛らしいぷにぷにっとした少女たちが粒ぞろいとなれば、見ないわけにはいかなくて。どうやら筆者は京アニ系列のぷにっとしたほっぺたの少女キャラが好みなのだと、今さらのように気が付いた。これはもう「たまこラブストーリー」をどうにかして見なければと。それにしてもこの作品といい、「けいおん!」や「たまこまーけっと」「ハルヒ」などの京アニ作品は、小さな人の機微を細かく拾っていくのが上手いなあと思う。細かい演出の積み重ねと、印象的なシーンの組み合わせで、セリフではなく空気感を漂わせていく。もちろんそこに合わせていく声優さんたちの演技や音楽などがあって、それらをすべて演出していく。アニメとはなんて楽しいんだろうと思わせてくれる。ま、京アニだけじゃないけどさ。

<中二病とは・・・?>
 本作に登場するキャラクターのほとんどが「中二病」を患っているのだが、主人公・富樫勇太や丹生谷森夏のように、かつて中二病を患っており、現時点でそれを過去のものとして他人に隠している人物もいる。実は中二病としてはこちらのほうが厄介で、他人に嫌われようと無視されようと、小鳥遊六花や凸森のように現在進行形で中二病を発症しているほうが、本人的には気が楽だろう。もちろん本人以外の人間にとっては理解できないだけならまだしも、身近にいる人間にとっては恥ずかしいことこの上ない。

 少なくとも劇中で語られている「中二病」というのは、自分が異世界における超常の能力を何らかの理由で宿したことにより、自分が現世界の人間とは異なることを主張する人々かに見える。この世界ではまったくの平凡な自分であるが、実は異世界の住人であり、他人とは異なる能力によって余人とは差別化された存在であると思い込む、それがこの物語でいうところの「中二病」のようだ。自分がこの世界で特別な存在であること、排他的な自意識、平凡な自分からの脱却の欲望。他人と相いれないことを故意に選び、他人と違うことに喜びを覚え、そのくせ仲間と認識した相手とは親密になろうとする。他人を排除するくせに同族を欲するというアンビバレンツな感情を持て余した人々。それゆえに、類は友を呼ぶ的効果で寄り集まりやすいのかもしれない。それは六花が勇太に近づいた理由、凸森が六花を弟子とした理由、丹生谷や勇太が六花たちを放っておけない理由でもある。この作品のタイトルが「中二病“でも”恋したい」となっている理由はここにある。第1期の物語の前半は、こうして中二病を現在進行形で患ったり、過去に中二病を発症していた事実を隠して生活し始めた少年少女たちが、放課後に寄り集まり、ドタバタな日常を見せるという件が散見される。勇太や丹生谷にとってはかつての自分を六花に見出して恥ずかしくもあり、その恥ずかしさの裏返しから六花や凸森に対してキツくあたることになる。でもその会話のやり取りが楽しくて、自分たちだけの空間が楽しくて仕方がない六花たちの喜びは、自分がおたくであることをつまびらかにできずに鬱々としていたかつての自分たちを思い起こせば、うらやましいことこの上ない映像に移ったことだろう。六花や丹生谷の可愛らしい魅力的なキャラクターもさることながら、この作品を多くのファンが支えた事情は、内在するこうした感情の発露であろうことは想像に難くない。そう、別におたくでなくても、自分を理解してくれる誰かがいればいいのに。それがなかなか叶えがたい願いであるからこそ、この作品が楽しく目に映るのではないだろうか。

<中二病がドラマを動かす>
 そんな六花や勇太たちの楽しい日常を活写するだけでは物語は成立しない。この物語の白眉は、物語の中心に「中二病」を発症すること自体の問題提起と、発症したが故の問題提起が物語に密接にかかわってくることにある。第1期においては六花の中二病発症が父親の死を受け入れがたいことによる。しかも発症した中二病故に母親との接点が失われてしまい、孤独となる負の連鎖が待ち受けていた。それでも自分自身の弱みを他人に悟られまいと、六花は中二病的な事象にまい進する。彼女の悲しみはいつものような中二病的発言からは推し量りにくいから、物語後半まで勇太は知らないままでいるのだが、ダークフレイム・マスターと邪王心眼による中二病的交わりにより、二人は互いを意識し始め、ついには男女交際へとたどり着くというのが第1期の物語であった。

