マンガの時間(2016.07)

 母親の介護の合間に漫画を読んだりゲームをしたり。およそ40歳を半ばも越えた男が、何をやっとるのかと怒られそうだが、まあ時間をやりくりして上手いことやっているぐらいで、大目に見ていただきたい。毎度ネタがなくなると、読んだ漫画を紹介し続けている「マンガの時間」シリーズで、文体から構成から、何から何まで場当たり的に記事を書いているせいで、今回もこれでよかったっけ?的なスタイルで一記事でっち上げようかと思います。 溜めに溜め込んだ漫画ネタ、長いぞwwwwa

「二ツ星駆動力学研究所」(林健太郎著 集英社 全3巻)
 筆者が子供のころには、「ミニ四駆」はおろかTVゲームもなければ「ベイブレード」だってない。メンコを集めては友達と勝負し、プラモデルを作り、ローラースケートを街中で履きながらガンダムごっこに興じ、サッカーをやって野球をやってと、いわゆる遊びと趣味を両立する「ホビー」とはとんと縁がなかった。30歳を過ぎて自分でゲームをやり、ゲーセンに通っては金をつぎ込んだこともあったが、今では3DSでゲームする。そんな昨今、自分が子供のころにはなかった「ホビー」へと進化したものに少しでも触れて、こうしたホビーが長年愛され続ける理由を知りたくなった。そうはいっても直接触ってみないとわからないだろうと思えば、働いていない身では少ないお小遣いでやりくりするにも限界がある。そこで目をつけたのがこのマンガだ。

 このマンガで扱っているのは「ミニ四駆」。すでに最初のブームのころに子供だった第一世代が、結婚し子供を持ち、その子供たちが第二世代となっているホビーだ。最初にはやった第一世代のころは、ミニ四駆を題材としたマンガやアニメもあり、それはどこかタミヤが作り、雑誌が取り上げるマッチポンプ的な流行だった感触があり、年齢的なハードルもあって、どうにも手が出せないホビーだった。そして手にしたこのマンガは、ミニ四駆の楽しさを伝えるためのマンガであるとばかり思いながら読み進めていった。

 まずこのマンガのハードルとなるのは「ミニ四駆」そのものの専門性だ。専門用語が説明もなく使われている。もちろんマンガを読み進めれば、その専門用語自体がおぼろげながらわかってくる様にはなっている。主人公は作者その人ではあるが、その既知である破天荒な会社社長やその友人知人によってスタートした「二ツ星駆動力学研究所」。ここのあまりにも濃ゆいメンツに振り回され、子供のころのホビーを強制的に強いられるところからマンガは始まるが、編集者も参加してミニ四駆を楽しんでいる内に、この楽しさをマンガとするために、主人公である作者によるネタ拾いが始まる。ところが劇中でなかなかマンガが出来上がらない。それでも研究所所長である会社社長による無理難題をクリアしていく過程は、どこかギャグマンガめいていて楽しくなってくる。

 2巻中盤から研究所に参加するお水商売の女性、第3巻のメインキャラにして、マンガのストーリー自体が大きく動き出す中心人物の女子高校生などの追加キャラの投入によって、後半はホビーとは誰のためにあるのか、ホビーが繋ぐ人の関わりの楽しさなどが上手く織り込まれて、最初のギャグテイストが少しばかり鳴りを潜める。それでも「ミニ四駆」というホビーの楽しさからは外れることなく全3巻を完走している。よくぞこのようなスタイルに落ち着いたものだと驚いたし、何よりアツいミニ四駆愛あふれる作品だった。

筆者は1台のミニ四駆に、どれだけの技術と努力とお金をつぎこむのかという事実が分れば十分だったのだが、それを突き抜けた先にある「ミニ四駆愛」に、うっかり落涙させられそうになる展開もある。ホビーはいつでもやめられるからこそ、どれだけ本気で打ち込んだかが結果につながるし、愛も深まる。何もそれはミニ四駆だけではなく、他のホビーもそうなのだろう。それが今更のようにわかっただけでも、このマンガを楽しんだ価値はあった。

