映画「POWER RANGERS」~突っ込んでおくべきところ~

 以前、1995年に公開された「パワーレンジャー THE MOVIE」についてレビューした。もうこのタイミングしかないってほど、今回の映画の公開直前のタイミングだったが、蓋を開けてみると、やっぱりというかなんというか、劇場にもよるだろうが、筆者が鑑賞したシネコンでは公開からわずか2週間ほどですでに閑古鳥だった。もちろん観客が「パワーレンジャー」というコンテンツに懐疑的だったのもあるだろうし、この日本においてスーパー戦隊シリーズというものの認知のされ方が、あくまで未就学児童を対象にした作品であることもあるだろう。
つい先日人気バラエティ番組「アメトーーーク」において「スーパー戦隊芸人」が満を持して放送されたが、その扱い方も笑いの取り方もこれまでの触り方と一切変わりがなかった。だがそれは長く愛され続け、視聴主体の子供たちが入れ替わりながらも、決してぶれることなく正義と団結を描き続けている証拠だ。たとえ笑い飛ばしても、そこにあるドラマも真実も変わりがないのなら、笑ってもらったついでにそこまで説明できればいい。そこまでなかなかできずに、一緒にせせら笑ってしまうから、そこで終わってしまうのだ。

 では戦隊シリーズがどうしても子供番組を超えられない理由は何か?と問われたら、そもそも戦隊シリーズは子供番組を超えるつもりがないのだとしか答えようがない。だがそれでも日本とアメリカとの齟齬はある。「恐竜戦隊ジュウレンジャー」がアメリカに渡って「パワーレンジャー」となった1992年の段階でも、アメリカ側スタッフに受け入れられたところと、どうしても受け入れられないところがあったという。実はその日米の齟齬がよくわかるのが、今回の「POWER RANGERS」であったかと、筆者は思う。その分、突っ込むべきところをわきまえているなあと思ったのが、筆者の鑑賞後の素直な感想であった。

<作品概要>
 前段となる「パワーレンジャー」に関しえては先の記事があるので、そちらをご参照ください。今回はもういきなりあらすじからいっちゃおう。

 アメリカのとある地方。そこでささやかな窃盗事件が起こる。事件にかかわっていた青年ジェイソンは、地元のエンジェル・グローブ高校に通う高校生でありながら、アメフト部のスター選手であったが、この事件を機に選手生命を絶たれてしまう。その上補修クラスへと編入される。そのクラスで出会ったビリーと共に鉱山へと向かうジェイソンは、偶然そこに居合わせたキンバリーやトリニー、そしてザックと出会う。ビリーの爆破した岩壁から5色に光る平たい円盤状の物体を手にして、5人はその場を逃げるように立ち去るが、逃走に使った車は鉄道に衝突したはずだった。だが翌朝5人はベッドで目を覚ます。何が自分の身に起こったのかわからないまま、いつの間にか身についた強い力に翻弄される5人は、再び昨夜の鉱山へと足を踏み込む。そして鉱山のクレパスの下で5人が目にした物は、サポートロボットのアルファ5とパワーレンジャーの基地、そしてパワーレンジャーを導くゾードンの声だった。ゾードンによれば太古の地球は魔女リタによって崩壊の危機に瀕していたが、ゾードンたちパワーレンジャーの力によってなんとかリタを封じ込めることに成功したという。だがリタはいつ何時復活するかわからない。ゾードンはジェイソンたちを次世代のパワーレンジャーと定め、リタの復活に備えて訓練を始める。ジェイソンたちが手にしたアイテムはパワーレンジャーとなるキーではあるが、その力を開放し変身するためには、仲間を思う心や力を身につけねばならないという。だが訓練を重ねてもなかなか変身できずに苦しみ始める5人は、互いを知ろうと努力する。同じ学校に通っていた5人ではあるが、学校でも家庭でも社会でもマイノリティな5人は、決して他人には明かせないそれぞれの悩みを抱えていたのである。少しずつ互いを理解する5人。だが彼らの街はすでに復活を果たしたリタの襲撃を受けていた。街中の金を奪い、徐々に自身を強化していくリタ。世界を滅ぼす力を持つというジオ=クリスタルを探して街を徘徊するリタは、パワーレンジャーからジオ=クリスタルのありかを聞き出そうとする。その挑発に乗ってしまったジェイソンたちは、力及ばずたまさかビリーが気が付いていたジオ=クリスタルの場所を知られてしまう。そのやり取りの中でビリーを失ってしまうが、ゾードンによってビリーは復活する。そしてついに5人の想いを一つにしてパワーレンジャーに変身する。金を使って復活させた巨大な怪物によって街を蹂躙するリタの目の前に敢然と立ちはだかる5人。パワーレンジャーとリタの戦いの火ぶたは、ついに切って落とされた!

