シルバー仮面~その2・中と外にある3つの闘争~

<春日兄弟の試練の意味>
 10話において、春日兄弟のこれまでの苦難の旅は、父である春日光一郎博士によって課せられた試練であったというオチで終幕する。まずこのポイントについて、きちんと押さえておきたい。春日博士によって課せられた試練とは、何ゆえの試練だったのか?
 10話の終盤、星人による脅迫を退けた春日兄弟は、博士が残したメッセージを受けとり、兄弟の掌を合わせることで鍵が開かれ、完成した光子ロケットのエンジンは、光子ロケットに組み込まれることになる。この光子ロケットは続く11話にて星人によって破壊されてしまうものの、津山博士の協力を得て、春日兄弟はベム計画を立ち上げ、兄弟自身の手によって光子ロケットの改良型を開発し、父の意志を受け継いで宇宙へ乗り出していこうとする。10話終盤で明かされる春日博士のメッセージによれば、兄弟が力を合わせて困難に立ち向かい、その試練を乗り越えることこそが、試練の最大の目的であり、10話までの物語は、兄弟をステップアップするための物語ということになるのだが、もう少し突っ込んでみたいと思うのだ。

 春日博士が宇宙人に命を狙われながらも、光子ロケットの開発に心血を注いだのは何のためか? それは地球だけでなく未知の宇宙へと乗り出す人類の後押しをするための研究であったはずだ。だがその春日博士の理念は、宇宙人たちは理解しない。宇宙人たちは地球人の宇宙進出をよしとせず、地球上で繰り広げている戦争の火種を、宇宙にも広げると解釈しているのだ。ということは宇宙人たちは専守防衛の思いで春日博士を襲っていたことにはならないか。それを誤解だといいながら、宇宙人との対話を持つべき春日博士および春日兄弟たちは、自分たちの光子ロケット開発による地球人の宇宙進出が、宇宙を荒らすという誤解を解くための努力をしていないかにみえる。こうなると春日博士のやりたかったこととは、たとえ宇宙人たちの専守防衛の攻撃を排除してでも、地球人は宇宙の乗り出すべきだ、という雄々しいメッセージとも取れる。事実、春日兄弟は最終回にて堂々と宇宙へと乗り出して終幕するのだから、本質的にはそうなのだろう。だがそれほどの春日博士の雄々しい決意は、科学者として正しい姿なのであろうか?

 春日兄弟が10話までの旅路の中で出会った科学者の姿を考えてみてほしい。自身の研究に埋没し、その応用利用として兄弟に協力することを拒否する者、宇宙人に身内を人質にとられたが故に変節する者、果ては宇宙人に命を狙われて春日兄弟に光子ロケットの秘密を宇宙人に渡すよう請い願う者、兄弟に協力するあまり、恋人に宇宙人が乗り移っているのも知らず、ついには恋人を永遠に失ってしまう者までいた。個人の理由で春日兄弟と対立する科学者は多い。そう考えを進めると、春日博士が兄弟に強いた試練とは、科学者としての在り様を見せていたように思うのだ。しかもそれらのどれが正しい科学者の姿であるという答えを導かず、兄弟たちに科学者として、人間としてどうあるべきかを問う試練であったように思うのだ。だがその試練は、宇宙人との対話を必要としないものであり、あくまで地球人側に都合のいい形で解釈される範囲にとどまるものだ。もし平成ウルトラセブンシリーズと同時期にこの作品が作られたとしたらどうだろう? 宇宙の中の地球人という立場の中で、宇宙人との対話を主眼としながら、互いに相いれない時は力で衝突する物語になったとしたら、それはあまりにも現実の地平に寄り添いすぎて、かえってSF性を欠く作品となったことだろう。つまるところ、「シルバー仮面」という作品は現実世界の科学に懐疑的になりながらも、地球という星の上で暮らす地球人類が宇宙を目指すことに希望を抱いていた時代の作品だといえる。

