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「地球戦隊ファイブマン」~その3・喪失感と補完、そして選択~

承前

 「サメギンとアリジゴクギンを合体させたサメジゴクギンは、人間を缶詰にすることができるのさ」とシュバリエがのたまう34話「人間カン詰」の冒頭。この説明しているようでまったく説明になっていない見事な台詞回し。サメジゴクギンの利も非もない攻撃と、地上にいる以上餌食になる運命という、割と単純な怖さそのものが前半の引っ張りどころだし、後半は赤のロングスカートでパンチラ全開のレミの活躍によってサメジゴクギンを一本釣りして大逆転するという一大娯楽編。なのにどこか悲壮感漂うのは、物語冒頭でトイレ掃除に格下げされたガロアの悲哀からスタートするからだろうか。しかもバルガイヤー内のガロアいじめもさらに増していく。この話の娯楽要素とガロア降格による状況の変遷という連続話、内容よりも勢いを重視する台詞回しなど考慮すれば、このあたりの話が前回説明した80年代的な作劇と90年代的作劇の転換点における要素の複雑なせめぎあいが見て取れる内容だ。

<兄弟の絆、家族の重圧>
 このあたりから物語は、急激に「兄弟先生」という設定に拘泥する話にシフトする。「兄弟」だったり「先生」だったり「家族」といったタームにこだわった話は、ある意味で物語の終焉を予感させるようにまとめに入るのだ。

35話「学の秘密!!」は長兄・学の苦労がしのばれる話だ。シュバリエの繰り出すヒョウコブラルギンとの戦いに遅れる学。学は母親から聞かされていた両親の出会いの想い出の地(実際にはこの場所ではないのだが、学は若き日の母の写真の背景に似たこの場所を、そう定めていただけ)を訪れ、両親の思い出に浸っていた。だが戦いに傷ついた他の兄弟からたしなめられても、学はその場所も理由も話そうとしない。兄弟たちは学への信頼が揺らいでいくのを感じ、シュバリエの挑戦に学一人を向かわせてしまう。シュバリエとヒョウコブラルギンの猛攻に、学は防戦一方で逃げることしかできない。次第に追いつめられいつのまにか思い出の地に足を運んだ学は、今は亡き両親へ、その苦労を口にする。長兄であるが故に兄弟の誰よりも両親との思い出を共有している学は、想い出の地の話を他の兄弟たちに話すことをためらっていた。思い出の分だけ兄弟たちからひがまれることを恐れていた。だから学は他の兄弟たちの父親になろうと決意した。そのことを想い出の地の近くの住む牧場の女性から聞いた他の兄弟たちは、学との思い出を胸に、再び学とともにゾーンと戦う道を歩みだす。

この話を見ていて、後に「救急戦隊ゴーゴーファイブ」でも、長兄・マトイが両親不在の中でどれだけ兄弟たちを牽引してきたかを語る件が最終回で登場したのを思い出した。父親から行方不明になっていた母親へその言葉が伝えられたとき、それを傍らで聞いていたマトイが、涙するシーンがあって、この数年のマトイの苦労が報われたいいシーンだと思って、マトイたちと一緒にTVの前で号泣したのを思い出す。長兄がどれだけ大変か。しかも両親がいない状況下で、誰にも相談できない学が、兄弟たちの相談事を一手に引き受けていて、そのすべてにそつなく対応していたことを考えるに、学の苦労がしのばれるとともに、学が結婚した後の小姑問題がとんでもなく大変だろうことが予想されて、アーサーでなくても頭を抱えるに違いない(何の話かw)。

36話「双子大作戦」はサソリナマズギンによって心と体が入れ替わってしまった文矢とレミの話。ファイブマン自体を混乱させる狙いかと思いきや、ドンゴロスによれば人間たちを入れ替えると、片方が死ぬともう片方も死ぬという点に着目し、人間を入れ替える作戦にいそしんでいたようで、なぜファイブマンにもちょっかい出してしまったのかと、ドンゴロスのうかつさが悔やまれる。結局レミと文矢の双子のコンビネーションに、ゾーンがいつも通り敗退するエンド。

