五星戦隊ダイレンジャー~その2・6000年の縁故と因縁~

 池田憲章氏による「日本特撮映画史 SFヒーロー列伝」によれば、いわゆるギャグ怪人の走りは、「人造人間キカイダー」に登場した「カイメングリーン」や「バイオレットサザエ」などに見られるのだが、より直接的には戦隊シリーズの祖である「秘密戦隊ゴレンジャー」にさかのぼる。物語当初こそ不気味な雰囲気を漂わせた猛者が、イーグルの各支部を攻撃したり、毎度作戦を立案実行しては、ゴレンジャーと丁々発止の戦いを演じていたが、そのうち作戦や物語よりも仮面の比重が増していくこととなり、その仮面にキャラクターが引っ張られるようになる。人間の体に明らかに頭身が偏った大きな仮面というのは明らかに面白おかしいのである。奥さんのグチを聞くストーブ仮面の悲喜こもごも、野球仮面といいながら頭は単なる野球のボールといういでたち、日輪仮面のサイケデリックな秀逸なデザイン、だらしないデザインの牛靴仮面の作戦実行能力、ただ走るという設定だけが先行しすぎな機関車仮面のシュールさなど、枚挙にいとまがない。こうしたユニークな仮面怪人は、どのシリーズでも形を変えながら登場するのだが、このゴレンジャーに登場するギャグ怪人の正当直系こそ、本作に登場するゴーマ怪人ではないだろうか。

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<中盤の物語の流れ>
 鏡化粧師の体内にとらわれていたダイ族の戦士クジャクが復活するも、ガラへの復讐にとらわれるあまり、人の命も顧みない非情の戦士と化していた。唯一クジャクと気が同調した大五は、その復讐にとらわれた心がいつの日か癒えるのを待つしかない(9,10話)。婚約者を拉致した歌舞伎小僧を追って来日したリンの祖父の弟・虞翻(ぐほん)は、ダイレンジャーが歌舞伎小僧を倒した後、ある場所に一振りの剣を突き立てる。その剣・白虎真剣を抜く勇者が現れる時を待つために(12,13話)。その時は意外に早く訪れる。それはダイレンジャー6人目の戦士の誕生でもあった。突如としてリンの前に現れた少年コウ。この少年こそ6人目のダイレンジャー・キバレンジャーとなる運命の子だ。だがキバレンジャー誕生を阻止するために、ゴーマ元老院は阿古丸と地獄の三人官女を差し向ける。ダイレンジャーと三人官女の激闘の中で、白虎真剣を引き抜くコウ。コウはダイレンジャーに正体を隠したまま、6人目の戦士となったのだ(17話)。阿古丸はキバレンジャーをゴーマに引き入れる作戦だとうそぶくが、キバレンジャーの最初の戦闘で三官女のうちの一人を打ち破る(18話)。母親と生き別れて身寄りのないコウはリンと一緒に暮らすようになるが、阿古丸の策略により母親への思慕をかき乱される。将児の説得により母親への憎しみを断ち切るコウであったが、事態は風雲急を告げていた。ついに6体目の気伝獣が誕生するというのだ。またも気伝獣誕生を阻止するために暗躍するシャダムたちは、亮を人質にとることで、気伝獣誕生に必要な気力をそぐ作戦に出るが、阿古丸の邪魔立てによって亮は奪還され、気伝獣ウォンタイガーが誕生する。激しい戦いのさなか、阿古丸はその余波で落命。龍星王以外の気伝獣と合体し、「牙大王」となって三人官女の残る一人を葬った。