「アップルシードα」(黒田硫黄著 講談社 全2巻)
 士郎正宗の「アップルシード」は「攻殻機動隊」とともに、筆者が追いかけ続けている作品の一つだ。士郎正宗の最初のマンガがあり、1988年に最初のOVAがあった。1995年に押井守監督による映画「攻殻機動隊」がヒットし、その続編「イノセンス」(2004)もあったり2つのTV版(2002年と2004年)が人気を博す。その一方で「アップルシード」は2004年荒牧伸志氏の手により、CGアニメとして作られている。以前、アップルシードがどうしてこれほど作られるか?について記事を書いた通り、基本的なタームを守りさえすれば自由度が高く、そのくせ主人公バディであるデュナンとブリアレオスに物語を落着させれば、ちゃんと「アップリシード」として落とし込めるキャラクターの強靭さがある。それゆえに「エクスマキナ」(2007)、「アップルシードα」(2014)、TV版「アップルシードXIII」(2011)と作り続けられている。一方マンガの方はといえば、なぜか関西弁をしゃべるデュナンたちが愉快な「アップルシードXIII」や本作が、士郎正宗から離れた漫画家の手により創作されている。

 本作は「セクシーボイスアンドロボ」などで有名な黒田硫黄氏の手によるマンガだ。表紙のカラー絵だと繊細な筆遣いを想像しそうだが、扉を開けると、まるで絵筆で描かれたような荒い線が特徴的な絵が現れる。本家「アップルシード」にしても「~XIII」にしても、繊細で緻密な印象が強い絵を見慣れた目には、かなり異質なアップルシード作品といえるかもしれない。物語は本家「アップルシード」の前日譚であり、デュナンとブリアレオスがオリンポスに住む以前に、世界を傭兵として転戦していた時代の話であり、ドヤ街となっているアメリカを舞台にNYの市長・双角が牛耳る町にやってきたデュナンとブリアレオスが、双角たちアンドロイドと敵対する人間たちの戦いに巻き込まれる話だ。本家からのスピンオフ的な設定の緻密さも、物語の筋運びもさすがというべき、マンガとしては本当に面白くて、それでていてちゃんと「アップルシード」という物語に寄り添っているのは、本当に舌を巻く。問題は確信犯的に崩している絵柄のハードルだと思うのだが、夢中で読んでいる分には、まったく気にならないのが本当に不思議だ。それぐらい密度高く物語に埋没できるほどに、物語は面白いといえる。設定として面白い点は、ドヤ街と化したNYの有様やそこに生きる人やアンドロイドたちの雑多な賑わいに対し、敵対する人間たちの生き方が聖職者じみており、禁欲的な生活を強いられている。互いに不満ではちきれんばかりに膨らんで、いつ暴発してもおかしくない状況下で、カンフル剤として状況を動かしたのが、主人公のデュナンってことになる。もちろん、オリンポスの勢力下にない何者かをデュナンの目で見て、それをインターフェイスとして世界を俯瞰する読者の目線は、完全にデュナンと同調する。こういうあたりも、絵柄を気にせず物語に埋没できる理由だ。物語のラストで双角はオリンポスと提携を結び、発展を約束された。と、突然旧時代の大戦の時に地雷を踏んでアンドロイド化を選ぶしかなかった双角の過去が明かされるのだが、そこにはまだ秘密が残されていたという含みを持たせて、物語は終幕する。このラストこそが双角と物語の発端や、キャラクターの行動動機になっている事実を明かして物語は幕となるのだ。なんとも巧みな構成か。マンガとしてもアップルシードとしても一級品である本作。連載時に絵柄で敬遠した人にもぜひ読んでほしい。

「イキガミ様」(TAGRO著 太田出版 全1巻)
 キリスト教でも仏教にしても、日本に数多ある新興宗教でもいいが、そのほとんどは神は人に降臨する。これをして「生き神様」という。イエスとブッダは昨今東京都の立川あたりにお住まいで、のんびりとお暮しあそばされているようだが、そもそもこの日本においては、八百万(やおよろず)の神がおわしまして、神社に祭られたりしている。その一方で民間伝承における神の姿として、何ものかに宿り、時に妖怪といわれたりする。すべてのものには神が宿るという、すなわち「付喪神」として知られている。神はどこにでもいて、実は目に見えていてもおかしくはなく、でもそれがどれかは判別できない。日本における土着の神とは、本質的にそういうものだと、筆者は勝手に解釈している。