どうもこのあたりから最終回への布石が打たれている気がしてならないのは、脚本に穴がありすぎるきらいがあるのだ。脚本自体に穴があり、むしろ最終回に向けての脚本打ち合わせが先行して、逆にこのあたりの脚本のアラが目立つ感じなのだ。37話「人間大砲!」はファイブマン最後の強化案「ファイブテクター」の完成秘話で、物語上最強に硬い銀河闘士サザエマジロギンの巨大化を倒してはいるのだが、それ以前に等身大の状態で倒しているのは学の決死の覚悟で放った特攻技であり、それならファイブテクターの存在価値が危ぶまれてしまうという問題点が残る。38話で5人揃ってファイブテクターは活躍するが、ここでも学が一人でキメていることを考えると、どうにも腑に落ちないファイブテクター問題である。それでも次男・健の特訓大好き脳筋くんな性格ゆえに兄と対立する流れも、たった一人でファイブテクターを使用する流れも際立っていて、見ていて悪い気はしない。

38話「偽兄弟先生」は、ゾーンのドンゴロスを除く幹部連中が、兄弟先生を語り、山村の小さな小学校で子供たちの人気者になる一方で、学校の地下に眠る細菌兵器まがいの怪物の誕生を促す作戦ではあるのだが、事件が事なきを得た後で、本物の兄弟先生が子供たちに授業する件が登場する。だがナレーションは「より多くの兄弟先生を待つ子供たちのために、この学校にとどまれない」ことを語ってしまうのである。山村の子供たちに思い出だけを残して去っていく兄弟先生にも、良心の呵責はあるだろう。かえって山村の子供たちにひどいことをしている気にさせる兄弟先生だ。このあたりのツッコミどころは、未就学児童といえど気が付く子供は気が付くだろうし、中にはうがった見方をしてしまう子供もいたことだろう。長くなるなあと思いつつ、今回は文字数限界、突破しますことを、お詫びします。

<終盤の傑作群?>
ちょっと肩の力が抜けた感じの話が少し続いたあと、急激に深刻な話が2話続く。39話「愛をください」はゲストの水野美紀をソーラ役に迎えての話。美しき宇宙人ソーラが地球にやってくる。目的はビリオンに会うためだ。彼女はかつて両親を殺された時、ビリオンに助けられたという。ソーラはビリオンのためにファイブマンと戦うという。ビリオンとファイブマンの戦いに割って入るソーラは、ファイブマンを圧倒する。ソーラは薬を飲んで怪人化してまでファイブマンに戦いを挑み、その命を縮めてもビリオンへの愛に殉じようとする。だがその薬の効果は、次の使用でソーラの命を奪ってしまうという。ソーラをファイブマン抹殺のための捨て石にするつもりのビリオンは、ソーラの願いを叶え、ひとときだけの恋人として時を過ごす。そしてソーラ最後の戦いであの時の真実が発覚する。ビリオンはただ戦いを欲していただけで、ことさらソーラを助けたわけではなかったのだ。その真実を知ってなお、ソーラはファイブマンとの戦いをやめようとしない。だが力尽きたかに見えたソーラは、ビリオンの剣を自ら受けて死んでゆく。

続く40話「少年魔人剣」もビリオン主役の回だ。長兄・学に助けられ、学のように強くなりたいと願う少年・まなぶ。その強くなりたいという願いに付け込んで、ビリオンが繰り出した魔人剣サーベルギンは、少年を操り、街の人々を襲わせる。単身学がまなぶを救い出し、強くなることに必要なのは力ではなく心であることを教える。だがその邪悪な心のエネルギーに満たされたサーベルギンは、ビリオンに力を与え、あまつさえ巨大化してファイブマンを脅かす。だがファイブロボによってサーベルギンをへし折られたビリオンは、血反吐を吐きながらファイブマンを呪う。

