宇宙海賊キャプテンハーロック~その2・キャラクターの掘り下げとマゾーンの母性~

 前回までは物語の最序盤だけを取り上げて、作品の方向性であるハーロックのシブさや大人っぽさについて書いてみた。結局のところそれ自体は作品自体のカラーであり、ある意味で松本零士作品の門戸としてハードルの高さでもある。このシブさについてこられないなら、見なくてもいいからね、といっているようなもので、玩具売らんかなの当時のアニメとしては、なかなかにチャレンジングな作品といっていい。もちろんこうした嗜好の問題は先人たる手塚治虫や石ノ森章太郎、赤塚不二夫の仕事の数々を見れば、商売として当然であったマーチャンダイジングを否定して見せているわけで、松本の反骨精神の表れでもあるだろう。とはいえ、「宇宙戦艦ヤマト」という先達があったとしても、宇宙戦艦や宇宙戦闘機の玩具は、なかなかに難しい商売だったろうことは、想像に難くない(そういえばミクロマン的なハーロックや台羽の人形がついていて、戦闘機に乗せるプレイバリューの高いおもちゃがあったことを思い出す)。

 さて本作の主人公がまごうことなきハーロックであるならば、本作の物語はハーロックのカッコよさだけを際立たせればいいはずだ。ところが本作にはもう一人の主人公ともいえる青年がいる。名を台羽正。ペナントの地球飛来やマゾーンの地球侵略をいち早く予測し、地球人類の中で数少ない良識ある大人であった台羽博士の一子である。博士は侵略を始めたマゾーンによって殺され、それ以前に母親は事故により宇宙で亡くなっているのだが、事故原因を隠ぺいした地球政府によって、事故の責任者として見殺しにされている。地球政府の腐敗と堕落、そして両親を見殺しにされた事実から、地球を見放してはいても、父の予見したマゾーンの侵攻の事実を突きつけて、父を迫害した地球政府を見返してやりたいと願うのも当然である。だがそれだけを行動動機としてハーロックと行動を共にするには、あまりにも子供じみている。そんな台羽正がハーロックの背中を見つめながら男として成長する話が物語のもう一つの主軸となっている。今回はそのあたりにスポットを当ててみたい。

<物語の行方>
 4話でアルカディア号のクルーとなった台羽であったが、その艦内の堕落した様子を見て落胆する。あまりにもだらしなく、無軌道なクルーたちを見ていて、台羽は想像していた規律ある海賊の理想像からかけ離れていたからだ。だがマゾーンの先遣艦隊との小競り合いの中で、戦闘に際しては自己の役割を全うするクルーたちの責任ある働きを見て、改めてアルカディア号を見直した台羽であった。そんな台羽を見て、ハーロックはその適性を測りかねていたが、幻覚を見たり、母親の記憶に抗う台羽をの成長を見守っていく。とっさの事態にも対応し、時にハーロックを助ける働きを見せる台羽の働きは、次第にアルカディア号のクルーとして欠かせない存在となっていく。地球の切田長官はあいも変わらずハーロックを目の仇とし、人形に偽装した爆弾でハーロックの暗殺を目論むが失敗する。そんな中で、マゾーンは着々と侵略を進めている。ハーロックたちの調査の結果によれば、太古の昔からマゾーンは地球上に存在していた可能性があり、地球侵攻はマゾーンにとっては凱旋の可能性もあるという。また海賊島に現れたフォログラフィから、マゾーンの首領は女王ラフレシアということも判明する。(5,6話)
 地球上では何の変化もないが、宇宙から地球を見下ろせば、地球の半分がズレて見える現象が起きた。その現象の発生場所はバミューダ沖の魔のトライアングルと呼ばれる付近だ。ハーロックはアルカディア号でバミューダ沖に潜る。そこでハーロックたちは海底ピラミッドを発見し、さらにその中で静かに眠るマゾーンを発見する。そこはマゾーンたちの墓だったのだ。不可思議な動く海藻に襲われるハーロックたち。その海藻は世界中に広がって存在しており、マゾーンたちはすでに地球上での活動を始めていた。それを地球政府に伝えても無駄だと判断したハーロックたちは、人間の女性として人類に紛れているマゾーンを隠密裏に暗殺していくが、その数はキリがない(7話)。そして打ち込まれたペナントと海底ピラミッドから発せられる電波は、遠く離れた宇宙を進むマゾーンの本隊を呼び寄せている。これ以降アルカディア号はマゾーンの先遣艦隊や地球に侵入しているマゾーンとの戦闘が増えていく。そんな中、父を殺したマゾーンへの復讐心にはやる台羽であったが、海賊稼業になじめなかったり、マゾーンの高官と話をしてみたり、アマゾン流域の植物化したマゾーンと戦ったりと、様々な経験を重ねて成長していく(8,9話)。
 アマゾン流域の植物化したマゾーンを攻撃するアルカディア号であるが、その戦闘のさなか、敵機とドッグファイトになった台羽は撃ち漏らしてしまう。一瞬の戸惑いが台羽を遅らせたのだ。その戸惑いは今は亡き母親への思慕と心の中で同化していく台羽。隕石の衝突により航行不能になったマゾーン艦の中で捕虜となったマゾーンを見て、台羽はさらに心揺らぐ。そしてその姿に母親を重ねる台羽を利用して、アルカディア号の秘密を聞き出すマゾーンの捕虜は、台羽をそそのかしてアルカディア号から脱出する。しかし利用されたことを知った台羽は、己を鍛え直し、再戦となる。すでにマゾーンが生息している金星を舞台に、台羽はついに母親への思慕を断ち切るかのようにマゾーンを屠ることに成功する(10,11,
12話)。

