劇場版「たまこラブストーリー」~地方・商店街・幼なじみの3コンボ~


 筆者が「たまこまーけっと」が大好きだった最大の理由は、この物語が現在ではほぼ絶滅しかけている「ホームコメディドラマ」の枠内に当てはまる作品だったからだ。
 テレビ黎明期にドラマの1ジャンルとして誕生したホームドラマは、スタジオ内にセットを組んで作る、いわゆるスタジオドラマであり、あまり外でのロケを行わない。それだけにスタジオ内に作られるセットにも限界があるから、自然とシチュエーションが限られる。それだけに割と安価に作られるコンテンツジャンルであった。かつてTBSが制作していた「ありがとう」などのシリーズはまさにこれに当てはまる。TBSはホームドラマが強いと後々まで言われるようになる所以だ。その正当後継が「渡る世間は鬼ばかり」なのだ。

公開収録などで行われる「8時だよ!全員集合」などのようなイベント性やライブ感が人気となる70年代になると、こうしたホームドラマにもコメディ色が強くなる。「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」など、毎回のパターンとしての親子喧嘩やギャグが展開され、世間に認知されていく。ホームコメディドラマはどんどんバラエティ化し、その極致のような「ムー」や「ムー一族」という作品が登場する。とんねるずが主演した90年代の「時間ですよ」シリーズはこれの正当後継である。

ところがドラマのTBSは80年代に「3年B組金八先生」や「金曜の妻たちへ」シリーズ、「男女7人」シリーズなどによっていわゆるトレンディドラマに先鞭をつけると、こうしたホームコメディドラマに見向きもしなくなってくる。「刑事ヨロシク」や「おヨビでないやつ」、「ママはアイドル」などに、わずかに痕跡が残るだけだ。90年代には先述のとんねるず主演の「時間ですよ」や「谷口六三商店」があるだけで、その後こういう作品はほぼ登場していない。筆者はこの手のホームコメディドラマが大好きでよく見ていたから、同じ匂いのする「たまこまーけっと」は本当に楽しめたのだ。

そしてほんわかでかわいい本作の主人公の「たまこ」と、たまこに想いを寄せるお隣さんで幼馴染の「もち蔵」のその後が描かれると聞いて、心はやったのである。けどなんとなく見逃していたので、この際にやっとレンタルの準新作のシールが外れたのを機に見てみました。んで、もう大変満足いく出来であったので、うれしはずかし、こうして感想をばしたためているのですよw

<作品概要>
 「たまこまーけっと」が最初に放送されたのが、2013年1月期の1クール。「たまこラブストーリー」はその後日談にあたるが、劇場公開されたのが2014年4月。「~まーけっと」は南の小さな島国からやってきたデラという鳥が、飼い主である王子の嫁探しにやってきたところから始まる。うさぎ山商店街のもち屋の娘・たまこにふとしたことから拾われて、デラは居候を決め込んでしまう。そのうちに王子のお付のチョイまでやってくるものの、デラは嫁探しを忘却の彼方に放り投げ、たまこたち商店街の人々の中で徐々になじんでいく。それはたまこを中心とする商店街の日常そのものであり、大きなドラマも起きないが、小さな起伏に一喜一憂するささやかな物語が展開する、といった作品だ。商店街があって、たまこがいて、日常がある。その日常の中のささやかなドラマが心地よい作品だ。その続編は、たまこと幼馴染・もち蔵との小さな恋の物語。

 のんびりと大好きなおもちと、なかなか上達しないバトンのことを考えて生きているたまこ。その幼馴染のもち蔵は、なかなか進展しないたまことの関係にいらだっていた。友人たちと作る自主製作の映画もなかなか進まない。けれども彼らは高校生。いずれ来る進路に対するいわれのない不安は、平等に訪れていた。ある日、商店街の催し物に参加することを決めたバトン部。そのための朝練で、またもたまことの会話の時間を取られてしまうもち蔵は、どうしてもたまこに言わなければいけないことがあったのだ。それは東京の大学に進学することと、たまこに好きだと告白すること。いつもの糸電話に託そうとしても、なかなかタイミングがつかめない。ある日の放課後、たまこの友人・みどりともち蔵の会話の勢いで、もち蔵は放課後にたまこと話をする機会を得る。どうしてたまこはそこまでおもちにこだわるのか? 些細な過去のエピソードが二人の距離を近づける。そして川の渡しでついに告白するもち蔵。だがたまこはあまりに突然なもち蔵の告白に、気持ちと体が追い付かない。

もちともち蔵が入れ替わり、緊張のあまり時代劇のような言葉になるもち蔵との会話。今までのようにはいられなくなった二人の関係に、当の二人が戸惑いを隠せない。けれど、たまこのまわりだって変わり始めていた。それぞれに将来を考えている友人たち。漠然とながらも進む道を考え受け入れ進み始めている自分の身の回りの人々を見て、自分をおいて先に進もうとしているもち蔵を遠い存在に思えて、たまこは寂しく感じたのだ。そしてもち蔵からの告白にも答えなければいけない。