39話は特殊な位置づけなのではなく、ゲストによる牽引があったから成立した話ではある。ではあるのだが、巨大ロボ戦もなく、アースカノンやファイブボールの出番さえ削って見せたかったものが、物語としてきちんと結実しているところが一番の見どころだと思う。あえて戦隊シリーズのフォーマットを崩してまで見せたかったことは、親を失った悲しみから愛を得た少女が、ただひたすらに純愛を貫こうとする必死なまでの想いである。おそらくは当時これを見ていた子供たちはキョトンとしたことだろう。だが脚本家・井上俊樹氏が見せたかったものはきっと子供たちに伝わったに違いない。子供たちの心のしこりとして、どこかに引っ掛かってくれたら、それは本話が成功した証しともいえる。

筆者も子供のころから中学時代まで剣道をやっていたが、それだけにこうした子供番組で剣道が取り上げられると面はゆい思いで、気恥ずかしさでいっぱいになる。40話で描かれた「強さとは力ではなく心だ」というテーゼのようなものは、それこそ昔から繰り返されてきた話で、ことさら特殊な話ではない。しかし40話が傑作だと思えるポイントは、まなぶ自身にある。この39話と40話を比べると、その物語構造が驚くほど似ている。ソーラにしてもまなぶにしても、肉親が殺されて強さを求める点で、何一つ変わらない。違うのはその強さがソーラは助けてくれた者への愛に殉じ、まなぶは強さへのあこがれが、手に入らない故に強さへの過信となる点だ。さてこの話、はてどこかで?と思い当たったのが、アメコミヒーロー「バットマン」の出自によく似ている。似た事象を描いても、描き方一つでこれほどまでに結果の方向性が変わってしまう。もちろん戦隊のフォーマットという大前提があっての話かもしれないが、39話でこれほどまでにぶっ壊されたフォーマットが、40話ですぐに機能するわけでもない。それだけに学の血を見て目覚めたまなぶの変節は感動的ですらあるし、ものすごいテンションで描かれたビリオン主役編の2話で、ビリオンが死なないでよかったとも思える。

41話は劇中「おばさんくさい」といわれた長女・数美のエピソード。合身銀河闘士カメラザルギンが化けたチャラ男とのデートに明け暮れて、日常を置き去りにしてしまう数美の姿は、ちょっとした「金妻」もどきではあるが、数美エピソード回が少なすぎ(というかレミ回が多すぎる)のために控えめな扱いの数美だって、これだけ魅力的に演出できる東映は素晴らしい。そのレミ回である42話「カンフー魂」は、タイトルほどにレミのカンフー魂は見えないが、むしろギンガマンがファイブマンに化けて偽ファイブマンが登場するというトピックだけで十分おつりがくる。面白いのはギンガマン初登場の9話に登場した商店街が、本話にも登場する。どうもギンガマンがらみの話の場合、特定の狭いエリアが登場する理由が気になるところだ。問題があるのではなく、宇宙を背景にしたギンガマンが、地球の中の狭い日本のさらに狭い特定地域の商店街で暴れまわって得意げになっている様が、あまりにも小さすぎて面白おかしいのである。

んで実のところ、バルガイヤー内部の異変が顕著になってくるのも42話であり、バルガイヤーの中の奥まった通路をガロアがのぞくと、逆に吐き出されてしまうシーンと、これに歩調を合わせるように銀河皇帝メドーの顔が修羅のごとき表情となる。この前フリが44話以降の展開の前フリなわけだ。極地の空がオレンジになるとは、世界各国の研究者も、度肝を抜かれたことだろう。

43話「テレビの恋」がまたキテレツな話で、ドンゴロスの計略によって合身銀河闘士テラノテレビギンによってテレビがテレビ人間となり、テレビを見る人間をゾーンファンにするという作戦が実行に移される。兄弟先生に持ち込まれたお悩み相談で出会った良夫少年は、日中からテレビにかじりついて離れないテレビっ子であったが、彼も作戦のターゲットにされてしまう。ついにテレビ人間から逃げ出した良夫だが、周囲の子供たちはその様子を見て良夫をバカにする。だがその様子を面白おかしく見ていた子供たちもギョッとするほど、テレビ人間の様子がエスカレートしていき、終いにはTVを見ないと殺すとまで言い始めて良夫を追いつめていく。三男・文矢は良夫を助けるために良夫と二人でテレビ人間から逃げ出すが、まんまと迷路に追いつめられてしまう。建物の中に追いつめられる二人を助け出したのは、良夫をバカにしていた子供たちであり、良夫に野球のユニフォームを着せることでカモフラージュし、テレビ人間から逃げおおせる。ファイブマンはテラノテレビギンを倒し、良夫はいつの間にか自分を馬鹿にしていた子供たちと仲良くなり、野球に興じるというエンド。

