悪役冥利2~女王アハメス(電撃戦隊チェンジマン)~

 悪役が悪役たり得るためには、善悪の2項対立の上で、善すら超える強いキャラクター性が求められると思う。これはマスクをかぶっていても、顔出ししていても同じことだ。「科学戦隊ダイナマン」における後半の第三勢力である「ダークナイト」は、終盤でその正体が、しっぽを切られたジャシンカ帝国のメギド王子であったことが判明する。顔出しとマスクとの絶妙なさじ加減が、ダークナイトを現在でも忘れ得ぬキャラクターにしたことからも、それが伺える。

 戦隊シリーズにおいて、悪役でも女性幹部の場合には、意外と顔出しが多い。「バトルフィーバーJ」の地上最強の美女「サロメ」(演じるは女子プロレス界の雄・マキ上田だ)からスタートする女性幹部の歴史は、女性トップとなる「へドリアン女王」を経て、連綿と受け継がれる。それぞれの美醜については個人の判断にゆだねようと思う。が、シリーズを見続けた方々には、それぞれに思い入れがある女性幹部がいるだろう。私にとってのその一人が、今回のお題である、「女王アハメス」である。

 「電撃戦隊チェンジマン」は、戦隊シリーズ9作品目。宇宙を星ごと侵略してきた大星団ゴズマの本隊が、地球を侵略にやってきた。これあることを事前に察知した伊吹長官は、地球という1つの生命体が発する力の源、「アースフォース」に守られた戦士を選抜する。かれらは電撃戦隊チェンジマンとなり、バックアップ組織である地球守備隊の面々と共に、大星団ゴズマの驚異から地球を護るために戦うというのが、基本のお話だ。本作を語る上で外せないエピソードとして、「秘密戦隊ゴレンジャー」を除けば、本作は55話とシリーズ中最も長い話数を記録している。これは次作「超新星フラッシュマン」の準備が整わなかったためであるとのことだが、人気作であったことも理由の1つだろう。

 「女王アハメス」。アマゾ星出身で故国の女王である。一度はゴズマの幹部であるギルークらとともにゴズマの星王バズーに反抗したが、共に敗退。アマゾ星の再興を願いながらバズーに服従する。通常は、バズーが征服した星の傭兵である「宇宙獣士」が、目的の星を攻撃するのがゴズマの侵略パターンである。その選出は現場指揮官であるギルーク(演 山本昌平)の責任と判断においておこなわれる。ところがアハメスは、ギルークとは別ルートにより宇宙獣士を連れてきて、独自の判断で地球占領作戦にいそしむのだ。

 彼女の特徴を一言で言い表すなら、「美しい」に尽きるだろう。かわいらしいのならダイナマンのキメラ、ゲキレンジャーのメレなどいるだろう。単に色っぽいなら、カーレンジャーのゾンネットや、ギンガマンのシェリンダなどもいる。だが「気高く、美しい」となれば、話は別だ。まずそのワン・アンド・オンリーであることが重要だ。
 その美しさを支えるのはデザインされた衣装や髪型などである。基本デザインはダイナマンより参加していた出渕裕氏の手による。だがそれを仕上げたのは、現場のメイクと相談しながら悪戦苦闘した、アハメス演じる黒田福美さんの力が大きいであろう。17話で初登場した時は、ネコ耳のヘッドギアをつけ、裾を極限まで切って落とした十二単をモチーフとした、重ね着風の銀の衣装で登場する。その髪が銀髪であることも手伝って、「ネコ」あるいは「銀髪の妖狐」に見える。その後33話でパワーアップするときに衣装は変更となり、全身銀ずくめで赤く染め抜かれた裾の長い陣羽織を羽織り、作戦指揮にあたるのだ。

 なにはともあれ、アハメスは初登場時のインパクトが大きかった。初登場17話の舞台が長崎のオランダ村であったためもあり、黒い長髪で、赤いチューリップ娘のようなオランダ風の衣装に身を包み、偵察に来ていたチェンジグリフォン・疾風翔(演 河合宏)を手玉にとるのだ。その素の美しさは、当時の疾風翔のみならず、視聴者の少年達のリビドーをもくすぐる破壊力にあふれていた。そして宇宙獣士ギルバの能力を使って、ヒドラ兵を強化し、チェンジマンに敢然と戦いを挑むのだ。しかもギルバの特殊能力により、チェンジマンはギルバにトドメを指すことが出来ない。前線指揮官であるギルークさえ舌を巻く作戦だった。その後もアハメスはギルークとは相容れず、第3勢力としてチェンジマン達と戦ってきた。

