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「マジンガーZ INFNITY」~よみがえりしは昭和~


 2017年末から2018年の年頭をオタクシーンの話題をさらったのは、なんと永井豪作品のつるべ打ちだった。ネット上で公開された「デビルマン crybaby」、そして「マジンガーZ INFINITY」の2作品だ。いった全体今は昭和何年だろう? リバイバルではなく完全新作だったり、語り直しだったり、前日談だったり後日談だったりと語り方の方法論は多岐にわたるが、かつてのリメイク作品は2匹目のドジョウを狙ったものや、明らかに野心的な作品もあり、作り手のどぎついまでの企みも見え隠れするのは、90年代やゼロ年代のお約束でもあるので、今の目で見るとかなり面白い発見もある。特に永井豪・石川賢原作の「ゲッターロボ」に連なるシリーズの奇妙さは目を見張るので、いずれここでも取り上げたい。だが今回お届けする「マジンガーZ INFINITY」はそうした野心的なものも、やってやるぜ的に肩に入った力もいい感じに抜けている出来栄えには、さすが老舗の東映と、心からの称賛を送りたくなるほどだった。そう、今回のマジンガーは老舗・東映による後日談なのである。
かつて「東映まんがまつり」で年に2回、日本中の子供に作品を送り届け、TV放送中の作品の劇場用新作を送り出す一方で、名作長編アニメの良作を作った東映は、松本零士作品のブームの時代に「銀河鉄道999」や「1000年女王」といったSF作品の劇場用アニメでアニメ界を牽引していた。90年代には「聖闘士星矢」や「美少女戦士セーラームーン」などのドル箱を引っ提げてはいたが、単独での作品のヒットには恵まれなかった一方で、現在の「プリキュア」シリーズに連なる作品群を、継続的に送り出している。たしかにジブリ作品ほどの興行収入も宣伝も派手さもないが、堅実な商売が魅力の会社だ。そんな東映が満を持して送り出したかつての大ヒット作の後日談は、現代に放り出された命題に、昭和の風景で回答した作品だった。

<見せたいものが見たいものという幸せ>
 絶賛公開中であるので、物語については省くが、TV版グレートマジンガーの数年後が物語の舞台である。光子力研究所はその平和利用によって地球上に光子力炉がいくつもおかれ、地球人類のエネルギーはほぼすべて光子力で賄われている時代、弓教授は日本の総理大臣となり、娘の弓さやかは父親の後を次いで研究所の所長となり地球上に展開する光子力のネットワーク化に向けて日々忙しく暮らしていた。かつての戦いの後、剣鉄也は軍属となり、グレートマジンガーを駈り平和維持に努め、相棒だったジュンは鉄也の妻となり、第1子の出産間近。そして兜光児は研究者となり、さやかとのすれ違いの日々が続いていた。そしてかりそめの平和は破られる。なぜかよみがえった機械獣軍団に地球上は埋め尽くされ、世界は蹂躙されていく。時折しも、冨士山のふもと、新光子力炉建設中の現場で巨大な魔神像、その名も「インフィニティ」が発掘され、謎の少女・リサと光児によって巨神像の研究が進められていた時だった。機械獣軍団と軍の戦いの第一報、それはグレートマジンガーで勇躍しているはずの剣鉄也の行方不明の報だった。かつての英雄として兜光児を前線に送らなければいけない弓総理。圧倒的な機械獣軍団の物量の前に、劣勢を強いられる日本軍。無力に等しい兜光児の目の前に現れたDr.ヘルは、光子力炉の利用を引き換えに和平交渉を持ち出し、世界を揺さぶることに成功する。Dr.ヘルの世界征服作戦を裏にある真意を見抜いた光児は、かつての仲間たちとともにわずかな残存勢力で反撃に出る。剣鉄也を助け出し、兜光児は世界を救えるのか?