一見して教条的な「テレビばかりに見ていてはいけないよ」という説教話のように見えて、その実良夫は運動をしてもバカにされるから子供たちを避けて、テレビに逃げていたという、まるでオタク的縮小再生産を見せるあたりが、意外なほどこちらにぶっささる。だが最後には良夫をバカにしていた子供たちが、良夫がテレビに逃げた理由が自分たちにあることを知り、逆に良夫に同情的になって良夫を助けるという展開が用意されている。現実のオタクがそんな簡単に好きなものを捨てたり、友達を増やすなんて可能性は低いだろう。だがこの話で示されているのは、オタクが趣味に逃げ込んだ理由そのものなのだ。イジメともとれる子供たちの容赦ない罵詈雑言が、良夫がテレビへと逃げ込む最大の理由だといわれると、趣味に逃げ込んでそれ以外に価値観を認めないそぶりを決め込む、視野の狭い若き日の自分にブーメランのように帰ってくるエピソードなのだ。

実際の放送は11月後半から12月にかけての期間であるが、この終盤に来てこれまでとは少しばかり毛色の違う話が粒ぞろいの「地球戦隊ファイブマン」。この作品群を「帰ってきたウルトラマン」の「11月の傑作群」と呼ぶのにならって、「ファイブマン終盤の傑作群」と呼んでみたい気もするが、たぶん認知はされないだろうなあwww

 そしてついに物語は最終コーナーを超え、最後の盛り上がりを迎える…。

<君はバルガイヤーの艦長になりたいか?>
 その口火を切ったのは44話「死闘ロボ戦」。バルガイヤーの掃除係に降格させられていたガロアは、バルガイヤーの中で秘密裏に研究を重ね、一部のエネルギーを使ってゴルギンの改良を重ねていた。時折しも、ゾーンの攻撃によって破壊されたニュータウン小学校が再建され、その開校初日のことである。再び教壇に立つという日に、学校に向かっていた兄弟先生たちの前に現れたのが、さまざまな重機を取り込んだ最強のビックガロアンだ。さしものスーパーファイブロボも首や腕を落とされ、半壊してしまう。ガロアはビッグガロアンを押し立ててマックスマグマへと向かい、ファイブマン抹殺を確実にするために進撃する。アーサーの機転によってマックスマグマは宇宙へと逃れ事なきを得るが、子供たちからのパソコン通信がガロアに傍受され、ニュータウン小学校が標的になってしまう。気づいた兄弟先生は自身を奮い立たせ、アースカノンを使ってビッグガロアンのコックピットを狙い撃ちし、地球に戻ってきたマックスマグマの砲撃によってついにビックガロアンを撃退する。敗れはしたがスーパーファイブロボを破壊した功績を認められ、ガロアは再び艦長として返り咲く。だが銀河皇帝メドーは冷たく言い放つ。バルガイヤーに二人の艦長はいらない、と。メドーはガロアとシュバリエを競わせ、その戦果だけを欲しいままにしようとしている。

 45話「敵基地突入」でシュバリエとガロアの確執が火花を散らす。ガロアが見つけたバルガイヤーのエネルギーを利用し、シュバリエはイワカセキギンを誕生させてファイブマンに挑戦する。イワカセキギンから生み出されるロックマンの能力によって、岩石の中に閉じ込められる学以外の4人。ついに学にその魔の手が及ぼうとしたとき、空から飛来する謎の岩石。それは宇宙の暴れ猿グンサーであった。シュバリエに捕えられた学を追うグンサーはバルガイヤーの内部に潜入する。学が封じ込められた岩石を担いでバルガイヤー内部を逃げ回るグンサーだったが、苦し紛れに岩石を蹴飛ばした先で、謎の触手から滴り落ちる溶解液で溶かされて、岩石から生還する学。学はそこでバルガイヤーが生き物であることを確信する。ファイブテクターをまとった一撃で、イワカセキギンを倒す学は、シュバリエやゾーンの幹部たちの前で、バルガイヤーが巨大生物である可能性を示す。そしてメドーは言い放つ。滅びた惑星が放つ死のエキスを吸うことで、バルガイヤーは脱皮を繰り返し成長していたという。そしてバルガイヤーは真の姿へと変貌を遂げるために、幹部たちを尻目に自立して地球に牙をむき始めた。

