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「シルバー仮面」~その1・苦境を切り開くもの~

 過日、池谷仙克氏が鬼籍に入られた。2016年10月25日のことだ。筆者はひし美ゆり子さんのツイッターでその訃報に接した。各種報道のどれよりも早いニュースであったはずだ。著名な映画監督による作品の美術を担当するかたわら、成田亨氏に師事して円谷作品の特殊美術を担当していた方だ。池谷氏が生前、作中に登場する宇宙人のデザインをすべて手掛けた作品がある。それが今回ご紹介する「シルバー仮面」だ。往時の氏をしのびつつ、この作品にじっくり触れてみようと思う。

<作品概要とシルバー仮面誕生経緯(仮説)>
 「シルバー仮面」は1971年よりTBS系列にて放送された作品。全26話。制作会社は宣弘社。国産初のテレビヒーローである「月光仮面」(1958)や「快傑ハリマオ」(1960)「隠密剣士」(1962)を送り出した製作会社である。70年代には本作の他、「アイアンキング」(1972)「スパーロボット レッドバロン」(1973)を送り出すことになる。「シルバー仮面」が放送された1971年という年回りが、この作品に大きく影響している。それは作品自体を見れば明らかなのだが、その話はこのあとでゆっくりと。

 本作の1,2話となるパイロットは名匠・実相寺昭雄氏が担当しており、脚本もその同胞・佐々木守氏。本作はかつて円谷プロでウルトラシリーズ等を作っていた人員で製作されており、彼らは「日本現代企画」という会社を立ち上げていた。これに「月光仮面」などの製作で知られていた広告代理店の子会社プロダクションである「宣弘社」が共同制作となり、本作の製作がスタートしている。そも「日本現代企画」は作品制作が途絶えてしまったことによってリストラされた円谷プロのスタッフによって構成されているが、これに実相寺率いる「コダイグループ」を中核スタッフとして「シルバー仮面」は製作されている。かぶっている皮は違っても、中身は旧円谷スタッフなのだ。問題は撮影に必要となる資機材であるし、スタジオであるのだが、日本現代企画が準備していたスタジオは、他の映画の製作のために貸与して資金調達しており、スタジオは使えない。ここで1971年という時代が彼らに味方する。

 1971年.この年は日本のTV特撮史にとっては重要な年である。この年の1月にピープロが送り出した「宇宙猿人ゴリ」、これがまず嚆矢だ。本作に登場するヒーロー・スペクトルマンがよりクローズアップされていくことで、タイトルは「宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン」となり、やがて「スペクトルマン」と変遷を見せる。4月には満を持して円谷プロが「帰ってきたウルトラマン」を送り出す。これによりやおら到来したのが第二次怪獣ブームである。ところがここにもう一つ重要な事件が起きる。同じ4月から放送を開始した東映製作の「仮面ライダー」によって第二次怪獣ブームは変身ブームへと取って代わっていく。これがなぜ重要なトピックだったのか? それまでの特撮怪獣作品を撮影していたのは、精緻に作りこんだミニチュアが立て込まれたスタジオであり、このスタジオのセットに背景としてのホリゾント、そして照明などの機材が必要だったのである。それを円谷プロは映画会社である東宝からの貸与で賄っていたとはいえ、怪獣やヒーローの着ぐるみやミニチュアなどのセット、撮影機材の消耗品などはプロダクションの財政を圧迫させていた。ところが、である。等身大のヒーローに等身大の敵怪人。特殊なバイクの造形こそ必要だが、ミニチュアセットを立て込む必要もなく、野外での撮影が可能で、スタジオの必要もなしとくれば、巨大特撮ヒーローよりも等身大特撮ヒーロー作品は安価に作れてしまう。

 しかもおもちゃなどのマーチャンダイジングなどで成功すれば、そのマージンで製作費が回収できるとすれば、お金のないプロダクションは等身大ヒーローを選択することは必定。しかも等身大ヒーローである「仮面ライダー」はすでに大きな人気を獲得していたし、何より円谷プロが後日放送を開始する巨大ヒーロー「ミラーマン」との差別化もできる。あくまで筆者の仮説ではあるが、「シルバー仮面」が前半10話までを等身大ヒーローとして製作した理由は、こんなあたりではなかったろうか。もう一点、等身大のヒーロー「シルバー仮面」を後押しする結果となったのは、1970年から帯放送をして人気を博し、第二次怪獣ブームの契機を作った「ウルトラファイト」の成功にも負うところが大きいと筆者は踏んでいる。もちろん「ウルトラファイト」は決して等身大特撮ではない。だが開発途上の造成地やロケに向かった海辺や荒れ地での怪獣とウルトラヒーローとの戦いは、光線技や爆発や火などの特殊技術を使わない代わりに、怪獣プロレスと揶揄されるどつきあいと、不可思議なほどにマッチしたプロレス風実況によって人気を博したのである。当時すでに人気のあったジャイアント馬場やアントニオ猪木らによるプロレスのTV中継も、これを後押ししていたといっていいだろう。