<3つの戦い>
 「シルバー仮面」がほぼ同時期に放送された円谷プロ製作の「ミラーマン」と、熾烈な視聴率競争を繰り広げていたことは、当時を知る人々にとってはよく知られた話である。「ミラーマン」に先行して放送していたとはいえ、根本的には円谷プロで仕事をしていたスタッフによって製作されている2作品だから、その競争意識もひとかたならぬものがあったはずだ。Wikiによればシルバー仮面では前半後半と2度変身することでバトルシーンを2分割した。予算の制限から巨大ヒーローの活躍を後半1回に持ち込むやり方は「ウルトラマン」のころから同様の手法だし、2度ヒーローを出すやり方はすでに「仮面ライダー」でも行われており、巨大ヒーローではなかなかなしえない構成だった。だから当時の子供たちは前半はシルバー仮面を見て、後半はミラーマンを見るといった視聴スタイルだったという。ただ、これでは当時の子供たちに物語の持つカタルシスは伝わらなかったろう。最初は老舗・円谷プロの「ミラーマン」に、視聴率的に水をあけられていた「シルバー仮面」だったが、シルバー仮面がジャイアントとなって巨大ヒーローとして活躍し始めるころから視聴率は徐々に盛り返し、当時の子供たちの人気を2分するヒーローとして認識されていった。その痕跡はサブタイトルにも見て取れる。16話以降のサブタイトルには、その回でシルバー仮面が使用する必殺技の名前が盛り込まれているのだ。本来シルバー仮面は技を持たないヒーローであったから、等身大ヒーローの時は星人にトドメを差すのは兄弟による銃による攻撃だったことが多かった。これにより星人との丁々発止の戦いに緊迫感が盛り込まれ、子供たちはその戦いを、固唾をのんで見守っていたのだが、如何せん派手さに欠ける。すでにウルトラマンの眩いばかりの多彩な光線技を見慣れた目には、この緊迫感は理解してもらえない。その判断がシルバー仮面ジャイアントとなった時に逆に作用した。サブタイトルでうたわれた必殺技によって怪獣や星人が倒されるのは既定の事実だとしても、地味な攻撃ばかりだったシルバー仮面が、いかにしてどんなタイミングでその技を繰り出すのか? 子供たちの意識はそこに注視し始めたのだろう。視聴率的にミラーマンを上回ることはできないまでも、20%割れをおこすほどには追いつめることができたという。

 このようなテコ入れの結果として、「シルバー仮面」は押しも押されぬ人気ヒーロー番組へと変貌を遂げた。視聴率という実態のない数字との戦いがそこにあったのだ。だが予算の低さは付きまとい続けたという。番組を方向転換し、子供たちの人気を得たといいながらも、スタッフたちは常に低い予算との戦いを強いられ続けたという。視聴率が好転しても、局から回される予算は増えたりはしない。特に巨大ヒーローになってからの特撮部分でのセットやミニチュアの立て込みなど、予算同様時間にも悩まされ続けたが、池谷仙克氏の話によれば、円谷プロでの経験がこういった困難を乗り越えさせたということらしい。