<ゴーマ、その実態>
 6000年前にダイ族と争ったゴーマ族。なぜ2つの部族が争ったのかは定かではないが、この時の戦いで二つの部族は消え去り、生き残った最後の部族が我々現人類の祖となったということらしい。さてそのゴーマであるが、登場するゴーマ怪人は「物+役職」で構成される名前を持っている。その役職がはたして6000年前のゴーマの社会にもあったのかどうかも怪しいのだが、前線指揮官である3幹部が中佐や少佐といった階級が存在することにより、役職は別としても、なんらかのヒエラルキーが存在する社会であることは想像に難くない。神父とか仙人とか腹話術師とかはまだしも、小僧とか大王とか大将とか、もう説明のしようがない連中もいるのだけど。そうなるともうこの役職そのものは実態があってないようなもので、もはや「自称」以外の何物でもなさそうだ。16話ではハニワ腹話術師の発する光線によって石に変えられない子供は、ゴーマ族の生き残りの子孫だという設定もあり、作戦指揮を執ったガラの弁によれば、ゴーマの子孫を探し出し改造することでゴーマ怪人が誕生するのだという。なお45話以降に登場する嘉挧や子竜中尉の鎧装束やシャダムの鎧を見ていると、まるでゴーマ怪人と変わらない姿に見えてくる。ここからはあくまで推測ではあるが、ゴーマ怪人は、本来はゴーマ一族の人間が戦時装束として着ていた鎧が、何らかの秘術により装着者と同化することにより誕生するのではないだろうか?

16話で登場した田豊将軍の言によれば、ゴーマには元老院という上部組織があり、元老院の指示に従ってシャダムたちは動いていたようだ。そんなゴーマの実態が垣間見えるのが20話「初公開ゴーマ宮」だ。そのトップにゴーマ十五世をいただき、その下に元老院を置き、シャダムたちや田豊将軍、阿古丸などの実戦指揮担当がおり、配下のゴーマ怪人が実戦を担当するという組織構成だ。ゴーマ宮はどことも知れぬ山中に浮いており、一つ目の付いた逆四角錐の巨大な建造物からなる。しかも30話終盤で判明するのが、ゴーマの3幹部が活動する背景に浮かんでいる銀色の球体は、ゴーマ十五世の第三の目であり、ゴーマ宮にいながらにしてすべてを見通していたというのである。配下の者がゴーマ十五世に直接謁見できることはまれで、謁見の際には仮面を必要とする。その身なりに反して甲高い声でしゃべるゴーマ十五世は、権威よりも無邪気を感じるのだが、元老院や作戦担当の配下があげてきた作戦をつまらなそうに認可する様子を見る限り、実はこの世界の支配など、どうでもいいのかもしれない。むしろ変人奇人といわんばかりのゴーマ怪人が邪気たっぷりにこの世を謳歌できる世界を目指しているようにも見える。ゴーマ怪人の引き起こす事件そのものが、シャダムたちの深謀遠慮のどのあたりに位置しているのかは計り知れないが、基本的に現代社会に混乱をもたらすという意味では、ほぼ愉快犯に近い。むしろ怪人自身が作戦を楽しみ、怪人自身の趣味や楽しみを優先しており、そのついでに社会が混乱するという段取りで作戦が組まれているようなのだ。ある意味で方向性が偏っているし、金儲け一辺倒だった「未来戦隊タイムレンジャー」に登場するロンダースファミリーにも通じる部分がある。前段で示したように、ゴーマ怪人がゴレンジャーのギャグ怪人の正当後継である最大の理由は、この愉快犯的な行動動機にあるのかもしれない。

 さらに付け加えるなら、怪人を支えた俳優や声優の快演もまた、それを支えている。鍵道化師を演じた日下秀昭、磁石神父の赤星昇一郎、早口旅がらすの郷田ほずみ、サボテン将軍の斉藤暁、鳥カゴ風来坊のでんでんなどは、変身前と変身後の声を両方演じている点で実にユニークな怪人像を提供してくれた。これを見ていると、ゴーマ怪人はもともと人間体があった可能性を示唆し、前述の鎧を着たゴーマ一族が秘術によりゴーマ怪人になったという筆者の説を後押ししてくれそうな気配がする。また歌舞伎小僧を演じた千葉繁の快演は、声優による仮面演技の極致ともいえる名人芸であり、アドリブ入れまくりのアフレコは驚愕ですらある。こうした演者たちの演技によっても、ゴーマ怪人は他の怪人たちと差別化されているのである。