 本作におけるイキガミ様は、どこにでもいそうなおっさんの背格好をしており、のんびり港町で暮らしている。他人の人生に絡むこともなく、さりとて大きな奇跡をなすわけでもない。だが港町の人々に寄り添って暮らしており、彼がいるだけで町の人々は安堵する。そんなイキガミ様が暮らす港町の風景を、著者・TAGROは切り取って見せる。著者はきっと知っているのだ。神はどこにでもいるが、神頼みしたところで決して人間の営みに干渉しないことを。ただそこにいて、ひっそりと寄り添っているだけで、そこにいる実感さえないのに、人々はそこにいると思ってホッとする。この作品で言う「イキガミ様」は、日本に点在する寺社仏閣自体となんら変わりがない。そこにあれば人が寄り添い、その人のために神は寄り添う。だとすれば、本作のイキガミ様とは、人間の認識が見せた幻なのか? いやいや、幻ではなく、ほら、そこにいるよ。あなたが気が付いていなくても。

「十年後、街のどこかで偶然に」(津田雅美著 白泉社 全1巻)
 ここからは恋愛脳全開で行きます。もっとも、四十路を半ば過ぎたおっさんの恋愛脳なんて、たかが知れているので、そこらへんはご愛嬌ってことで。
 かつて「彼氏彼女の事情」で人気を博した津田雅美。すべての津田作品を読んでいるわけじゃないけれど、たしかに津田作品は学生さんというか10代のキャラクターが多い傾向がある。本作ではカバー折り返しでも津田さん自身が書かれていらっしゃるように「初めての大人もの」となる。主人公は文具の開発に従事する女性・藤堂。彼女が十数年ぶりに左官をしている高校の同級生・槙と偶然街中で再会する。1本のペン、笛を吹いて練習した曲、そして放課後の記憶。かつて不器用な10代の頃には近づけなかった二人が、互いの仕事を通して分かり合い、そして惹かれあっていく過程を描くラブストーリー。なお藤堂の同級生だった二人の女性(樫原さんとすばるさん)のエピソードも収録されており、そのどちらのエピソードもちょっと切なくて、ほろ苦い。特によい子で通っていた樫原さんの失恋と再生のエピソードは、ほんのりと心にしみてくる。

 確かに主人公たちは20代の大人ではあるのだが、下敷きとなっている経験はすべて高校時代の記憶がキーになっている。もちろん彼女たちだって彼女たちなりに高校生時代を精一杯生きていただろうが、そんな10代の記憶が数十年後にどういう形で自分自身に跳ね返ってくるかという話でもある。すばるさんと幼馴染の、あまりにもヘンテコな恋模様などは典型例であるし、誰も未来の予測などできないからこそ、そこに楽しさを見いだしてしまう。そんな前向きなお話作りや、ちょいと突拍子もないキャラ作りは、あいかわらずの津田作品であるから、「彼氏彼女の事情」を読んでいた人なら、ぜひとも手に取って楽しんでほしい1冊だ。

「つるつるとザラザラの間に」(月子著 講談社 全4巻)
 実家が爬虫類・両生類専門のペットショップを営む中学二年生の男の子・白根環。学園祭で初めてであった美少女に、学園祭でデートを申し込まれてしまう。その美少女の名は虻川さやちゃん。さやちゃんは爬虫類が大好きで、ペットとしてヒョウモントカゲモドキを飼っている。でも環は実家がペットショップなのに爬虫類が苦手。最初のデートからすぐに付き合うことになった二人だけけど、環には苦手な爬虫類を克服しないといけなくて。ささやかすぎる障害が、徐々に二人を近づけていく、ゆっくりまったりなラブストーリー。まああまりメジャーな漫画ではなかったので、アニメ化はないだろうけど、ふんわりやんわりなさやちゃんの声は豊崎愛生でお願いいたしますw

 環にとってはさやちゃんの実家がまた問題で、家族そろって爬虫類好きで、母親からさやちゃんを含めた三姉妹は全員なにかを飼っている。ところがお父さんは爬虫類が苦手なのを隠して家族と接しており、ある意味で環と同じ立場なのに、さやちゃんを挟めば父親の立場で環と敵対するという、面倒くさい関係性。また面食いで黒髪ロングの長女・葵さんは、なぜか環の友人・高屋敷くんのお兄さんを好きになり、でも高屋敷くん自身は葵さんが気になって仕方がない。可愛いさやちゃんの周りには、さやちゃんを狙う幼馴染がいたりして。そんな障害にもめげず、というか気も付かず、二人は本当にじっくりゆっくり距離を縮めていくのです。そんな環は、最後の最後で思いのたけをさやちゃんに告げます。