 物語は主人公である春日兄弟の父・春日勝一郎博士が殺されたところからスタートする。人類の宇宙進出を目指し、光子ロケットの研究開発に携わっていた春日博士は、地球人の宇宙進出をよしとしない宇宙人たちによって、その命を狙われていたのである。だがその設計図の完成を見たところで殺されてしまった。遺児である長男・光一、次男・光二、三男・光三、長女・ひとみ、次女・はるかの5人は、自分たちの体に光子ロケットの設計に必要な計算式が、父によって埋め込まれていることを知る。父親の夢である光子ロケット完成を目標に、まずは自分たちの体に刻まれた光子ロケットの謎を解くために、父の既知である物理学者を頼ってさすらうことになる。そして行く先々で春日兄弟を待ち受ける試練、そして光子ロケットの秘密を狙う宇宙人との戦いの日々。兄弟の次男・光二に秘められたシルバーの力は、彼をシルバー仮面に変え、宇宙人との肉弾戦を制する。そして春日博士が子供たちに残した白光銃の支援によって、宇宙人の攻撃を退けていく。
 ところが春日博士の崇高な目的は、無理解な人間たちによって、春日兄弟を追いつめる結果となる。それだけでなく時には宇宙人の策略によって人間たちから殺人犯として追われることになることもあり、春日兄弟に安住の地はどこにもない。だが今は亡き春日博士の夢の実現と、宇宙の平和を目標に、春日兄弟は戦い続けるのだ。

<引用と参照と…>
 ヒーローであるシルバー仮面は、10話まで等身大ヒーローとして登場し、等身大の宇宙人と肉弾戦を繰り広げるのだが、先述の通りウルトラマンのような目くるめく光学合成もないし、大規模な火を使った演出もなく、割と地味な肉弾戦を見せてくれる。しかもシルバー仮面自身の力でもって宇宙人を倒す場合もあるが、宇宙人に致命傷を与えるのは、春日兄弟が持つ白光銃という2丁の光線銃である場合が多い。しかもこの光線銃にしたところで、光学合成があるわけではなく、派手さはない。1話に登場したチグリス星人が焼けて燃える演出はつとに有名だが、撮影順序の問題で、その後の撮影でチグリス星人の着ぐるみが使えなかったために、1話が暗い映像になってしまった話はある。これとて映像そのものが暗い以上に、炎の演出でさえ地味に見えてしまう。

 そのシルバー仮面は、春日兄弟の次男・光二のアタックの掛け声で変身を始めるが、クリスタルに包まれた光二の頭部側面がアップになり、徐々にシルバー仮面へと変化していく演出が入り、光二に秘められているシルバーの力は、光二の内側から発していることが如実にわかる演出となっており、変身過程をカット割りで一瞬で見せてしまう「仮面ライダー」などとは一線を画す演出が入ることは特筆すべきだろう。一瞬のカットではあるものの、光二が内側から徐々にシルバー仮面になっていく過程を見せているシーンは、春日式光子ロケットのビジュアルとともに、本作の精神的な支柱となっているといっていい特撮シーンである。

重苦しいほどのドラマの展開と、さすらう兄弟の姿は、どこかアメリカドラマの「逃亡者」を思い起こさせる。数々のインタビューなどに残されているTBSの橋本洋二プロデューサーの話によれば、「逃亡者」のイメージを借りているというから、間違いないだろう。前回の「惑星大戦争」や「宇宙からのメッセージ」が「STAR WARS」からのインスパイアであるから、日本の映画やドラマのパクリはお家芸だなと感じさせてくれる。