 巨大生物と判明したものの、46話「父母の行方」の開巻当初はまだ戦艦の姿をとどめているバルガイヤーは、再びニュータウン小学校に飛来する。だが学を喜ばせるために子供たちが育てていたあの花「シドンの花」が、メドーを苦しませ、バルガイヤーの行動を狂わせ、ついには墜落する。そしてさらなる驚愕の事実が明かされる。メドーの正体は幹部たちを操るためにバルガイヤー自身が作り出した幻影であり、1000個目の星を滅ぼして死のエキスを食らったバルガイヤーは神になるという。バルガイヤーの独白の中、一人異を唱えたのは銀河博士ドルドラである。得体のしれない巨大生物に操られ、自身の人生を捧げてきた悔恨だけがその胸を蝕み、言葉を吐き出させる。涙し、発狂したドルドラ。だがバルガイヤーは彼女を助けようとするザザとともに合身銀河闘士バラドルギンを誕生させ、シドンの花の始末に向かわせる。それを追う学はビリオンとの一騎打ちに応じる。一方のバラドルギンはシドンの花を吸血植物へと変える。それを阻止しようと4兄弟がバラドルギンと戦うが防戦必死。一方ビリオンとの一騎打ちはグンサーによって中断し、地上に戻った学は子供とシドンの花を助けるために戦うが、バラドルギンのつた攻撃でとらえられてしまう。ビリオンのとどめの一撃は、学を助けに入ったグンサーの腹部を貫く。グンサーは意地でも学に兄弟の両親のことを伝えようとする。銀河系P16惑星。そこに彼らの両親がいるという。グンサーはかつて怪我をして星川夫妻に助けられたが、博士が建造したスターファイブを見て、銀河ナンバー1になれると信じ、持ち逃げしてしまったという。兄弟が再び両親に会えるのを信じ、グンサーは逝く。そして兄弟先生がファイブマンであることを知り驚く子供たちをおいて、ビリオンとの一騎打ちに向かうレッド。ファイブテクターを使ってビリオンの剣を避け、一撃を入れるレッド。これが致命傷となりビリオンは散る。そしてバラドルギンもまたスターファイブによって屠られる。

 ついに判明した両親の居場所。P16惑星に向けて必死に送信を続ける兄弟先生たちは、ついに母・緑からの返信を耳にする。47話「超獣大脱皮」の開巻冒頭の風景は、互いに20年ぶりに耳にする声だけの感動の再会だった。だが墜落したバルガイヤーから発せられるオーロラが、この通信を阻害する。バルガイヤーは最後の脱皮を迎えるにあたり、極上の死のエキスを必要とするという。シュバリエとガロアはそれをファイブマンの命をとらえた二人は、ファイブマン抹殺へと動き出す。シュバリエはレッドとの一騎打ちに挑み、ガロアは4人と戦い続ける。その間にも徐々に脱皮までのカウントダウンは迫る。レッドはシュバリエとギンガマンの連携を逆手にガロアを攻撃! ギンガマンを一気苛性に倒す。黒ゴルギンを呼び出したシュバリエは、レッドとのチェーンデスマッチへとなだれ込む。一方スーパーファイブロボに乗り込んだ4兄弟は黒ゴルギンとの一騎打ちとなる。バルガイヤーのカウントダウンが響く中、ほぼ同時に勝利を収めるファイブマン。だがシュバリエの命を使って大脱皮が始まる。バルガイヤーは他人の命で血濡れた体を持つシュバリエの命が、ファイブマンとの戦いの中で極上の死のエキスになることを読み切ってブラフを仕掛けていたのである。バルガイヤーの言葉を聞いて半狂乱となり、艦長の座に固執するガロアを尻目に、バルガイヤーは大脱皮を始める。必死の通信を送る星川夫妻は、一体兄弟に何を伝えたいのか?