 と、こんな感じで最終決戦までなだれ込むのだが、物語の緩急といい、天井知らずの高いテンションといい、リファインされて3DCGによって描かれたマジンガーたちの勇姿といい、映像的にも演出的にも抜かりなく、ロボットアニメの老舗・東映の力量をこれでもかとばかりに見せつけてくる。前半冒頭の戦闘ではグレートマジンガーをフューチャーし、鋭角的で先進的なグレートのスマートな戦い方を見せる。だが後半は行方不明といいつつ、巨神像の頭部にとらわれて、生体部品にされそうになっているグレートと鉄也を助けるマジンガーZと兜光児の戦いが真正面から描かれている。この順序、わかる人ならすぐに気が付くはずだ。そう、かの名作「マジンガーZ対暗黒代将軍」の逆を描いているといっていい(あるいはマジンガーZの最終回でもいい)。特にマジンガーZの戦い方の見せ方はこだわっており、勝つために手段は選ばず、何より相手の隙や弱点を突き、兜光児が機転と機略を効かせて反撃に打って出るという展開を、思うさま堪能できるバトルシーンは、「対暗黒代将軍」を目に焼き付けた世代ならその胸を直撃するだろう。アイアンカッターを出した状態で敵に切りつける、大車輪ロケットパンチを選んで食らわせるタイミング、ジェットスクランダーを手に持って相手に切りつけるといった、もはや何でもありのバトルシーンの熱さは、ビームライフルを打ち合っていては味わえないバトルシーンの高揚を思い出させる。かつてTVを見ていた子供たちが、想像力を広げまくって表現されたマジンガーZの戦い方だ。逆説で、なぜカミーユがZガンダムをウェーブライダーに変形させてジ・オに突っ込まなければいけなかったのかの演出的な理由を想像させるに足る映像ともいえる。つくづくロボットアニメを見てきてよかったと思えるラストバトルのシーンは、アニメファン必見である。

<世界征服の理由>
 さてその一方で敵側の機械獣軍団はといえば、もう本当にアイコンとでもいうべきアシュラ男爵とブロッケン伯爵を出しておいて、鉄仮面軍団と鉄十字軍団で陸海空を全て掌握する軍団構成。おい、ピグマン子爵はどうした? まああいつはヘル様への忠誠心が薄いからいいや。またもやグレーな宮迫さんが声優としていい仕事してましたが、もうちょっと出番がほしかったかな。しかしそれにしても登場する機械獣軍団の物量がすごい。かつてのTVシリーズに出てきた数多の機械獣を余すところなくさらけ出した感じで、これはもう1体1体を映像ソフトで確認したい気持ちに駆られる。きっとあなただけにわかる、あんな機械獣やこんな機械獣があるに違いない。これがウルトラマンなら間違いなく物語のラストで合体して巨大な怪獣になるところだが、今回はもっとどでかい巨神像がおわしまするので、怒りの光児によるマジンガーの猛攻によって、すべて破壊されましたとさ。

 ところでDr.ヘルの世界征服戦略について、本作ではイマドキらしい書き換えが行われている。しかもあの兜光児によって考えに考え抜かれた思考によって導き出された答えは、なんとびっくり、この世界を多元世界の一つと認めた上での、気宇壮大な思考実験と結果への興味だというのだ。兜光児が多次元世界、あるいは平行世界といった言葉を使って、この世界に光子力が存在する理由を説明し、巨神像が光子力の集中するポイントに現れた理由をも説明している。だがその考え方や技術はヘルも同様に持ち得ていて、ヘルは世界に干渉することで、世界がヘルの思考実験の延長線上の解答にたどり着く人類の様を見たいという欲求に従って、世界征服というお題目のもとにマジンガーZとの熾烈な戦いを繰り広げていたというのだ。その過程で兜光児は、この世界を征服してヘルにとって何の得になるのか?という命題に対し、まるで岡田斗司夫氏と同じ結論に達している。つまり、世界征服しても面倒くさいだけで面白くもなんともなく、征服後のビジョンが必要になるというものだ。これはもう本作の脚本家が岡田氏の著述を読んだのかどうかは知らないが、ごくごく普通にたどり着ける話なのだが、そこから世界への干渉の欲求と興味というお題目にたどり着くためには、かなりの力技がいる。劇中ではそこにもう少し注力して説明がほしかったところだが、全くない。まあ現象と起こった事実を類推と含めて考察したといったところで、あくまで兜光児の頭の中の推察でしかないのだが、ヘルさまったら、まったくその通りだったらしく、結局は光児とどっこいどっこいのアホをさらしただけっぽくなっちゃうのが、痛々しい。まあ劇中問題なのはヘルさまの興味がこの世界から失われてしまえば、巨神像の力を使ってこの世界と別の世界を入れ替えてしまおうってあたりなので、物語の緊迫度に問題はないのだけれど。まあ風呂敷は大きく広げないとねえ。

