ハカイダーは網走の夢を見るか?~劇場版「人造人間ハカイダー」~

 かつて「人造人間キカイダー」という作品に、「ハカイダー」という名のキャラクターが登場した。悪の組織「ダーク」の首領・プロフェッサー・ギルが、作らせた戦闘ロボットは、宿敵キカイダーの抹殺のみを至上の目的として生まれ、生みの親である光明寺博士の頭脳を頭に抱いて登場した。脳が見えるグロテスクさ、キカイダーおも追い詰める強さ、ハカイダーショットのかっこよさ。全身黒ずくめの体に秘められた魅力は計り知れない。その魅力を十二分に解説しているのは、「宇宙船」21号にて行われている特集ページだ(あまりに古くて申し訳ないが)。これほど魅力的なキャラクターなら、スピンオフさせたい気持ちもよくわかる。しかし悪役を主役にできることなんて、できるのだろうか? それを20年の時を経て実現させたのが、今回のお題である劇場版「人造人間ハカイダー」である。

 「人造人間ハカイダー」は、'95東映スーパーヒーローフェアのメインプログラムとして上映された。併映が「超力戦隊オーレンジャー」と「重甲ビーファイター」であり、共に新撮された作品であった。「ハカイダー」の監督は雨宮慶太監督。前年および前々年に「仮面ライダーZO」および「仮面ライダーJ」により、本作同様にスーパーヒーローフェアのメインを張った作品で成功を収めた。その彼が、満を持した3年目に、「ハカイダー」をひっさげてきたのだ。当然前年までの功績を考えれば、その期待はいやでも上がってしまう。

 物語は海の孤島に幽閉されていたハカイダー=リョウ(演 岸本祐二)が、トレジャーハンターにより覚醒するところからスタートする。トレジャーハンター達を惨殺したハカイダーは、一路「ジーザスタウン」を、愛車ギルティで目指す。「ジーザスタウン」とは、グルジェフ(演 本田恭章)により支配された近未来国家であり、平和や自由を標榜しながら、反乱分子を力で押さえつけ、必要に応じて手術によって洗脳することで、人間を支配する国だ。ジーザスタウンに到着したハカイダーは、タウンの命令を受け付けず、破壊の限りを尽くしながらタウンに入る。その時、グルジェフの支配に反抗するレジスタンスの一人である少女に出会う。少女の名はカオル(演 宝生舞)。彼女はこの国の自由を勝ち取るために、レジスタンスのリーダーとなっていた。彼女が見る夢は、いつも黒い騎士が鎖に繋がれた自分を、解き放ってくれる夢だ。その黒騎士の姿をハカイダーに重ねてしまうカオルは、ハカイダーをレジスタンスに迎えようとする。しかし私欲のために戦う他のレジスタンスは、それを良しとしない。と、突然強襲されるレジスタンスのアジト。ハカイダー抹殺のためにグルジェフが送り込んだ尖兵だ。グルジェフの作った最高のロボット・ミカエルが指揮を執る。歩兵がはなつ銃弾に倒れるカオル。そして奴らへの復讐を誓ったハカイダーは立ち上がるのだ、というお話。

 「仮面ライダーZO」のとき同様に、物語は至極単純明快であり、むしろアクションを中心に据え、アクションシーンを幕間で繋ぐ構成だ。すでに手慣れた雨宮監督一座の興業だが、今回の見所は、前半に頻出するバイクチェイスのシーンだろう。急に止めたギルティの後輪でふっとぶ後続のバイク、バイクの上同士のアクション、大爆発をこともなげに通過するハカイダーなど、いくらでも見応えのあるシーンが登場する。いくら「仮面の世界」のことだといっても、実際に行うのは人間である、決して安全などではない。
 そしてストーリーの流れに従って怒りのボルテージも沸騰しかけた頃に、ラストバトルにおける大アクションシーンが登場する、多くの歩兵をばったばったとなぎ倒す姿は、まさに爽快感たっぷりだ。ミカエルとの対決では、機械同士が戦うために、「カイ~ン」という金属音まで響き渡る。白い柱の内側が赤いのも、グルジェフの醜悪な二面性を移すようで、ぐろい。軽やかなライダーの動きと異なり、地に足をつけて殴り合う様は、人間を超越した者の重さを感じる。そしてラストシークエンスでは、ハカイダーに破壊されたミカエルが、さらに醜悪なミカエル戦車となり、ハカイダーを襲う。人形を使用したミニチュア特撮独特の動きが、やはりミカエルの気持ち悪さを醸しだす。その声が井上和彦さんの清潔感のある声であるから、その逆効果たるや絶大だ。そして戦車が、ハカイダーの隠し技で破壊されるお楽しみも用意されている。

 ラストバトルにおいて、「貴様が正義なら、俺は悪だ!」とのたまうハカイダー。お読みいただいたとおり、ハカイダーは徹頭徹尾「悪」を標榜しているが、正義をうたうグルジェフが、いかに正義をうたおうとも、それが偽りの正義であることを、フィルムが証明する。悪であるハカイダーが、偽りの正義を憎み、少女を助けたくなるようなシチュエーションを準備し、グルジェフと対決させるお膳立てを整えているのだ。「貴様が正義なら、俺は悪だ!」という台詞には、グルジェフたちへの皮肉が込められている。「偽りだとしても正義を標榜するのなら、俺は悪と呼ばれてもかまわない」という意味だ。それは逆に言えば、自分は善悪ではなく、自分の存在意義をアンチテーゼに求めている証である。ここにアウトローとしてのハカイダーの神髄が垣間見える。