そしてシルバー仮面がジャイアントになったことで、物語も展開した。父親の残した光子ロケットは早々に破壊され、シルバー仮面ジャイアントという力を手に入れた。だがそれで春日兄弟はあきらめたわけではない。父の遺志を継ぎ、さらなる改良を加えた新型光子ロケットの開発に着手。「ベム計画」と名付けてテストを繰り返すことになる。だがそれまで同様に地球人の宇宙進出を良しとしない宇宙人たちによって、計画は度々邪魔されることになる。そこにあったのは、宇宙へと乗り出そうとする人類が越えねばならない壁の連続だったのだ。春日兄弟による光子ロケットの開発も一つの闘争なら、16話などで見られるロケット開発に無理解なマスコミへの対応なども、春日兄弟には闘争の一つだったろう。さらに18話では長期間の宇宙航行におけるパイロットの精神力を鍛えるための実験によって、被験者が怪物化してしまう事故が発生。幸い宇宙人による邪な計画であったため、シルバー仮面によって元の人間に戻して物語は落着するのだが、この話、ウルトラマン第23話「故郷は地球」のジャミラに似ていたりする。19話では春日兄弟に先んじてとある星へと調査に行った科学者が、それと知らず現地の住民を殺害してしまい、その復讐のために怪獣が地球に送り込まれるという物語。これもウルトラセブン26話「超兵器R1号」と似たような話である。23話では星人との戦いに勝つために光二は特訓しており、まるで「帰ってきたウルトラマン」や「ウルトラマンレオ」を彷彿とさせる特訓までしている。25話では故郷を食いつぶして難民となった宇宙人が地球へと攻め寄せる話だし、26話は些細な誤解から宇宙からの親善大使に怪我をさせてしまった春日兄弟が、ふたたび信頼を勝ち取るまでの物語であり、生存者である宇宙人を故郷へと返し、改めて地球人類との友好を結ぼうとする希望に満ちたラストで締めくくられるのだ。

春日兄弟が物語後半で経験した数々の試練や戦いは、宇宙へと勇躍する人類にとっては避けられない事象がほとんどであり、そこに横たわる問題はいまだ解決を見ない難問が多い。例え時代が異なるとはいえ、過去作で提示された問題を再提示してもまだ、解決を見ない難問の数々を、果たしてこれを見ていた当時の子供たちはどう捉えていたのかははなはだ疑問だが、そうした問題提起が硬派なSF性を醸し出していることは疑いえない。例え等身大ヒーローが巨大ヒーローへと変貌しても、物語を本質的に支えていた科学礼賛とそこに通底する問題提起の根本までは変化せず、むしろ過去作を積極的に繰り返し語り直すことで、うつうつとせずに明るい未来を提示しようとする脚本には好感が持てる。「シルバー仮面」全26話は、当初の予定を全うして完結したといっていい。そこには内と外にある3つの闘争がありながらも、キャスト・スタッフの並々ならぬ努力と作品愛によって、最初に掲げたテーマを完遂して終幕したと思える。高いSF性、科学が見せる輝かしい未来と、そこに到達するまでの苦悩と犠牲、それでも前向きに進む科学者を讃えながら物語は終わったのだ。それを当時のお気楽さと侮ることはできない。

<故郷は地球とは?>
 最後に「シルバー仮面」を精神的支柱となった主題歌について触れておきたい。本作の脚本を執筆した佐々木守氏による作詞の主題歌「故郷は地球」。前述の通りこのタイトルはウルトラマンのジャミラの回でも使用されたサブタイトルでもある。歌詞の内容を見る限り、春日兄弟の悲しみや生い立ちを歌詞に編み込んでいることがわかる一方で、彼らの夢が遠く星空の彼方にある宇宙へのあこがれを歌っていることがわかる。だがラストは「故郷は地球」で締めくくられている。これは何を意味するのか?

 佐々木守氏の脚本では、その出自が重要な役割を持つ。「アイアンキング」における現政権を打倒する数々の悪の組織、「ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説」における常世の国の人々などなど、帰属意識がどこにあるか、その帰属意識故に対立したり別れなければならなかったりといった悲しい現実など、佐々木守作品にとっての重要なモチーフの一つだといっていい。どこにいても、どこで何をやっていても、春日兄弟は地球人である。例え地球人類が宇宙へと進出していったとしても、故郷は地球であり、もし進出した先の宇宙で何事か迷惑をかけたり、争い事が起きたとしても、その責任は自身に帰する。我々は逃げも隠れもしない、地球人であると表明する決意。それがこの歌詞からはにじみ出ていると思う。望郷の思いで遠い宇宙でふるさと地球をを思い出すための歌ではなく、宇宙へと雄々しく乗り出していく地球人へのエールと包み込むような優しさにあふれた名曲ではないだろうか。
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