<昭和をあえて配置する意味>
 物語がグレートマジンガー本編の後日談となっているために、あの世界の年号はどう見積もっても1980年代ぐらいなのだ。もっとも2018年の現在になっても、下町や商店街の情緒は激減しつつもどこそこに存在しており、この世界からかつての昭和の香りを一掃することは、現時点では難しいし、あえて残したいとする人々の働きもあるから、平成以後の年号に変わったとしても、すぐになくなることのない風景だろう。剣鉄也が愛した街並みと安アパートやそこの窓から眺める風景は、あくまで誰かの力で残された昭和の画ヅラなわけだ。いずれはなくなってしまう街並みや風景、そして無慈悲にそれを追いつめる近代化の波涛。それはまるで映画「機動警察パトレイバー THE MOVIE」に登場した、帆場英一の見せたかった風景にも似ているし、映画「クレヨンしんちゃん モーレツオトナ帝国の逆襲」に登場する悪の組織「イエスタディ・ワンスモア」が愛する風景そのものといった雰囲気なのだ。もちろん時代設定の問題もあるだろうし、剣鉄也が家庭を持ったら?というエクスキューズに対する答えとして表現したものなのだろうけれど、この昭和の香りをあえて配置している理由はなんなのだろうか? 

 物語の中でヘルが指摘するこの世界の弱点と問題点。人類の多様性による意見の一致を見ない議論と迂遠な数による多数決の論理による見せかけの民主主義。光子力という素晴らしい(ように見える)エネルギーを持ってしても埋まらないエネルギー論争と、光子力がまるで原子力にも等しいように見える危機管理の問題。こうして本当に現代の世界に対する問題提起に対して、その一方で物語はまったく答えを出そうとはしない。兜光児はこの世界を愛しているとも言わないし、この世界の必要性をことさら大上段に語ったりもしない。平行世界にあるいくつもの可能性を否定するものでもなく、リサの存在も大前提として肯定し、受け入れてさえいる。事実、兜光児が物語の中で出した答えは戦うことを否定せずに、争っても目的を曲げずに達成する意志の強さそのものであって、ヘルの野望を打ち砕くことにのみ執着している。もしこの世界が存続するのであれば、ヘルの興味を引き続ければいいわけで、ヘルに征服されてもかまわないはずだ(いやだろうけど)。そうした疑問に答えるのはこの世界を維持したいという願いでしかなく、かつての「美少女戦士セーラームーン」あたりに言わせると、非日常から日常を取り戻したいという願いだけだろう。そこで昭和の風景」なのだ。守りたいという物語世界の人々や観客に喚起させ、納得させるための装置。それが昭和の風景の正体なのではないか。そして守っている世界が、あの昭和の風景の延長線上にある世界だという実感のための装置だとしたら、「マジンガーZ」という昭和という時代に埋もれそうになっていたコンテンツを引っ張り出した価値がそこにこそある。「マジンガーZ」という作品がロボットアニメの始祖であり、なおかつ時代を代表するアイコンであるという認識が、この作品に込められている。だからこそ、ヘルの野望を阻止したいという物語中のキャラクターの気持ちに観客が入り込めるインターフェイスになっているのではないか。本作にあちこちにちりばめられている懐かしい風景との再会が、観客にとって居心地のいいものだとしたら、この試みは成功したといえる。

 筆者は本作を思うままに楽しんだ。問題がないわけではないけれど、それとて目を背けたいほどひどい事じゃない。むしろ積極的に本作を懐かしみ、見たいものを見せてもらったという感慨に心から嬉しくなった。古いコンテンツを使ってなおこんな作品が作れるのであれば、今後も実写化作品やリメイク作品が後を絶たないだろう。この作品は、今後作られるすべての実写化作品やリメイク作品へのエールである。
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コメント