「さやちゃんに出会う前は、僕は冬眠してたようなもので。眠りから覚ましてくれたから、さやちゃんは、僕にとって、春」

ね、この言い回し。中学二年生にしてはよく考えましただけど、遠回りしすぎでもうw

「さらば、佳き日」(茜田千著 KADOKAWA 既刊2巻)
 あだち充の傑作「みゆき」にしても、ラノベやエロゲにしたところで、「血のつながらない兄と妹」、それも妹がとびっきりの美少女だなんていう話は、誰がどう考えたってファンタジーだろう。もちろん昨今離婚が多くなっているご時世だから、両親が連れ子で再婚というのが、決してファンタジーではないことはわかるが、蒼樹うめの最新作「微熱空間」にしても、「彼氏彼女の事情」のつばさの実家とか、もうその設定自体が創作物の中で手垢にまみれたネタだってことはご理解いただけると思う。

 翻って本作は、兄と妹の恋愛話であり、見事に血がつながっている。仕事で家庭を顧みない両親に変わり、家事一切を賄っている妹・晃は、ヘタレで眼鏡の兄・圭一の面倒をよく見ていた。近所でも仲良し兄妹であったが、ある日を境に二人は家を出て二人で新婚夫婦のふりをして暮らし始める。親に咎められながらも、なぜ二人はそんな決断をしてしまったのか? 物語は子供のころへと遡り、高校時代へと推移していく。一度は大学進学を機に兄と離れて暮らし始める妹・晃。失ったものの大きさを噛みしめる兄・圭一。物語1巻冒頭の二人が新婚として引っ越してきたシーンが、物語のラストシーンである可能性は少ないと思う。むしろそこまでの過程を物語として紡ぎながら、冒頭部分を経て、さらなる展開が待っているに違いない。道義的にも遺伝的にも結婚もできず、子供を作ることができない二人が、互いをいつくしむだけで夫婦となりえるはずもない。越えなければいけない感情、両親が心配する世間の目、愛と兄妹愛の線引きをどこにおくか? 少なくても現時点では男女の愛をとったつもりの二人に、この先何が起こるのか。

主人公兄妹の周辺に配置された人物が、これまた少し変わっている。圭一の高校時代の同級生で、バリバリの空手部の元主将でありながら、実は男性が好きな牧嶋剛。いつも笑顔でいるけれど、父親と二人で暮らしている晃の同級生・珠希。晃を気に掛ける同級生男子の柳沢。どうもこの3人あたりが、これからの展開に絡みそうな気がしているのだけど。以下続刊。

「アオとハル」(しおやてるこ著 少年画報社 全1巻)
 普通の高校3年生のハル。クラス替えによって友達のほとんどが別クラスになって落ち込んだ直後、図書館で不思議な雰囲気の少女アオと出会う。これがチャンスとアオにアプローチをかけるハルだが、アオは一向に相手にしない。アオはハルを以前から知っている様子だが、ハルは思い出せない。運命の出会いと感じたハルはアオに会いに出かけるが、そこにはアオとハルの過去を知っているそぶりの少年・慎一朗が待っていた。笑顔でハルを殴りつける慎一朗は、無理やりハルの記憶を呼び戻す。そう、ハルは子供のころアオに出会い、慎一朗の暴力からアオを救っていたのだ。ようやくすべてを理解したハルは、本当に意味でアオと再会を果たす。だがそれは、いばらの道を進むがごとき、苦難の道が開いた瞬間でもあった。慎一朗とのやり取りで学校に居場所をなくすハル。アオは身勝手な母親に振り回されており、血族の慎一朗から飼育名目の迫害を受けており、アオは慎一朗の元から逃げるようにしてハルの入る町に戻ってきたのだという。そんな二人の逃避行に未来はあるのか?