 そうはいっても、こういう展開、どこかで見覚えはないだろうか? 主人公がわけもなく立ち寄った町で、理由も知らさないまま虐げられ、同じ境遇の女性が殺される。その復讐に駆られた主人公は、悪いやつらをばったばったと倒していく。これって、ほら、ヤクザ映画じゃん。つまり「人造人間ハカイダー」という映画そのものの基本コンセプトは、ヤクザ映画で成立していると言ってよい。そして最後の大立ち回りも、「暴れん坊将軍」や「水戸黄門」などようなおなじみの構成である。そう考えると、カオルの立ち位置も、なぜハカイダーが理由もなくジーザスタウンに立ち寄ったのかも、理解できる。つまりヤクザ映画や時代劇のリテラシーに沿って、物語が紡がれてきたからである。これは脚本家を責めているのではない。むしろ製作会社の「東映」の十八番を、十二分に理解した結果であると思うし、ハカイダーが「悪」という一文字を背負ったままで、主人公となる可能性を模索した結果である。そしてここに、20年の時を経て、ハカイダーは主役を務める事になったわけだ。

 しかしながら、この物語が、視聴時に多少古くさく見えたのは私だけではなかったようだ。ヤクザ映画全盛時代はとうに終わりを告げ、東映はあたらしい物語を模索する一方で、「Vシネマ」という形態で、ヤクザ映画のテイストを残し続けた。映画の世界で、「お涙ちょうだい」ものが幅をきかせている昨今でも、こうした毒をはき続ける東映という会社にとっては、子供番組でも毒を吐くだけの度量を求められてもいいはずだ。清濁併せ持つキャラクターとストーリー、それは東映作品が放ち続ける魅力に他ならない。

 
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コメント

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(妄想・ω・破竹)

雨宮版ハカイダ~とおなじくっヤクザ映画を物語づくりにょ基底にっっおくと見られゆワンピ~スをを愛読してまつ。
(^^)


さぃきん『猿の惑星 新世紀』を見てきたのでしが、、
むかし雨宮版ハカイダ~を妄想にょなかで猿惑世界に放り込んだうぇで、脳内にてっハカイダ~に語らせていたセリフをを思いだしましゅ。。。。
(カオルに似た少女を虐待する類人猿たち。ハカイダ~怒りの変身!)



「同じだ。 お前たちも・・・・・・
人間たちと同じように、
お前たちも醜い!」



(*人間でも猿でもない異形のものの弾劾にうろたえ騒ぐばかりの猿たち・・・・)

No title

「ま」人むくぽんさま

 コメントありがとうございます。ワンピースも私の知る限り、やくざ映画ノリですが、いわゆるジャンプ系バトルマンガの系譜は、どれもやくざ映画っぽい気がします。

 そうですか、「猿の惑星 新世紀」でこういう妄想、なるほどいい感じの妄想ですねw

Re: (新型・ω・魔神)

「ま」人むくぽんさま

お返事遅くなり、申し訳ありません。
使っていたパソコンが修復できず、やっと新規購入となりまして、
やっとパソコンに触れるようになりました。

> 崩れかけ倒れかけた像が

たしかにありましたね。なるほど事情が納得できました。

> *ことしの春に公開された映画版キカイダーにょハカイダーゎ、雨宮版の劣化版すぎて;;;;;;

わははは。キカイダーにはデザイン的にも造形的にも愛がありましたが、ハカイダーはわりとまんまでしたからね。リニューアルというよりリファインというか。

ありがとうございます

TTさま

 コメントいただき、ありがとうございます。
 この作品、特撮ファンからずいぶんと忘れられている作品な気もしてまして、傑作ではないにしろおっしゃる通り魅力的な作品なので、本ブログでご紹介した次第です。本文では東映という会社が育てた「任侠映画」や「ヤクザ映画」になぞらえて解説してみましたが、その魅力の一端はまちがいなくグルジェフとミカエルという2人の悪党の残虐さにあるのはご指摘の通りだと思います。

 守るべき人民をロボトミー手術によって自由を奪うという発想自体は、映画「スケバン刑事」でも行われていたり、人間の尊厳と自由を奪うというお題目を表現する場面でしばしば行われる表現でして、これも東映のお家芸?なんて思ったりもします。彼らの醜悪な本質が、グルジェフの私室が白で統一されている中で、それを破壊すると中身が真っ赤というセットにも通じており、作り手が同じ感覚を共有して作られている感じも、この作品が魅力的に見える理由の一つだと思えます。

 この作品でのハカイダーは、いわゆる一つの「通りすがりの~」だと思える節があり、その意味では平成ライダーの萌芽とも取れますが、昭和と平成のライダーのブリッジ的な役割となっている「ZO」や「J」が本作の先行作品となっていることを考慮すれば、このハカイダーが平成ライダーっぽいのもうなずけます。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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