 実のところ本編を見るまでは、筆者はどうしてここまで春日兄弟が追いつめられる理由を測りかねていた。ところが本編を見るとこの考えは本当に変わっていく。春日兄弟はただただ父親の残した遺産を引き継ぎ、光子ロケットの研究の成果を、人類に幸福をもたらすものと信じて戦っている。ところが春日兄弟や光子ロケットの設計図を狙う宇宙人は、地球人の宇宙進出を快く思っておらず、光子ロケットの完成によって、地球上で戦いを繰り返す地球人が、宇宙でも侵略行為繰り返す可能性を懸念しているのだ。そう、ここにあるのは本来の地球人であるノンマルトを海に追いやってしまった、ウルトラセブンの「ノンマルトの使者」、そしてその後日談となるOV「ウルトラセブン」シリーズの「フレンドシップ計画」とその後に訪れたオメガファイル開示によるウルトラセブンの幽閉を思い起こさせる話にもつながるのだ。実際、春日兄弟を狙う宇宙人たちは、あくまで専守防衛の意味で春日兄弟の光子ロケットの秘密を狙っているのだが、そのやり方はあまりに利己的にすぎて、宇宙全体の平和と安定を願ってのことではないかに見えるのだが、春日兄弟を追いつめる言葉を選び、わざと宇宙人側の論理で迫っているように見えるのだ。ここに気づくと、OV「ウルトラセブン」で語られる宇宙人による地球侵略が、あくまで宇宙人側の論理であることもわかる一方で、OV「ウルトラセブン」における「フレンドシップ計画」が如何に過激で無謀なことがわかろうというものだ。宇宙人は誰一人として地球人の言い分を信用しないが、それは自分たちの侵略の建前を否定させないいいわけでもあるからだ。

 その一方で地球人自身も身内を信じてはいないのかもしれない。こうした人間の多面性が「シルバー仮面」のドラマを支えていることがわかる。例えば2話では、とある田舎に身を寄せていた春日兄弟だが、宇宙人によって春日兄弟を追いつめるためだけに、村人へと被害が出ると、たちまち村人は春日兄弟を迫害する。光子ロケットの秘密を宇宙人に渡して、村を出ていけとわめきたてるのだ。4話では春日博士の弟子にあたる科学者の元を訪れる兄弟たちであるが、科学者の娘が宇宙人に拉致されたが故に、春日兄弟に協力的であった彼は変説し、春日兄弟への協力を拒み始めるのだ。6話では自身の命を宇宙人に盾にとられた科学者が、春日兄弟に光子ロケットの秘密を宇宙人に渡してしまえとせまるのだ。9話ではついに春日兄弟に化けた宇宙人たちがマシンガンを乱射し、葬儀に参加した村人を虐殺した嫌疑をかけられ、春日兄弟は警察に追われる身となるのだ。この9話は村人虐殺シーンからスタートする。車に乗ってマシンガンを乱射するシーンを見ていると、映画「俺たちに明日はない」のボニー&クライドを思い起こさせるが、これはまた余計な話。

 こうした重苦しい物語の基本にある人間への「疑いの眼」は、かつて円谷プロが製作した、人間と科学の礼賛を前面に出し、明るい未来を歌った「ウルトラマン」ではなく、むしろ人間の奥底にある悪意を紡ぎ出した「怪奇大作戦」に似た感じがある。1,2話の脚本を書いた佐々木守氏にしても、後の同じ宣弘社で製作された「アイアンキング」では、現在の日本の転覆を企む、古き日本の政権の担い手たちが悪役となる作品を紡ぎ出しているし、上原正三氏、市川森一氏にしたところで、人間同士の信頼を揺らがせる脚本を書いている。そうした点で言えば、重苦しいドラマとはいえ、この脚本陣ならではの展開には納得せざるを得ない。

 本作に登場するすべての宇宙人のデザインは、先述の通り過日物故された池谷仙克氏の手によるものだ。そのデザインの、どこか乾いていてクールな印象は、氏独特のデザインセンスといっていい。腰から上にデザインやボリュームの比重があるライダー怪人などと違い、足元まで丁寧にデザインされ、体色や装飾まで連続性を持ってつま先までデザインされ作りこまれた宇宙人の着ぐるみは、決して出番が多くないにも関わらず、丁寧な作りに好感が持てるもので、デザイン画の再現度も高い。ウルトラ怪獣とは違いギミックの仕込みはほとんどないため、シンプルでクールさが漂う事情は、こういうあたりも理由だろう。3話に登場したシャイン星人の体表に埋め込まれた鏡、6話に登場したゴルゴン星人の2人で1体の二身一体のデザインセンス、8話に登場したソロモン星人の細かい装飾などが代表例だろうか。

 そして迎えた第10話で、物語は急展開する。宇宙人にとらわれた長女を助け、危機を退けた春日兄弟は、父が残した光子ロケットを目の前にして、その格納庫で死んだ父親からのメッセージを受け取る。兄弟の力を合わせて困難に立ち向かい、それに負けることなく目的を果たせと。メッセージの隣にあった手形に兄弟が手を合わせると、隠された扉が開き、完成した光子ロケットのエンジンが現れる。兄弟の苦労は無駄だったのではなく、その奮闘努力こそが結実し、父の残したロケットエンジンを見つけることができたのだ、というラストで第1部は終了する。続く11話にてさらなる展開が待っている「シルバー仮面」ではあるが、今回はここまでとしたい。次回、怒涛の展開と新たな作品の見どころとなった特撮部分に注目してみたい。
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Author:波のまにまに☆
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