 これ、今では絶滅危惧種のいわゆる「昼ドラ」展開で、金持ちのボンボンにいいようにされているアオの設定といい、自堕落で身勝手なアオの母親といい、今にも死にそうなアオの祖母といい、何も知らないハルといい、短期集中連載という体裁からすれば、仕方がないのだろう。いっそ2時間ドラマあたりでもいけそうな、ちょうどいい長さのドラマだ。だがこれを月刊誌ペースで読むとなると、集中力が継続できず、なかなかに辛そうだ。それだけにこうして単行本として一気に読むに限る作品というものが、どうしてもある。週刊、隔週刊、月刊、隔月刊と、雑誌の出版ペースがあるが、物語の構成がこうしたペースに合致した作品は、それはそれで幸せな出会いなんじゃないかと思うのだ。もちろんそれは作者の技量という部分もあるけれど、これほどまでに多産になり、漫画家の数も多い状況からすれば、漫画家と編集の技量ではどうにもできない物語というものがあるんじゃないかと思わせる。どちらかといえば淡白な絵柄で、月刊ペースで読むには記憶に残りにくい絵柄とは反対に、人間のダークサイドをほんのりとえぐって見せるこの作品が、掲載誌において他作品とどの程度差別化されていたのかは、今さら知る由もない。けれど艱難辛苦を乗り越えて、ハルの前で素直に泣いて見せるシーンが、静かに心にしみていき、血族のくびきを脱して新しい生活を始めるアオと、普通に受験勉強に戻るハルが小さく触れ合うラストは、地味にイイ。書店からなくなる前に、ぜひお試しあれ。

「兄友」(赤瓦もどむ著 白泉社 既刊2巻)
 作者は近年アニメにもなった「龍ヶ嬢七々々の埋蔵金」の漫画を担当したお方。物語の主人公は世話好きで家庭的な高校1年生の七瀬まい。一つ年上の七瀬兄が友人として部屋に連れてくる西野が気になり出したまいだが、毎度悩まされるのは、部屋の壁が薄くって兄と西野の会話がまいに丸聞こえなのである。そんな奥ゆかしい理由でどうしても前に進み切れないまいと西野だが、ある日、まいは西野が兄の部屋に遊びにくる理由がまいにあると聞き、舞い上がる。薄い壁越しに聞こえる兄と西野の会話の内容で、一喜一憂するまいだが、それでも二人はなんとか付き合いだすところまでこぎつける。今時珍しいほどの超奥手の西野とまいは、にぎやかな周囲の声に押されるように少しずつ二人の距離を縮めていくという物語。

薄い壁越しに聞こえる兄と西野の会話によって、いい感じにすれ違ったり勘違いするまいや、奥手すぎるにもほどがある西野によって、きっちりラブコメしちゃってる感じは、ちゃんと王道である。ここで面白いのは超俺様のまいの兄・雪紘が、実にイイ味出してくれる。時にまいの誤解を解き、時に西野を背中を押す役目であるにも関わらず、常に命令口調。学校でも尊大なる生徒会長だっつーんだから、これも一種のファンタジーだろう。1巻では不良にからまれるまいと西野を、いち早く助け船を出す千両役者っぷりがもはやカッコイイ。筆者が女なら抱かれてもいいw

キス一つでドタバタしちゃってるまいと西野。1巻まではそんなイライラしちゃいそうなゆっくりじっくり展開が楽しいラブコメであるが、2巻ではダメ犬にサディスティックな快感を覚える雪紘の実態や、西野の妹の登場によって、周辺キャラクターに厚みが増してくると、コメディ要素がやや強くなってくる。もう一人のお騒がせ、まいの友人のりんごちゃんも参加してかき回すまいと西野の恋は、まだ始まったばかりです。既刊2巻。

「僕と君の大切な話」(ろぴこ著 講談社 既刊1巻)
 アニメも漫画もヒットした「となりの怪物くん」。その作者が次に繰り出したのは、高校生男女のかみ合わない会話劇だ。同じ高校に通う東くんと彼に片思いし続けてきた相沢さん。相沢さんのちょっと変わったストーキング気質は、明らかに硬質でツン気味な東くんに受け入れてはもらえない。それでも女子とお話したことのない堅物・東くんは、こまめに話しかけてくる相沢さんを拒否しきれない。電車通学の二人はつい帰りの電車を待つ駅で会話することになるのだが、これがもう見事なほどにかみ合わないのだ。その会話の内容やデレる東くん、惚れ直す相沢さんというシチュエーションを考慮すれば、立派なほどにラブコメなのであるが、すれ違い、時に激突する二人の会話は、男女が持つ互いのテーゼの対決でもあり、男と女は時としてどうしても相いれない存在である理由を垣間見せられる。