<因縁と怨恨と>
 わりと本作についてはよく言われることではあるが、本作では敵味方入り乱れての相関関係が乱立し、個々の関係性によって複数のエピソードが成立している。それも個々のエピソードを、それぞれに担当する脚本家が執筆する体制がとられている。全体像が分かりづらい人には、28話「総登場だぎゃ‼」を見てもらえればわかりやすい。最初に関係性が成立したのは大五で、9話で初登場したダイ族の勇者・クジャクという女性戦士と心を通わせる一方で、クジャクがうぬぼれの代償に鏡化粧師に閉じ込められたきっかけを作ったガラに恨みを抱き、ことあるごとに衝突することになる。その一方で美しくたおやかなクジャクに惚れた大五は、彼女に復讐を忘れてほしいと立ち回ることになる。16話では人間の少女を使ってガラをおびき出そうとするクジャクだが、少女の優しさ、大五の優しさに触れて閉ざしていて心が開きかける。しかし16話のラストでクジャクの体には異変が起き始める。それと知らずクジャクを追い求める大吾の想いがまさに爆発するのが23話「純愛まっしぐら」だ。ゴーマ怪人・陽炎頭巾の体内に閉じ込められた大五とクジャク。クジャクを助けんがために己のこぶしで内側から陽炎頭巾を倒そうと奮闘する大吾にクジャクは涙する。だがクジャクは6000年前とは異なる汚れた大気によって体を蝕まれていた。彼女を助けるのは「聖なる孔雀の涙」だという。クジャクは聖なる孔雀の涙を探して健全な体を取り戻し、ともにゴーマと戦うために旅立つことになる。

 次はリンだが、彼女の場合はなりゆきでコウと一緒に暮らすことになり、コウは自分の正体も明かさないまま、リンのそばで暮らすことになる。このコウの母親との関係性、阿古丸との対立が宿命として描かれ、リンはコウの傍らにいてそれを見守るしかないという状況だ。17話で初登場したコウは、母親との関係性を揺るがせられる19話を経てダイレンジャー5人と仲良くなっていく。21話で6体目の気伝獣ウォンタイガーを手に入れた絶好調の裏側で、コウをゴーマに引き入れようと画策する阿古丸の策略がうごめいていく。21,22話では、阿古丸は既に探し出して幽閉していたコウの母親を、コウの目の前でまたも行方不明にしてしまった。29、30話の2編はコウの過去がダイ族とゴーマ族の両方の血を受け継いでいることが明かされると同時に、キバレンジャーの正体がダイレンジャーにバレる話でもある。そしてコウが10歳の誕生日を迎える前に母親に会わなければ、母親がコウに刻んだ封印の効果が解けて、コウはゴーマになってしまうという事態となり、リンも母親探しに躍起になるという流れ。

 また将児はゴーマの落ちこぼれ3人組、いわゆる「3バカ」との関係を密にしていく。3バカ初登場時は15話で、亮の妹を人質にしてサッカー勝負を挑む話だった。ところが24話で再登場してからは、なぜか元暴走族でボクシングと出会ってから更正したという将児と、不思議にも意気投合していく。野球勝負、バイク勝負と重ねてくうちに、将児は3バカとの絆を強めていく。
序盤で張遼との物語が先行した亮は、26話で登場する魔拳士ジンとの確執を深めていく。このジンがまた面白いキャラで、最初は全くゴーマと関係ないところで亮と対立する闇の空手家として登場するのだが、拳法家として成長著しい亮に一敗地にまみれると、ジンは力を求めてザイドスの誘いに乗ってゴーマの力に取り込まれるのである。その後再び亮とあいまみえるジンはすでにゴーマの魔拳士と化しており、ザイドスの命令を無視して亮を目の敵にすることになる。
和は28話で偶然出会った亀夫と仲良くなるのだが、この亀夫の正体こそ7体目の気伝獣ダイムゲンであるという驚愕の事実が隠されているという話になるのが31話である。なお亀夫の初登場は22話で、その後も何度かダイレンジャーと絡むシーン(3バカ野球勝負の審判とか)が登場するが、はじめはこの一般人にどんな秘密が隠されているのか知らぬままに話が進むので、視聴者は2度驚くことになる。