<台羽正の乳離れ>
 物語最初期では本作の向かうべき指針として、ハーロックのシブさを前面に出している。と同時に、退廃した地球の姿を見せることで、アンチヒーローとしてのハーロックを印象付けている。その一方で物語世界にすでにキャラクターが確立しているハーロックとは違い、台羽正はまさにここから物語が始まっている。本作の序盤は台羽の成長物語でもあるのだ。父親の研究を手伝っていた台羽正は、最初期において物語の当事者ではない。それがハーロックの登場とマゾーンによる父親の暗殺によって、突然事件の表舞台に引きずり出されるのである。それだけに正の整理がつかないままに巻き込まれてしまった状況は察して余りある。だがそんな状況の中で台羽正はいくつかの選択の結果として、ハーロック率いる宇宙海賊の仲間へとなっていく。もちろんすぐにではなく、一度はアルカディア号を降りており、その逡巡のほどがうかがわれる。そして物語の当事者となってからは、マゾーンへの復讐を胸にアルカディア号に乗り組むことになる。この時点の台羽にとっては、父親を殺された復讐の矛先としてのマゾーンであるし、母を事故の罪を着せて見殺しにした地球政府への恩讐が自身の中で共存しており、どちらも解決したい事件ではあるものの、両親の存在が大きく影を落としていることは間違いがない。つまりこの時点での台羽は親の手の内から出ていないのだ。その台羽を大きく成長させたのは、10~12話の台羽3部作とでも呼びたくなるような3話だ。この話において美しい姿のマゾーンに母親への思いを重ねてしまっていた台羽が、母親への思慕を切り捨てて、マゾーンと戦えるようになる。もちろんそこには卑劣なほどのマゾーンの手口があっての話ではあるが、このエピソードをイニシエーションとして超えることで、台羽はやっと一人の男として、ハーロックに並び立つ存在としてスタートできる段取りができたことになる。もちろんハーロックの“漢(おとこ)”にはまだほど遠いわけで、その後しばらくは台羽はあまり顧みられない時期が続く。そしてその間に他のキャラクターにスポットが当てられることになる。