そんな折、たまこの祖父が救急車で病院に担ぎ込まれる。父親不在の中でなすすべのないたまこを差し置いて、冷静に対応したのはもち蔵であった。祖父の件がひと段落したのち、たまこと二人きりになったもち蔵は、過日の告白をなかったことにしてくれという。どうしても答える言葉が出ないたまこは、翌日友人たちに相談をする。そして話をしながら思い出す。かつて大好きだった母を失って、悲しむたまこを慰めてくれたおもちを演じていたのは、もち蔵だったことを。たまこのおもち好きのきっかけはもち蔵だったのだ。少しずつ日常を取り戻していくたまこは、どうしても取れなかったバトンのキャッチを、商店街の催し物の本番でついに成功させる。進んでいないと思われた時間は確実に流れ、たまこは動き出したのだ。そしてもち蔵の告白に答えを返そうとした時、みどりから告げられる。もち蔵はすでに東京へ行ってしまったと。慌てて飛び出したたまこはついに駅で電車に乗ろうとしていたもち蔵を捕まえる。そして……。

<ホームコメディドラマとしてのガジェット>
 この物語を構成している要素。それはいくつもあるのだが、先述のようにホームコメディよりに作られていた「~まーけっと」に対し、本作の中心にあるのは「幼なじみの恋」だ。この「幼なじみの恋」に「野球」を足せばあだち充の「タッチ」になるし、「忍者」を足せば「さすがの猿飛」になる。もちろん乱暴な足し算だとわかってはいても、基本となる根幹はそれでいい。さて本作は何を足せばこうなるのかを考えてみるに、その足す要素が結構多いことに気づかされる。

 まず第一にたまこともち蔵をつないでいたのは、「おもち」である。両方の家の稼業でもある「おもち」は、二人と切っても切れない関係にある。上記のあらすじでも紹介した通り、母親の死に落ち込んでいたたまこを元気づけたのはしゃべる「おもち」だった。それを演じていたのが父だと勘違いしていたたまこは、物語の進行とともにそれがもち蔵だと思い出すことになる。たまこの背中を押していたのはもち蔵だったのだ。そのたまこは実家の稼業を継ぐことになんら疑問も持たず、「~まーけっと」では新作のもちを考えることに明け暮れている。その一方で稼業を疎ましく思っているもち蔵は、本作にてはっきりと自分の可能性を試すために、東京へと進学することになる。

 そう東京へ出るということは、舞台となる「うさぎ山商店街」の所在は東京ではない「地方都市」だとうことだ。ここもポイントだ。かつて太田裕美の歌った名曲「木綿のハンカチーフ」が、都会へ出ていく恋人を心配した歌だったように、柏原芳恵が歌った名曲「花梨」が、東京へ出ていった想い人がとたんに疎遠になっていくことを歌にしたように。「地方都市」と「東京」の物理では計り知れない感情的距離が、残酷に二人の間に溝を作るというドラマティックな展開は、遠距離恋愛の定番にして永遠のテーゼでもある。もちろん稼業を継がないと心に決めたもち蔵が感じるたまこへの引け目、そして自分をおいて先に進んでしまうもち蔵へのたまこの寂寥感といった感情がないまぜになっているからこそ、このシチュエーションが際立ってくることも重要なポイントだ。

 そしてそんな二人を愛情いっぱいに育てた「うさぎ山商店街」というシチュエーションもまた、重要なのだ。こういうやさしさにあふれた商店街の人々が、たまこやもち蔵を囲んで暮らしていれば、たまこやもち蔵やあんこが、ひねくれた面倒くさい少年少女に育つはずもない。プライベートがないという点では、本人たちには逆に迷惑かもしれないが、彼らがやさしくて暖かな思考で相手を思いやることができるバックボーンには、この商店街ありきであり、それだけに余計な思想が入り込まないで済む。
 
 そして二人にとっての「初恋」であることも見逃せない要素だ。二人が小さいころにはもち蔵はたまこをいじめていたという。もうこのシーンがすでにもち蔵がたまこを気に入っていることの現れであることは、いい年をした大人のあなたならすぐにわかるはずだ。そんなもち蔵は「~まーけっと」のころから幾度となくたまこに告白しようとしているが、いつもうまくいかないというシチュエーションが、コメディでもあった。その盛大な前フリが、この映画で回収されていると考えれば、一連の流れにも納得がいく。

 このように本作はさまざまなガジェットがシンプルに結びついて物語を構成しており、その意味においては謎もなければ大した事件もない、実に平坦な物語運びではあるものの、この物語の中におけるたまこともち蔵の二人の感情の起伏に、見る者が集中できる要素で編み上げた作品だといえる。

