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映画「エイリアン・コヴェナント」~アンドロイドの見る夢は…~

 以前SFホラー映画の傑作「エイリアン」シリーズとその前日談となる「プロメテウス」に関する記事を書いた。この時は稀有な能力と魅力で人間たちを追いつめる“エイリアン”という生物を称賛すると同時に、「プロメテウス」の時代より物語の背後でうごめいている会社・ウェイラント湯谷の悪辣な計画を批判した。その上で今回劇場公開された前日談のその2である「エイリアン・コヴェナント」という映画を見ると、「プロメテウス」に登場したウェイランドの社長の人となりが、さらに事態を悪化させていると気づく。人としての傲慢さ、アンドロイドに対する製造責任よりも創造主としての傲岸不遜な態度。やさしさやいたわりなどまるで感じられないその態度こそが、この物語の引き金であることが、映画冒頭で示されていたことを思い出すのは、この映画の終わった後だ。その絶望たるや、吐き気を催すほどで、これほどまでに希望を感じられない作品も多くはないだろう。シリーズの連続の中でなら、中々の感慨がわいてくる作品ではあるが、公開後の批評ではあまり褒められていない「エイリアン・コヴェナント」は、映画としては見事に凡作だった。その理由を説明しながら、本作の主人公である2体のアンドロイドについて語ってみたい。

<作品概要>
 「エイリアン・コヴェナント」はこの9月に公開された作品。前作「プロメテウス」(2012)同様に「エイリアン」(1979)を作ったリドリー・スコット監督による作品で、「エイリアン」(1979)の前日談にあたる作品だ。どこぞの映画評論家氏の言によれば、いまさらエイリアンの出自に興味があるのは、生みの親のリドリー・スコットだけだ、とのことで、それはまったくもって筆者も同じ気持ちでいっぱいなのだが、でも作っちゃうのもリドリー・スコット監督のおちゃめさんなところなので、これはもうファンは監督ごと愛してやってほしいところだ。
 さて物語だが、冷凍睡眠の入植者たちを乗せた宇宙船コヴェナント号が、入植先のオリエガ6号星へと向かう途中でニュートリノによる衝撃波を受けて事故が発生。コヴェナントに乗り込んでいたアンドロイド・ウォルターは入植スタッフを起こす。冷凍睡眠からの起床時の事故で船長が落命したものの、事故処理自体はすぐに収束した。その過程でオリエガ6号よりも地球の環境に近いと思われる惑星を発見。乗組員はこの惑星を調査することに決める。だがこの惑星こそ、前作「プロメテウス」のラストで生き残ったエリザベス・ショウとアンドロイドのデイヴィッドが旅立ったエンジニアの母星であったのだ。その惑星に着陸した乗組員の一部は黒い胞子を吸い込んだ直後に体調を崩し、吐血する。着陸船の医務室内でもだえ苦しむ乗組員。やがてその背中を食い破り出てきたのは、ぬるっとした白い、まるでエイリアンの幼体のようなネオモーフである。これを退治するために着陸船を失ってしまう乗組員は、別のネオモーフの襲撃を受ける中、アンドロイド・デイヴィッドによって助けられる。コヴェナントに残った乗組員は危険を冒して着陸したスタッフを助け出そうとするが、天候が邪魔して連絡すらままならない。そんな中、徐々に明らかにされるデイヴィッドの秘密。エリザベス・ショウはどうして死んでいったのか? デイヴィッドがエンジニアの母星で何を行ったのか? そしてデイヴィッドが企む計画の正体とは? ついに生み出された成体のエイリアンによって脅かされる乗組員たち。相次いで仲間を失ったダニエルズは生き残れるのか?