 ついに大脱皮を終えた銀河超獣バルガイヤーの猛攻から始まる最終回「星への旅立ち」。バルガイヤーは自らの力で地球に引導を渡すつもりだ。だが戦いに集中するあまり、両親からの連絡に気づかない兄弟たち。なすすべもなく一敗地にまみれるスーパーファイブロボ。合体したマックスマグマの最高火力ダイヤモンドマックスですら対抗できない。そしてついに母親の声に耳を傾ける兄弟たち。博士はシドンの花を持ってバルガイヤーに突入することを指示する。兄弟は残ったシドンの花を求めて子供たちの元へとひた走る。バルガイヤーはシドンの花を殲滅するために子供たちに攻撃を仕掛ける。だが兄弟ついに手に入れたシドンの花が、最後の希望となる。破壊されたマックスマグマの中からスーパーファイブロボが飛び出し、ついにファイブマンはバルガイヤーの中に潜入する。そこに待ち受けていたのは半狂乱となったガロアである。ガロアの猛攻の中、バルガイヤーの一室で銀河皇帝メドーそっくりの女性の棺を見つける一同。それはバルガイヤーの求婚を拒んで殺されたメドーという女性の遺体だったのだ。メドーの命はシドンの花の力を得てバルガイヤーを弱体化させ、同時に自らの遺体を白骨化させ、バルガイヤーから逃れることを選ぶ。そしてスーパーファイブロボによる一撃が、ついにバルガイヤーを打倒する。ついに地球に平和が訪れ、ファイブマンの戦いもここに集結する。そしてゾーンに滅ぼされた星を蘇らせるために、銀河の星々の子供たちの先生になるために、兄弟先生はスターファイブで地球を旅立ち、両親の元へと旅立っていくのであった。

<喪失感と補完と>
 「地球戦隊ファイブマン」の終盤において、いくつかの重要なエピソードが複雑に絡み合う。まず銀河戦艦バルガイヤーが脱皮を控えた超生物であったこと。最終的にはこのバルガイヤーなる生物が、メドーの素体となる女性を殺してしまったが故に、メドーの復活を願って1000個の星を滅ぼそうとしていたことが、最終回で明らかになる。その根底にはメドーを失った悲しみがあったのだ。そのバルガイヤーの弱点を教えるために、星川博士夫妻は銀河のP16惑星に生存しており、スターファイブを持ち出したグンサーとのちょっとした物語が花を添える。そしてその役割を、星川博士が大事に育ててきたシドンの花に持たせることで、物語は1話へと回帰する。ガロアが艦長の椅子に固執して、シュバリエと競い合うが、それとても夢幻のこと。バルガイヤーが超獣に脱皮するためにくらったのはシュバリエ自身の命であり、メドーがシュバリエを呼び寄せたのは、あくまでシュバリエを食らうためである。とすれば、ゾーンの幹部とはいずれ来るべき大脱皮のため準備された生贄だったと考えていいはずで、ガロアほどの男がどうしてそれに気づかないのかと不思議な気がしたが、結局シュバリエがバルガイヤーを離れても存在できたのとは違い、ガロアは艦長の椅子に固執するしかない、空虚な人物だったのかと残念でならない。それは見事なまでに捨て石にされたドルドラ、ザザを見て気づくべきだし、剣と酒のみに生きたビリオンのほうが、自身の意志で戦って死ねただけマシだったかもしれない。「地球戦隊ファイブマン」という物語がバルガイヤーという超生物の一生という側面として語られるならば、そこには一片の喜びはなく、ゾーンの幹部にも同じことがいえる。その侵略に喜びなどかけらもないのだ。