 その女狐の本領を発揮したのは、アハメス三銃士を引き連れてきた32~34話だろう。リゲル星人ナナが、成長の過程で発生するリゲルオーラをあびて、アハメスはスーパーアハメスとしてクラスチェンジ(という言い方が妥当だろう)する。そしてその能力と三銃士の力で、チェンジマン達を圧倒するのだ。リゲルオーラをあびて恍惚とする表情のアハメスを、私は一生忘れないだろう。それほどに美しく妖艶で、かつて見たことがない女性の美しさを、私はその瞬間に彼女の中に見いだしたのだから。
 アハメスを演じた黒田福美さんは、このときほぼ同時に、伊丹十三監督の「タンポポ」という作品に出演している。この作品でその美しい肢体を見せるという話を聞いていた。だから見たいのだけれど、黒田福美さんのヌードが怖くて、見に行こうと言えなかった思い出がある。美しかった。だから怖かった。自分の心の奥底の、下卑た部分を見透かされた気がして、怖くて仕方なかったのだ。後年になってからDVDで「タンポポ」を見たとき、やはりめまいがしそうになった。
 そしてその力はチェンジマン達を一時的に変身不能にまでさせる。その最大の窮地を、自分自身の力を信じることで、抜け出すチェンジマンは、アハメス同様にクラスチェンジすることになり、ひとたびのピンチは脱した。だが宇宙怪鳥ジャンゲランで空を飛びながら空中からチェンジマン達を攻撃するなど、強力な力を得たアハメスは、失敗続きのギルークを追い落とし、前線指揮官の座に座ることになる。

 チェンジマンを当面の敵としながらも、盟友であるはずのギルークを追い落とすアハメスという存在に、美しさ以上の戦慄を覚える。それは必要のない者を生かしておくはずがない、星王バズーの恐怖支配に背景に控えているからだろう。その姿におそれおののき、その力にひれ伏すしかなかった我が身を振り返れば、バズーの侵攻に真摯に立ち向かうチェンジマンの姿は、どのように映っただろうか? それはきっと我が身ではなし得なかった母星の守備に、心を燃やすチェンジマンへの嫉妬ではなかったろうか? そしてそれゆえに地球侵攻に本腰を入れて、自分を正当化するために、必要以上に地球侵略に固執したのではないだろうか? 33話の以降の執拗な彼女の攻撃の裏には、そんな切ない思いが隠されていたのかも知れない。それでも女王としての気高さを忘れられないから、卑屈になる姿を誰にも見られたくない。そんな思いが見え隠れするのだ。ところがそれ以降の物語は、彼女からすべてを奪おうとする残酷なものだった。

 アハメスがクラスチェンジした方法と同じ手法で、ギルークもスーパーギルークにクラスチェンジする。その瞬間、アハメスは前線指揮官を追われることになる。それほどスーパーギルークの力は強大だったのだ。それはアハメスに指揮官の座を追われ、宇宙獣士と合体してまで生き延びた、ギルークの恨み節ゆえかもしれない。
 物語終盤、アハメスの乗機である怪鳥ジャンゲランは宇宙獣士ジャンとゲランに分離させられる。それはバズーによる指揮権剥奪を意味した。同時にネオジャンゲランの復活のために、作戦にいそしむが、ゴズマの航海士ゲーターの親子愛により、作戦は頓挫する。

 そしてアハメス失脚が決定的になるのは、52話である。アハメスは宇宙獣士ダリルを連れてくる。このダリルは、副官であるシーマの持つアマンガエネルギーに反応し、対消滅を起こす特性を持っているのだ。つまり副官シーマに、その命を投げ出してゴズマに殉ぜよと言う命令を下してしまうのだ。アハメスはもうなりふり構ってはいられない。クラスチェンジしたギルークよりも早く、なんらかの手柄を立てなければ、自分が抹殺され、母星の再興もままならない。そんな女王としての責任感が、彼女をしてこのような卑劣な作戦をとらせたのだろう。シーマにしてみれば体質とはいえ、母星崩壊の原因となった生物と一緒に自爆しろという命令なぞ、服従できるはずもない。しかしシーマも同じアマンガ星の女王の血筋だ。アハメスはきっと、作戦成功のあとで、アマンガ星の再興もほのめかしただろう。シーマの心も千々に乱れる。そして迎えた作戦決行の日、あと数瞬でチェンジマンを対消滅の爆発に巻き込めるすんでの所で、シーマは副官ブーバの手で切られ、落命する。そのブーバもシーマを殺されたと思ったチェンジドラゴンの手で切られ、作戦は水泡に帰した。シーマはブーバのブルバドス活人剣により、仮死状態にさせられていたのだった。シーマとゲーターは地球人側に走り、ブーバをも失ってしまった。結局アハメスは、自らの作戦により前線部隊を壊滅に追い込んでしまったことになる。なりふりかまわず実施した作戦で自らの足下をすくわれるとは。