<リドリー・スコットの目指したもの>
 もしこの映画を見るなら、ぜひとも最後の最後まで見てほしい。少なくても冒頭の映像の意味が解るのは最後のシークエンスなので、見逃さずに鑑賞してほしい。
 さてこの映画が何ゆえ批評家から批判されているのか? それは本作の映像を真摯に見ればすぐにわかる。ものすごーく旧作をなぞらえてあるからだ。そうすると、出来上がってくる映像は、どうしても旧作を想起させることになる。宇宙船の中の映像も、そこに映り込む機器類も1979年の「エイリアン」に酷似しているし、物語終盤のエイリアンを宇宙船内で追いつめていく感じも同じ。中盤でエイリアン視線の映像で船内を走り回るのは「エイリアン3」だし、ラスト付近でエイリアンを宇宙へ放り出すシーンは「エイリアン4」によく似ている。銃火器によるエイリアンの撃退シーンはやっぱり「エイリアン2」を思い出させるので、違うなあと思えるのは脱出艇でのエイリアン撃退シーンが新味だろう。つまり、本作でリドリー・スコット監督は、これまでのシリーズでやってきたことを、あえて現在の技術レベルに引き上げて再現してしまったわけだ。もちろんそれぞれが人間とエイリアンとの闘争の歴史そのものの映像であるから、個々のシーンはそれなりに怖いし、見ごたえもある。前作「プロメテウス」がエンジニアの出自にスポットを当てるあまり、「エイリアン」シリーズからは遠ざかった感じの映像だった。自身が生み出した79年の「エイリアン」以外は別の監督の手によって生み出された映像だから、リドリー・スコット自らが画作りをすること自体を指摘しておきたい。批評家はこれをして冷徹に「見慣れた、手垢のついた映像表現」と切って捨てる。けれどリドリー・スコットが自らの作品でこれまでの作品の映像をなぞるというのは、富野由悠季監督が富野監督以外の監督が作ったガンダム作品を包括し、自らの作品である「∀ガンダム」において「黒歴史」として扱ったことに、ちょっとだけ似ている気がするのだ。別の監督の手によって継続されたシリーズを、生みの親であるリドリー・スコット自身が総括しているようなものだと思えばいいか。

 その一方で、エイリアンというキャラクターに関しては、おなじみのエッグチャンバー→フェイスハガー→ゼノモーフへの変態の過程を見せる一方、それ以前の成長過程であるネオモーフと呼ばれる生物学的幼体のようなものを生み出し、まるで子ザルが人間を襲うように襲わせたり、腹ではなく背中から誕生し、立ち上がり起き上がり歩き出す過程を見せるし、ぬるっとつるっとした頭部に急に口が開いて、赤い中身が見えたりと、中々にグロい映像も作り出している。もちろん凄惨な殺戮映像はもとより、ドキドキしたりビクッとさせられる驚愕映像はいわんをや。シリーズのお約束である。先のあらすじの項では触れていないが、エイリアンの出自に関しては驚愕の事実が隠されており、ネオモーフがどうやってゼノモーフになっていくか?という謎に、「プロメテウス」同様にさらに触れてくれる。少なくともエイリアンの誕生には人類の遺伝子が欠かせないことが本作でも明らかにされている。かつてのシリーズでは、ウェイランド湯谷がなんとしてでもエイリアンを手に入れて、生物兵器として利用したい話が、シリーズの根底にある。そもそもエンジニアの作った生物兵器の暴走が生み出した生物が、エンジニアの種から生まれた地球人類によってさらに遺伝子的な成長を果たし、人類に牙をむくという、なんともおかしなスパイラルから抜け出せない人類の、エイリアンとの闘争の歴史がエイリアンシリーズだという見方もできる。ひどい話だ。