<みどりという不確定要素>
 さて、「~まーけっと」の時から筆者がずーっと気になっていた存在がある。それはたまこの友人であり、何はさておきたまこのそばで彼女を見続けている「みどり」の存在だ。アブノーマルっぽい世界観なら「百合」と評されそうなほどたまこを溺愛しているようで、もち蔵に嫉妬したりけしかけたりと、その立ち位置をくるくると変える彼女は、ある意味で「女友達」という言葉の枠を軽く超えてくる存在だ。この「みどり」の存在が実に興味深くて、そして切ないと思えるのは筆者だけではないはずだ。

 みどりはたまこが大好きである。そのことは一点の曇りなく指摘できる。バトン部の後輩の指導中にも、キャッチの練習をするたまこの失敗を見ては、たまこを応援し、一人練習するたまこを追いかけては、ともに練習に付き合うほどの距離感。たまこの弁当におもちが入っていないのを見て、いち早く彼女の状況を察知する。

ではその感情は「女友達」を超えることができるのか、「百合」まで到達したいのか?という疑問には否と答えねばならない。みどりとは、ボーダーラインに立たされてなお、たまこの言葉で一喜一憂する少女なのだ。それがよくわかるのは、もち蔵をたまこに近づけたくないという思いだ。大好きなたまこを見ていたら、その横でたまこを見つめ続けるもち蔵を見つけたみどり。もち蔵を敵視し始めるみどりの胸中を察するに、自分とたまこを引き裂く恋敵と思っているのかと思いきや、「~まーけっと」でも本作でも、最終的にもち蔵の背中を押したのはみどりなのである。ここから導き出されるみどりの想いは、実は自分とたまこの間に「恋愛感情」を持ち込みたくなかった、ということではないだろうか? もしもち蔵がその感情を持ち込めば、自分のたまこへのあやふやな感情が「恋愛感情」だと気づくことで、自分のアブノーマルさにどうしても触れてしまう。それが嫌で仕方がないからではないかと愚考する。そしてそれを是正するために最良の方法が、逆にもち蔵をけしかけて、たまことうまくいくことで、「女友達」の枠を超えないように仕向けることだったとすれば、合点がいくのである。自分だけがたまこを独占したい気持ちと、上記の気持ちが行ったり来たりという状況が、TVシリーズから続いており、揺れていたみどりの気持ちも、これで納得できた。もちろんみどりにとっては少しばかり切ない思いをかみしめているのだろう。それがいっそ切ないだけに、筆者はみどりが可愛くてしようがないのだ。

<デラとはなんだったのか?>
 本作が今一つささやかすぎる事情は、TVシリーズの後日談であるばかりでなく、TVシリーズの物語を構成するコメディ要素のけん引役・デラがいないことだとは思いはした。そのデラは故国に帰って幸せに暮らしている様子が短編映画の方で垣間見える。デラはTVシリーズではコメディを牽引する一方で、無駄に色恋沙汰を持ち込む輩であっただけに、本作に登場する少年少女たちにとってはちょっと大人の「恋の達人」的な立ち位置を自認していた。もちろん商店街の大人たちにとってはデラの無根拠な物言いはちゃんちゃらおかしいわけで、より一層デラのコメディ部分が際立つ結果になるという構造がある。

 そのデラがいない。それが意味するところは、デラが出まかせにしゃべる恋や愛などに意味はなく、しかもその言葉の真意を理解するはずもなかったたまこが、それを実感として受けとるための筋運びだとすれば、後日談とはいえ本作においてデラの出番などあろうはずもない。だからこそ、口から出まかせのようにデラがTVシリーズで語っていたことを、たまこが本作中で思い出すそぶりでもあれば、それはそれでデラの存在が生きたであろうことは想像に難くない。作り手がもっとストイックにたまこともち蔵の初恋に集中しすぎた結果、TVシリーズなくとも成立する物語であったとは思う反面、TVシリーズとの連続がやや乏しい感じがしたのは残念だった。

 最後は少々辛目の評を書いたものの、漫画でもあいも変わらず小さな恋の物語を追いかけている筆者にとって、本作はとても好ましいものであることは間違いなく、今後も何度か見直して一人悶々とうれしはずかしの感情を持て余す時間に浸りたいと思わせる作品だった。実は「けいおん」の中でこうした部分があってもよかったんじゃないかと、今でこそ思うのだが、やっぱり唯や澪の色恋沙汰なんか、あの呑気で楽しい物語には不必要でね。だからこそたまこともち蔵のささやかな初恋の成就が気持ちいいと思えた。「中二病でも~」もいいシリーズだったけど、心臓の表面をチクチクといじくってくる「中二病でも~」より、筆者はたまこが好きかもしれない。
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波のまにまに☆

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