 しかしこれをもって「女の浅知恵」などということは出来ないだろう。彼女はひたすら母星の再興を目的に、地球侵攻に邁進してきたのだから。憎むべきは黒幕である星王バズーである。それをきちんと視聴者に意識させたのは、アハメスの切ないまでの母星再興への意地だろう。それが痛いほどにわかるのは、彼女が最期を迎える53話「炎のアハメス」でのことである。
 彼女はついに、バズーとギルークのパワーにより、宇宙獣士メーズに改造されてしまう。そして自らの能力でチェンジマンの秘密基地を発見する。必死にその進入を防ごうとするチェンジマンであるが、その猛攻の前に、ゲーターやシーマの力を借りても、メーズをとどめておくことすらできない。そしてチェンジマン達は信じられない光景を目にする。業を煮やしたメーズは、おもむろにアハメスと分離したのだ。メーズの猛攻で足止めされるチェンジマン達。一方のアハメスは、なかば狂乱のおももちで基地に侵入し、破壊の限りを尽くす。アハメスは、基地が炎に焼かれる様を目にしながら、その炎の中でアハメスはバズーに哀願する。「この美しくも切ない女の願いを、なぜきき届けてくださらぬのか」と。炎に包まれたアハメスは、笑いとも泣きともわからない叫びを続ける。その表情はあきらかに狂気をただよわせている。もうだれも彼女には近づけない。女王の気品と風格を見せつけるように、そしてだれも近寄れぬようにして、彼女は基地の司令室で美しく倒れゆく。やがて基地はアハメスともども崩壊する結末を迎えるのだ。

 アハメスがメーズと分離した瞬間の心の驚きが、いまもって忘れられない。それをさまざまなムックでは「執念」と形容している。それは当時テレビの前で見ていた僕も感じた、だが同時に、それはアハメスが「個」を取り戻した瞬間でもあったはずだ。ではなぜ「個」を取り戻さなくてはならなかったのか? それは彼女の気高さと、宇宙獣士となった我が身からの脱却だったのではないか? 醜い宇宙獣士に変えられたことが、たまらなかったのではないだろうか? それは単なる執念ではない。「女の執念」と呼ぶべき、あくなき「美」への執着だ。その自身の美をけがされてなお、自身の美しさを信じて疑わない。
 キャラクターとして、途中参加にもかかわらず、これだけの悪役の花道を歩いて死んでいった悪役には、なかなか出会えない。しかもこの美しさだ。シーマ同様、救うことだってできたはずだ。また逆にその美しさ故にバズーの軍門に下ることをよしとせず、チェンジマンとともに戦うことだってできたかも知れない。そんな可能性すら感じさせる「女王アハメス」を、私は生涯忘れることができそうにない。

 東映ヒーローMAXのNo.30では、チェンジマンのDVD化を記念して、黒田福美さんのインタビューが掲載されている。今回のネタを綴るにあたり、じっくりと読ませてもらった。アハメスがリゲルオーラを浴びて恍惚とした表情をしたのは、確信犯だったというではないか。私が感じた女性の色気は、間違っていなかったことが、視聴時から25年の時を経て、証明された思いだ。他にもおしゃれの話で盛りあがった女性キャストとの思い出や、ギルーク役の山本昌平さんが「悪の美学」について語っていたエピソードなどが掲載されている。本論をお読みになって興味を持たれた方は、ぜひ読んでいただきたい(買ってとは言えない、値段が・・・)。
スポンサーサイト

テーマ : 特撮
ジャンル : サブカル

コメント

非公開コメント

プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
namima2のつぶやき
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
リンク(リンクフリーです)
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
FC2 Blog Ranking
フリーエリア
blogram投票ボタン
ブロとも一覧

あにめにゅ~す の あににゅ

分水嶺☆NHK杯11/11初体験

素足のアイドル達

有名人の珍言・名言集

宮廷アリス

TOY BOX
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

[FC2 Analyzer] http://analyzer.fc2.com/ -->