 さてそれぞれの事態の顛末は次回にゆずるが、こうした三者三様ならぬ五者五様の物語が、メインとなるゴーマとダイレンジャーとの闘争に華を添えていく。複数の因縁や怨恨の物語が本編とどうやってかかわるのか、物語のメインストリームとしては大五とクジャクの恋愛ものとコウの母親探しではあるのだが、こうした複数の物語が次の物語の導引になっていく。もちろんこうした物語以外にも面白い話がいくつもあるのがダイレンジャーのクオリティなので、次回はそのあたりのお話をしてから、怒涛のラストの話題で盛り上がってみたいと思います。
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コットポトロの出自について

えー、Twitterにて、とある方より、「ゴーマ怪人の出自同様、コットポトロの出自についてはどうなのか?」というご質問をいただきましたので、こちらのコメント欄にて考察してみたいと思います。

実は、コットポトロの出自に関しては、いろいろ考えても自分の中で回答にたどり着かず、本文中ではごまかしてしまったのですが、さすがに突っ込まれてしましたwww
んで、再考察した結果、いくつかの可能性を思いついたので、列記してみようと思います。

1.泥人形
 もっとも可能性が高いのは、シャダムやゴーマ15世同様に泥人形であるというもの。この時、シャダムすら泥人形であり、これを発生なさしめたのが本編中にあるような「人間の悪意や邪念」だとしたら、人間が普遍的に持っている雑念が形を成さしめたのが、ゴーマの一般兵であるコットポトロかと。もちろんそれを作っているのはシャダムなりゴーマ怪人や元老院のお歴々だとして、いわゆる傀儡を作ることを生業にして、6000年前のシャーマンのような力をもった人たちがゴーマだとしたら・・・?なんて想像もできるわけで。

2.ゴーマの活動による副産物
 ガマグチ法師の行った「ニードロブードロ」、ハニワ腹話術師がしていたゴーマの血統の探索による怪人製造など、人の命を狙うものよりも、生贄や人足を必要とする儀式などを執り行うゴーマの活動によって、余剰の人員や儀式後に拉致してきた人間を使って再活用する。それがコットポトロではないかと。鍵道化師が人間の魂だけを抜き取る方法や、口紅歌姫による催眠など、人間を操ることに長けたゴーマ怪人はいくらでもいます。鏡化粧師や豆腐仙人なども拉致してますし。こう考えると、ゴーマは最下層の人間を積極的に再活用している可能性に思い当たると、彼らゴーマ怪人の能力にも納得がいきます。

3.妖力の実体化
 これは本編上ではなんの確証もない話ですが、シャダムやゴーマ15世などの妖力が強大であるため、その妖力を直接実体化させて最下層の下っ端として生み出されたもの、それがコットポトロではないかと。実は阿古丸復活の鍵となった地獄の穴をあける作業を、どうしてコットポトロにやらせないんだろうかと、放送当時から不思議で仕方なかったのですが、戦闘に必要な時にはコットポトロを繰り出してくることを考慮すれば、儀式的な理由で拉致した子供を使った側面と、そんなことにコットポトロを使う必然がないという側面が考えられます。

以上、コットポトロに関する考察でした! 
キランストさま、ご質問、ありがとうございました!
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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