<製造者責任の遡及適用は可能か?>
 さてここからは本作の主役である2人のアンドロイドであるウォルターとデイヴィッドに関して話をしたいのだが、このあたりを突っ込んで話してしまうと、ネタバレになってしまう。そこで端的に結果だけを言えば、この作品の元凶は、前作「プロメテウス」のラストでエリザベス・ショウと共に脱出を果たしたアンドロイド・デイヴィッドである。そして本作の冒頭で会話している二人は、ウェイランドの社長・ウェイランドと誕生したばかりのデイヴィッドである。このシーンにおけるウェイランドのデイヴィッドの扱い方に、全てが集約されているといっていい。このアンドロイドの製造元の人間は、デイヴィッドを従属するように扱い、傲岸不遜にふるまうことで、デイヴィッドに明確な人間への叛意を含ませる。このときのウェイランド氏はデイヴィッドのものいいに明らかにひるんでおり、それを悟らせないためにお茶を入れさせて主従関係を示すことで、デイヴィッドを押さえつけようとしている。その不遜な態度がデイヴィッドの感情をさらに悪い方へと追いやる結果となる。その結果としてデイヴィッドはどんな考え方に至ったか? それはこの映画のキモなのでここでは触れないが、ウェイランドがエンジニアに対し傲慢にも自分が神にも等しいと言い放ったように、デイヴィッドがエンジニアの星に到着して以降長年研究し、誕生させたエイリアンの創造主となることにより、ウェイランドと等しい存在として人類を屈服させると言い放つ。人間をエイリアンの苗床として利用し、そのエイリアンを人類にけしかけることによって人類を支配することを夢想する。もちろんダニエルズたち劇中の人間だって、これをよしとはしないだろう。ダニエルズたちと行動を共にしてきたアンドロイド・ウォルターもまた、ダニエルズを守るためにデイヴィッドと戦うことになる。

 誰の目にもデイヴィッドの悪行の責任が、ウェイランドにあることは明白だ。責任を追及すればウェイランドを追究すればいい。ところがウェイラントは前作「プロメテウス」にて死亡している。責任追及の遡及適用はできそうにない。ところがその同型機であるアンドロイド・ウォルターがこの時代にも存在している。つまりデイヴィッドの生産ラインは生きていて、ウォルターを生み出していることを考えれば、ウェイランド社はアンドロイドを量産していることを示している。つまり製造責任はまだウェイランド社にあると見ていいのではないか? 前作「プロメテウス」とエイリアンシリーズを扱った時に、ウェイランド湯谷という会社のひどさには、そんじょそこらのブラック企業も裸足で逃げ出すほどの会社であったことを指摘したが、人間を助けたウォルターを信じればいいのか、プロトタイプであるデイヴィッドを作ったウェイランドの責任を追及すればいいのか、なかなかに迷うところだ。常にエイリアンを地球に持ち込もうとしたウェイランド湯谷。人間の命を顧みない非道な企業。ここで本作の事件のあらましを思い出してほしい。コヴェナント号の乗組員を起こしたのは誰か? 事故は本当に偶発的なものだったのか? そして発見した星がデイヴィッドがいるエンジニアの惑星だったことも偶然だったのか? これらの疑問点が偶然の産物でないとしたら、ウォルターですらウェイランドの支配下にあるアンドロイドということになる。本作のエンドはかなり気分の悪くなるお話で、そのラストの行状は背筋も凍るほどだ。それはデイヴィッドの問題なのだが、この物語が実はウォルターの掌の上で踊らされていたという話であったとしたら、こんなに恐ろしい話はない。

 どこぞの映画評論家氏が言うように、エイリアンの出自を知りたいのは監督のリドリー・スコットだけというが、ここまでリドリーがこだわって作りこんだのであれば、あともう1作付き合うことで、さらなるエイリアンの出自や、ウェイランド湯谷誕生のいきさつ、エンジニアの秘密などがわかるのかもしれない。そうなると残る3部作の1作が楽しみにもなってくる。いずれにしてもリプリーの時代へとつながる話になるわけだから、どうやってリンクさせていくか?だけでも見に行く価値はあると思う。「STAR WARS エピソード3」におけるダースベイダー誕生の瞬間や、「ローグワン」ラストの「エピソード4 新たなる希望」の冒頭につながるような正の感動は望むべくもないが、絶対に人間が越えられない宇宙の食物連鎖の頂点たるエイリアンの誕生と繁殖の過程という絶望を楽しみに待ちたい。
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