<他のキャラクターへの視点>
 まず最初にスポットが当たったのはハーロックを付け狙う切田長官だ。まゆをエジプトへと誘拐して、ハーロックをアルカディア号から引き離し、ハーロックを直接殺そうというのだから、一介の防衛庁長官が思いつく方法とは思えない(14話)。しかもなぜエジプトをえらんdなのかという理由は、切田はかつてエジプトの地で育っており、両親はエジプトの遺跡発掘に従事していたというのだ。しかもエジプトで妹を失っており、かの地は切田にとって良い思い出ばかりの土地ではなく、切田の人となりはまゆをしてハーロックからかばうほどであるのだ。おまけにハーロックを殺すための必殺の兵器とは、スフィンクスに隠されていたマゾーンの遺跡兵器であったというオマケつき。つまり切田にとってもマゾーンは因縁浅からぬ関係であったのだ。ハーロック憎しという一枚看板だけのキャラクターだけではないことがこれでおわかりいただけることだろう。

 16話ではハーロックの片腕ともいえる有紀螢の過去が明かされる。スペースコロニーの開発に携わっていた螢の父は、コロニー実験の失敗で命を失い、助手である和也によって批判された。父の墓参りに来た螢は生家で和也と再会し、昔のよしみで和也の実験に手伝う。だが和也はマゾーンに加担し、螢に拷問を課すことでアルカディア号の秘密を奪おうと画策していた。事実を知った螢は和也が父の実験を失敗に追いやった犯人であることを知り、和也に向かって引き金を引く。

 さらに続く17,18話は魔地機関長の因縁話だ。かつて地球軍にいた魔地は上官であった山中艦長によって最愛の妻を殺され、娘・みどりはマゾーンにさらわれてしまう。山中への反感もあり、娘をマゾーンから取り戻す決意でアルカディア号に乗りこんだ魔地であったが、プレアデス星団で消息を絶った戦艦ブレーブス号で、マゾーンの艦隊を発見したまま死んだ山中艦長の遺体を発見することになる。馬頭星雲のマゾーン基地に近づきつつあったアルカディア号の艦内で、シャドウソルジャーを見る。だがそのうちの幾人かは実態であり、その中に魔地の一子・みどりがいたのである。みどりを追ってマゾーン基地へと向かった先で魔地が見たものは、植物から自然発生するマゾーン人の姿であった。そして魔地はマゾーン艦を攻撃し、みどりとの禍根を絶つ。

 本作は全42話であるが、その前半はこのようにハーロック以外のアルカディア号の乗組員の主要人物をピックアップして、キャラクターを付加することに話数が割かれている。もちろん同時進行でマゾーンの主力艦隊は地球に迫っているし、実態としてはマゾーンの母星がすでに失われているため、地球へ移住するための大キャラバン隊であることもさらっと説明されている。20話ではミーメの故郷の話で、その崩壊にもマゾーンは一枚かんでいたとされている。また23話では副長ヤッタランがプラモデル作りに没頭している理由について語られている。さらにマゾーンに隷属しているトカーガ人のゾルやその家族たちの物語(21,24話)によって、マゾーンの冷酷非情さも言及しており、この時期の話はハーロックがマゾーンと戦うための下準備の時期に相当しているともいえる。

 その一方で、なぜマゾーンが地球に向かってきているのかも、おぼろげながらわかってきている。19話におけるラフレシアの言葉によれば、ハーロックたちを「まかれた種」といっている。また地球上に点在する古代遺跡や、サルガッソー海域やら海底ピラミッドといった、いわゆるムー的オカルトな場所までも、かつてのマゾーンによる痕跡だと説明されている。ましてやマヤやインカの遺跡にある古代文字と似た文字が、地球に打ち込まれたペナントに刻まれていることなどもあり、どうやらこの宇宙に存在する生命のことごとくが、マゾーンのまいた種から発した生命体らしく、地球上の古代遺跡はマゾーンの痕跡だとしているのだ。そういう意味で、マゾーンとは宇宙にはびこる生命体の母だといっているのである。その一方で、キャプテン・ハーロックをはじめとするアルカディア号の面々は、「スタートレック ネクスト・ジェネレーション」のピカード艦長とエンタープライズ・クルーと同様の父性によって形成されているグループである。料理長のマスさんを除けば、アルカディア号には母性らしい母性は見当たらない。もちろん切田長官も家族が不在であり、彼が指揮する防衛軍に至っても同様である。つまるところ、本作においては、マゾーンに母性が存在し、地球やアルカディア号側に父性で構成されるグルーピングが成されているといっていい。次回はこのグルーピングの事情について言及してみたい。
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