<突っ込んでおくべきところ>
 本家日本のスーパー戦隊は、メンバーの姿かたちや操るマシンといったものにモチーフを与え、毎回異なるモチーフを選ぶことで差別化を果たしてきた。細かい差異は当然あるし、それぞれの作品の目指すところが異なれば、自ずとモチーフが似ていても異なる物語運びになる。それこそがスーパー戦隊の持ち味であり、サイクルを繰り返す中で似たモチーフが登場することを可能たらしめている。未就学児童が2~5年も付き合えば、どうしても似たようなモチーフが登場することで、サイクルを調節し、否が応でも卒業を促すことになっている。スーパー戦隊の作品作りはファンを永続的につかみ続ける作り方ではなく、ある程度のサイクルで飽きて卒業する仕組みを採用しているといえる。

 アメリカで放送されている「パワーレンジャーシリーズ」もまた似たような性格であるのは致し方ないのだが、これが劇場版となると、単なるイベント編以上に作りこみが必要になる。その作りこむ部分こそ、元来のスーパー戦隊で置いてけぼりにしてきた部分だろう。TVパワーレンジャーを見ていて、子供と一緒に見ている大人ならどうしても?と首をひねらざるを得ない部分を、きちんと作りこむことで劇場版としての見どころとしているのが、本作の最大の特徴となっている。逆にそれをせずに、イベント編として作った1995年の劇場版「パワーレンジャーTHE MOVE」は、あくまでTVシリーズの延長線上にある作風であるから、本作とは対極にあるといっていい。

 最初に本作が突っ込んだ部分は、5人が選ばれた理由だ。劇中で描かれているのは、“彼らがパワーレンジャーになるためのメダルを受け取ってしまったから”に他ならない。だがその5人が同時に同じ場所でメダルを手に取るために、なぜ5人が同じ場所にいたのか?というところに立ち返って説明をつけている。5人はそれぞれがなんらかの理由があって、あの鉱山跡に行く必要があったが、その理由はビリーと彼に誘われて鉱山に向かったジェイソン以外の3人は、孤独でいるために鉱山跡にいたことになっている。物語の導入がそのまま5人がパワーレンジャーに選ばれた理由を描いているのだが、5人が5人とも何らかの理由で社会的マイノリティの立場に追いやられている点が、彼らを鉱山跡に追いやっていることがわかる。この社会的マイノリティの部分こそが、本作の大きな肝であり、さまざまな場面でこのポイントが顔を出す。

 彼らは鉱山跡の中でゾードンやアルファ5と出会い、パワーレンジャーとなるべく特訓を開始する。ここも大きなツッコミどころだ。日本のスーパー戦隊ならまるっきり無視している点で、変身前は素人の動きを見せる主人公たちが、なぜか変身後は戦いのプロのような動きを見せる。何の訓練もなしになぜ戦うことができるのか? 「電磁戦隊メガレンジャー」あたりならスーツに格納されるコンピューターによって動きまで制御されている、などと説明しちゃう。だが本作ではパワーレンジャーとして戦うために、まず変身しないといけないのだが、まず5人は変身できずにいる。そして戦うための技術とそれに伴う心を養うために、特訓を行っているのだ。

 だがいつまでたっても5人は変身できない。問題は5人が抱える社会的マイノリティに由来する人間不信の部分が、5人やゾードンを含むチームワークや“和”あるいは仲間を思いやる優しさや心といった感情部分に齟齬が生じているためだが、それと気づかず、彼らは厳しい特訓から逃げ出してしまう。だが“逃げてしまう”ことにためらいを感じて、5人は鉱山跡でキャンプしながら、互いの話をし始め、互いの秘密を共有しようとするのだが、キンバリーがなかなかこれに同調できない。もちろん自身が社会的マイノリティにおかれた状況を生み出した元凶である自覚がある故で、せっかく仲良くなれた他の4人に、後ろめたい思いを持ちたくなかったから、真実を話せない。

 この段階でもジェイソンはリーダー風を吹かせているように見えるだけで、彼らのリーダーとしての自覚だけは生まれてはいるものの、そのリーダーシップを持て余している。5人がレンジャーになれない苦しみを、代表してゾードンに訴えに行っているジェイソンではあるが、自分自身でも変身のためのキーワードが、自分の中で見いだせない。ジェイソンは逆に、ゾードンが自分たちを利用しているのではないか?という疑念を持つ。事実、ゾードンとアルファ5の会話によれば、5人の変身時におけるパワーによって、ゾードンは実体として復活できるはずだという。5人に失望しかけていたゾードンにとって、それが真意かどうかはわからないが、それを聞いたジェイソンはゾードンを疑ってしまう。この時ジェイソンは、ゾードンに反発し、ゾードンに依存しない気持ちを持って、逆説的に初めてリーダーシップを自覚しているのではないだろうか。その行き過ぎた勘違いによるリーダーシップは、変身できないまま復活したリタへの戦いへと仲間を向かわせ、ビリーを死に追いやる結果となる。このシークエンスが本編中の泣かせどころでもあり、最重要シークエンスである。バックにかかる名曲「スタンド・バイ・ミー」の、なんとまあ切ないことか(サントラCD買わないとね)。訓練中最初に変身できたのがビリーであり、4人が変身できた事情をビリーに聞きたがったが、ビリーはそれを上手く説明できない。仲間を思う心で、ジェイソンとザックのケンカに割って入った時にビリーは変身しており、見ているこちらは「それだよ、それ!」と変身した事情が分かるのに、劇中の5人は理解できないというジレンマ。それをビリーを失って初めて理解し始める4人は、ビリーの弔いのためにリタを倒すことを目標に、変身をしようとする。ここで奇跡が起きる。復活するはずのゾードンのパワーをビリーに与えて、ビリーは息を吹き返すのである。こうして戦うための体と心の準備を終えた5人は、街を蹂躙して暴れまわるリタのもとへ、戦いに赴く。