 この会話劇の面白さ、どこかで見たことあるなと思っていたら、最近映画にもなった「セトウツミ」(此元和津也著 秋田書店)の、高校生男子のくっだらない川辺での暇つぶし会話劇となんら変わらないのである。もし本作が「セトウツミ」と区別される理由は、「恋愛」を軸にして、男女が互いに相容れない事柄を、まるで二人が世界の男女の代表であるかのごとく意見を戦わせる点であり、どこまで言っても「恋愛脳」が軸足にあるだけに、「セトウツミ」ほどのくっだらなさではない点だろう。もちろんそのくっだらなさ故に「セトウツミ」は人間の役者を得てなお面白くあれる。この作品の場合、変態女子高生・相沢さんは戸松遥あたりでアニメ化すると、彼女のハイテンションでいて緻密な演技によって、面白くなりそうな気がする。まだ既刊1巻なので、これからこれから。でもオススメ!

「ディアティア」(かずまこを著 白泉社 既刊4巻)
 「出会い」という名のファーストインプレッション。現実世界でもこれが悪いと、互いに誤解したまま、無駄に時を過ごすことになる。それが実は運命の相手だったとたら。本作の主人公二人の出会いも、決していいものではなかった。高校2年生の成田くんは、線の細い感じで誰にでも優しい男の子だ。問題はこの「誰にでも優しい」という点で、ただでさえ顔がいい上に博愛的に人を選ばずに優しくするものだから、女の子の方はやたら勘違いしてしまう。ある日、成田くんは後輩の女の子に声をかけられるのだが、それは文句を言うためだった。その女の子・桐ケ谷さんは、自分が親しくしている人が一様に成田くんを好きになり、告白しては成田くんに振られているという。なぜ彼女たちが成田くんを好きになるのか、なぜ成田くんは彼女たちを好きにならないのか。それを知りたくて、桐ケ谷さんは放課後、成田くんと下校することに決める。そして桐ケ谷さんは知ることになる。誰でも優しい成田くんは、嫉妬深く気難しい母親がおり、その母親からの束縛が成田くんを長年苦しめていたことを。女性の涙が嫌いで、つい女性に優しくしがちな成田くんは、実はただ人との関係性を上手く構築できない男の子だったのだ。ところが、そんな風に成田くんに踏み込んできた桐ケ谷さんが、逆に気になり始めた成田くん。どうにかして桐ケ谷さんに振り向いてもらおうと思案するようになる。徐々に関係性が変化し始める二人。それでもかつて成田くんの告白した先輩や友達がいるせいで、素直に成田くんの好意を受け取れずにもやもやした日々を送る桐ケ谷さん。ほんの少しずつ動き出した成田くんと桐ケ谷さんの恋は、ささやかに走り出した。

 なんとなく八方美人的な成田くんに、うらやましいと思いつつ、母親という問題を抱えてしまった不幸も手伝って、珍しく同情してしまったのが運の尽き。可愛げがなくって、それでいてツンデレの要素もたっぷりで、面倒くさい桐ケ谷さんという後輩の女の子は、面倒くさい母親と、実は大差ないってことに、成田くんは気づいているんだろうか? つまり成田くんは、面倒くさい女の子を扱うのが好きであり得意でもある一方で、そういう部分を取っ払ってしまう突然の告白という出会いにピンと来ていない可能性がある。それはそれで面倒くさい男なのだ。人を好きになるのに理由はないけれど、好きになるのに手順が必要で、成田くんにとっては好きの気持ちを盛り上げるための段取りとしての手順は、面倒くさいはずなのに必須なのだということになる。本当、面倒くさい男の子だw

 この二人がどうなるかといえば、お付き合いし出すことになるわけですが、ここで成田くんは桐ケ谷さんとイチャコラし出すことにためらいがなくなり、逆に桐ケ谷さんがドギマギする展開となる。こうなると今度は桐ケ谷さんがツンデレを発揮し出すことになり、背丈も小さく、ツインテとくれば、桐ケ谷さんの声は、筆者の中で完全に「竹達彩菜」の声で脳内再生されることになる。もちろん脳内再生音については人それぞれなので、現状の女性声優のトレンドからすれば、筆者を笑ってもらっても一向に構わない。