 一方第2期においては、序盤で勇太と六花が同棲することになるという、現実には考え難い超常現象(笑)がありはしたものの、中二病ゆえに二人は親密度を増していくのかと思いきや、むしろ中二病的契約ゆえに、どうやってその先に進んでいけばいいのかわからないまま、右往左往する。二人の行く末を見届ける覚悟を決めた丹生谷やくみん先輩ではあるが、日常のドタバタにまぎれて一向に進展しない二人にイライラしだすことになる。それでも中二病的ではない方法論で進展しようと勇太は努力する。中盤の修学旅行の件はまさにそういう話だ。つまり中二病が物語と主役二人の恋の妨げになっているのだ。そんな中、かつて六花が暮らしていた勇太の部屋の上には、かつて勇太が中二病を患う原因となった一人に少女が引っ越してくる。その少女は七宮智音。彼女は魔法魔王少女を名乗り、最初こそ六花と敵対するのだが、すぐに凸森たちとも打ち解ける。そして楽しい夏休みを経て、ついに六花は勇太との仲を進展させるべく行動を開始する、というのが第2期の物語となっている。

 第2期の起爆剤である七宮智音という少女の存在が、ここでは要チェックとなる。1点は六花にとっては勇太をはさんでの恋のライバルとなることであり、もう1点は中二病を前提としての恋については六花の先を行く存在であることだ。物語の中盤で恋のライバル的な部分は一度なりをひそめるものの、かつて勇太に対して抱いていた想いを忘れずにいた智音は、一度は六花と勇太の仲を応援することに決めてから苦悩し始める展開がある。これはもう本当に切なくて仕方がない展開だった。しかも勇太の気づかないように声を押し殺すように一人苦悩している姿には、胸が締め付けられる思いがした。そしてかつての自分の恋が中二病的な自己表現の中では実らない経験から、六花に対して忠告をすることになる。この忠告によって六花が次の行動を起こすきっかけを作ることになるのだが、六花の意地なのか、それ以外の表現方法を知らないのか、六花はやはり中二病的表現の中で勇太との仲を進展させようとする。勇太が捨てたはずのノートに書かれた謎を解き、3つのアイテムをそろえることに固執する六花の姿は、それと知らずに振り回されている勇太が凡庸に見えてしまう。六花が勇太に見出している魅力は、なにも中二病的な部分だけではないはずなのだが、六花のがんばりが勇太の普通の高校生男子としての恋の努力が没個性に見せてしまうのだ。それでもすべてを知った勇太が、ついに最終回で六花の呼び出しに応じてキスをする件は、ラブコメの王道としての気持ちのいいラストであった。

 「中二病でも恋がしたい!」という2シーズンの作品と、第1期の総集編的な映画「小鳥遊六花・改」は、そのタイトルにある「中二病」にたがわず、物語の中心に間違いなく「中二病」が存在する作品であった。もしこれが中二病全開の、設定まで中二病的な物語であれば、いわゆる「セカイ系」的な話になるところを、あくまで中二病という、外から見た批判的な言葉によって表現された個人の内世界を、問題提起をラブコメに上手に組み込んで物語として紡ぎだされた作品だったことが、この際はとても面白いと思うのだ。見ている自分の内面までかきむしりたくなるような表現があったかと思えば、その先にある夢も絶望も全部否定せずに物語に組み込まれているところが、筆者がこの作品を面白いと感じる理由だ。もちろん製作会社である京都アニメーションというスタジオならではの上々の出来だと思うし、細かいキャラクターの機微を、つぶさに拾い集めてフィルムに焼き付けている。「らき☆すた」や「日常」ラインの作品も面白いけれど、「ハルヒ」といい「けいおん!」シリーズといい「たまこまーけっと」といい、さすが京アニのブランド力には脱帽する。もちろん「たまこラブストーリー」も期待するや大である。
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