 変身できないままで戦いに赴く前、ビリーは自分たちの関係性を聞く。それに応えてジェイソンは「友達」だというシーンがある。これも実はスーパー戦隊ではなかなか言及されない話で、1話目で5人が登場した瞬間に、彼らの出自や関係性が短く描かれるため、詳しく言及されない。「メガレンジャー」や「トッキュウジャー」の場合は最初から友達だったが「ギンガマン」や「バトルファーバーJ」などは戦うために集められた戦士だった。「ジェットマン」も選ばれた戦士であったが、その関係性を結ぶためにはほぼ1年の放送期間を要している。だがそれをして「友達」であると本作では言及する。戦いが終われば散り散りバラバラになる可能性のある不安定な関係性を、「いつまでも友達」と言い切るジェイソンの言葉に、ビリーや他の3人がどれだけ心強かっただろう。

 こうしてついスーパー戦隊シリーズでは忘れられがちな戦う理由や動機づけの部分に着目し、きちんと映像化して見せている点は、本作を最大限に評価したいポイントだ。TV版のほうでどこまでやっているかは、全部見ているわけではないので、わかりかねるが、筆者が知りうる範囲では、このポイントは重要だと思える。特訓の過程で次第に絆を強める5人は、教室で回す小さな紙切れの中で、「バンド組もうぜ!」とまで書くほどの中の良さを見せる。それが何よりうれしいビリーだからこそ、最初に変身するわ、死んでみせるわ、復活するわ、4人の変身まで促すわと、八面六臂の大活躍となる。さらには、リタの操る巨大黄金怪物を相手に、5人はぞれぞれのモチーフとなる恐竜型ゾードに乗り込み戦いを挑むが、徐々に圧倒されると思いきや、5人の気持ちが一つになったことにより、5台のゾードは合体し、巨大なメガゾードとなって敵を倒すことに成功する。このあたたりも、システムに従って合体するという機械的な理由ではなく、あくまで5人の気持ちが一つになる、というシークエンスこそが採択されているあたりが心憎い。

<やる気満々……ですけど>
 パンフレットの監督インタビューによれば、こうしたツッコミどころはあくまで監督による解釈であると断っている。こうした解釈によってきちんとキャラクターの肉付けをなされた本作の主人公たちであるが、そのドラマが前半から中盤に長々と語られているため、子供が楽しんで鑑賞するような作品とは相いれないものとなっている。だが子供向けのパワーレンジャーを切り捨てて、1本の劇場用映画として見た場合、後半のバトル部分の薄さ加減が気になるところだ。本家の戦隊映画なら、これでもかと見せ場を作り上げ、似たシチュエーションも繰り返す。そういう繰り返しをばっさり切り落としているのは好感が持てるのだが、如何せんバトルが薄味だった。

 筆者は本作を吹き替え版で見たのだが、日本人キャストに関しては文句なし。アルファ5の山ちゃんもいいし、杉田智和や水樹奈々も、耳慣れた人ならすぐに気づけるけど、なんら違和感はないし、むしろいい。この際広瀬アリスだって全然いいじゃない。ところでリタ役の沢城みゆきを、どうして見た人はほめないの? あんなに楽しそうに全方位的悪役をやってる沢城みゆきって、むしろ耳得ってもんよ。

 物語のラスト、大気圏へと放り投げられたリタは宇宙空間で氷漬けとなって活動を停止した(はいそこ、ジョジョのカーズそっくりとか言わない!)。5人が平和になったクラスに戻ると、まだ見ぬ6人目のグリーンレンジャーの存在がほのめかされており、どうやら製作側は続編をやる気満々でいるらしい。事実口外されている話によれば5~7本ほどを視野に入れているとのこと。ただし心配なのは日本での観客の入りについて、記事冒頭で示した通りであるからにして、製作されても日本できちんと公開してくれるかは未知数と言わねばなるまい。だが東映が強権発動して公開してくれると信じている。筆者は今後もこの劇場版シリーズを期待して見続けていきたいと思う。
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