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「細けえ事はいいんだよ」に満ち溢れていましたね

私も見に行きましたが、作り手が昔のテレビ版を見て
かっこいい部分を全部詰め込んだように感じました。
カッコ良ければ理屈なんてどうでもよかった昭和のロボットアニメの
すがすがしさを久ぶりに感じた作品でした。

そうなるよね

mineさま
 おっしゃる通りだと思います。もちろんそれだけでは興行が成り立たないことは、「ヤマト2119」の時に十分すぎるほどわかったわけですが、「おれ~」が行き過ぎた「キャシャーン」の実写とか、お笑いに寄せすぎた「電人ザボーガー」などを見るにつけ、こういうのって本当に「見せたいもの」の取捨選択が難しいと思うんですよ。一度漫画で手の内をさらしちゃった「ガンダム・ジ・オリジン」なんかも、アニメで動くことに喜びが見いだせないなら漫画で十分って人もいるだろうし、ビジュアルの面白さはあっても物語的に緩さがあった「ヤッターマン」、庵野ブランドしか残らなかった「キャーティーハニー」もそう。リメイクや後日談とかって、元の原作が偉大であるほど本当に難しいんだってわかる話ですよ。本作はよくぞここまでやりました。
 ですからね、コミックで元ネタはあるのに、さらにアレンジを加えて映画だけのシリーズ構成を目指したマーベル・シネマティック・ユニバースやDCエクステンデッド・ユニバースは、大したものだとおもうのね。まあ見てないだろうけど。おかげで近年アメコミ脳ですw

はじめまして!

僕はマジンガーZインフィニティを見てから色々な所でこの映画のレビューを見て来ましたが、このサイトのレビューが読んでいて一番「なるほど!」と膝を打つ内容でしたので今回コメントしました。
正直言って僕はスパロボでマジンガーを知った世代で、テレビ版を全く見ていなかったので、映画で言われていた事が半分も飲み込めませんでした。
なので波のまにまにさんの言う、
守りたい対象としての昭和の風景
という解釈はとても新鮮で、映画のテーマも今はすんなり飲み込めす。

もちろん、難しい話は抜きにして、ロボットアクション映画として純粋に楽しめましたよ。
特にマジンガーZが武器を使う時、ただ使うんじゃなくて、ちゃんとその武器を使うシチュエーションがあったのが凄くよかったと思います。
スパロボだと色々な武器の違いって数値でしか分かりませんでしたからね。

ありがとうございます!

カケラさま
 コメントありがとうございます。そうですか、腑に落ちたようで、何よりです。
 本文中にも書きました通り、Dr.ヘルの戦う理由がものすごく不確定要素が強く、それに踊らされるように光児たちが翻弄されている一方で、光児たち守る側の戦う理由が、より意識的に画像として結実しているあたりが面白いんですよ、この映画は。ヘルの言う通り、この世界が守るに値するかどうか?それを議論するための悪い材料は圧倒的であることをこれでもかと示しておきながら、守る側の理由は所在無げなのが特徴で、それゆえに見た目の派手さに目を奪われると、そういう話がどうでもよくなっちゃうのは、脚本がどうとかいう話ではなくて、画面から読み取ることを失念しちゃってるだけでw

 それでも画面から受ける力強さは最高級品であるだけに、スパロボ世代にもそれとわかるのは、作り手の配慮が行き届いている事情でもあります。たとえば序盤にグレートが使用不可にさせられた「グレートブースター」ってありますでしょ。あれがどれだけのものかって話は、Zのジェットスクランダーをそのままグレート自身のスピードに乗せて射出する実体弾だと考えると、お金のかかるワザであることは自明の理。それだけに必殺の一撃なわけで、あれを封印して敵に勝てって話が、どれだけ鉄也に無理を強いているかって話なわけで。スパロボ世代にはわかりづらかったかもしれませんけどねw

 僻地のブログですのに、お読みいただいた上にコメントまでいただけで、望外の喜びです。これに懲りずに、またおいでくだされば幸いです。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
50歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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