そうはいっても成田くんの母親は間接的に二人を妨害しようとするし、成田くんを好きだった女の子たちの動きもまた、続けて読んでいると切なくなる。その切なさもよし。成就するはずもない学生時代の恋のモヤモヤが、きっとあなたの心を鷲掴みにする作品。既刊4巻。

「14歳の恋」(水谷フーカ著 白泉社 既刊6巻)
 この作品にしても、「ディアティア」にしても、白泉社から発刊されている「楽園」という雑誌に掲載されている作品で、ほとんどの掲載作品が恋愛漫画となっている。どうやら筆者はこの雑誌に連載されている漫画が好みのようで、以前にも紹介した「あまあま」もこの雑誌の作品だ。前述の蒼樹うめの「微熱空間」もそう。筆者は完全にこの雑誌に侵されているw

 さてタイトルの通り、この作品に登場するほとんどのキャラクターは14歳中学二年生だ。主人公はそんな中二の中でも大人っぽいと噂される田中彼方さんと吉川和樹くん。二人は小学生時代からの仲良しで友達同士。でも容姿の大人っぽさによって、周りからやや浮いていることを自覚せざるを得ず、それゆえに互いを同士だと思ってきた。その思いは中学進学を機に徐々に深まっていく。互いにその想いを恋だと認識したとき、二人の関係は誰にも知られたくない秘密の関係になっていく。普段クラスではなかなか会話できない二人は、放課後の理科室で二人だけの時間を共有する。クラスメイトに見つからないように土日にデートを重ねる二人。その秘密の関係を知る者は少ない。誰が見たってラブラブの二人ではあるが、まだ14歳。その関係性は純粋にプラトニックにすぎる。そんな当たり前のプラトニックさがたまらなく愛おしいのが、この「14歳の恋」という作品の最大の特徴でもある。

 ただラブラブの中二二人を見ているだけではなく、彼方さんにあこがれるだけに和樹くんに横恋慕する葵さん、いつもバス通学で見かけるOLへの思いが募る一瀬くん、そしてもう一つの秘密の恋である不良の長井くんと音楽教諭・日野原先生の恋など、彼方×和樹以外にも注目に値するカップリングがいくつも併存している。特に長井×日野原先生の道ならぬ恋、年下の男の子にのめりこみそうになる日野原先生が必死に自分を押し留めている感じがまたいいのだ。その他にも想いが交錯するカップリングがあり、え?と思わせる展開がないわけでもない。体育祭や球技大会、文化祭や修学旅行といった学校行事(イベント)をこなしながら、彼方と和樹の秘密の恋は成就できるのか。いや、してほしいw 既刊6巻。

「そうしそうあい」(りべるむ著 メディアファクトリー 既刊1巻)
 以前紹介した「三十路とレディ」(一迅社)。最近になってこの続編となる2巻が出ていて、本当に心からびっくりした。1巻で完全に終わったもんだと思っていたし、作品のエンドとしても秀逸だったので、自分の中では終わった作品だっただけに、この突然の再会に驚きもしたけど、素直にうれしかった。そんなりべるむ先生の別作品がこの「そうしそうあい」だ。

 内容は金髪ヤンキーの高校生男子が、学年首位の黒髪真面目の女子高生と、タイトル通り相思相愛となるところからスタートするラブコメだ。りべるむ作品の最大の特徴であるボケとツッコミを基調とした会話劇は本作でもさらに先鋭化しており、その会話のテンポが心地よい。やはり「セトウツミ」を思い起こさせる点は類似しているが、ヤンキー男子の仲間二人とつるんでの4人の会話は、誰がボケて誰がツッコミなのか、もはや判別不可能なほどの入り乱れ具合で、さぞかしネームの段階で練りに練られているんだろうと思う反面、絵柄のほうは完全に置き去りというあたりも面白い。絵が下手なわけでは決してないのだが、なんといってもどのキャラの顔もキョトンとしており、それがまたボケとツッコミの面白さを後押ししている感じがして、不思議な感じだ。まだまだ1巻。果たしてどう展開してくれるのかw
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プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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