 さて主人公である兄弟先生の青春という側面で本作を読み解けば、そこに大きく横たわるテーマとして「両親不在」というセンテンスが重くのしかかる。一見して健全に育ったように見える兄弟先生であるが、当たり前のように両親を失った喪失感を抱えて生きていることは疑いえない。グンサーによってもたらされた両親生存の知らせは、その喪失を埋めるものではあるが、兄弟先生が大人として本来持っている人間性を補完するものではない。普通ならその喪失感を抱えながら生きていく人間は、その喪失感と戦わねばならない。だが兄弟先生はゾーンという戦う明確な敵がいただけに、喪失感と戦う暇がなかった。それが幸いしてか、兄弟先生の喪失感は、「兄弟」や「先生」や市井の人間として子供たちと接することによって、補完ではなく空虚な状態のままだ。つまり兄弟先生の強さややさしさは、本来両親によってのみ補完されるとしたら、最も愛情を受けた長兄・学の強さの理由を、設定の上で証明できることになる。もちろん学が長兄として悩み苦しみ、兄弟にも打ち明けられないほどに苦しんでいたとしても、それは両親との思い出ゆえだと思えるふしがある。とすれば、それを補完しようとする残りの4兄弟の戦いは、両親不在の影に影響されており、不在から生存という状況の変化があっても、物語上では4兄弟に変化がない。それを書きこむことに作り手の抵抗があったのかもしれないが、もしこうした葛藤が物語の中心にあったとしたら、ファイブマンはまたえらい方向性の物語になっていただろう。その意味で学と他の4兄弟とはアンバランスが生じており、書き込まれるべき物語の質が異なるはずだ。それゆえに長兄・学の物語が家族や兄弟を代表するような回に相当する理由がわかる。逆にレミがアクション回を担当するのは物語上の理由ではないことが浮き彫りにされる。健や文矢の担当回がほぼ子供イジリの回になっているのはこのためだし、長女・数美にしたところで、家族的な位置づけ以外には説得力がない。つまるところ、この兄弟は両親との不幸な距離が物理的に生じている時点でやはり不幸なわけだが、その喪失感故に両親と死に別れたとした序盤の喪失感の方が、まだしも他人への優しさやいたわりが密に感じられて、物語的には深い陰影が与えられていたと思える。その意味においてこの兄弟先生にとって両親の健在は、1年間の戦いの結果のご褒美でしかなく、もはや補完できないとなれば無用の長物になる可能性だってあるわけで、賛否両論となるのもうなずける。少なくても筆者にとっては、両親を助け出すために兄弟先生たちは、「兄弟(=家族)」と「先生」という設定を天秤にかけて、家族を取ったことになる。最終回の子供たちとの別れのシーンで、子供たちに聴かせた「銀河の星に残る子供たちの先生になる」という言葉も納得できかねるのだ。

 筆者が最初に指摘した「兄弟」と「先生」というタームは、最後の最後でどちらをとるかにシフトせざるを得なくなってしまった。台詞の上ではなんとでも言えるが、少なくても彼らの最後の行動は、先生という職業ではなく、家族を選んでしまったこと。それを責めるつもりはない。肉親の暖かさとは、それほどまでに貴重なものなのだ。教条的といわれようとなんだろうと、その事実に変わりはない。その教条さこそが「地球戦隊ファイブマン」の持ち味といえる。
 これまでに戦隊シリーズが我々に示してきた教条的な物語は、なにも本作で終わりを告げたわけではない。ただし、その表現方法は明らかに変質を始めた。「地球戦隊ファイブマン」という作品はその過渡期にある作品だといえる。次作「鳥人戦隊ジェットマン」は、恋愛を扱いながら、むしろ人間の肉欲に固執した物語がある種のリアルをもって受け入れられ、そのスタイルが酷似したトレンディドラマのようだと揶揄された。だがジェットマンの物語を紡ぐためには、「ファイブマン」という過渡期を経ねばならなかった。家族愛のような教条的で普遍的な愛は、より人間のドラマに近い「恋愛」を至上とした物語へと変遷していく。それは戦隊シリーズが多様なドラマとして跳ねていくための、必要な措置であったのだ。筆者はこの「地球戦隊ファイブマン」を、その時間の流れの中にある1作品として、改めて愛することができた。デコボコが多く、主人公側のキャラクターが薄い作品ではあったが、現在も続く戦隊シリーズの、平成時代の礎として。いや、そんなのどうでもよくなるぐらいに楽しい作品だった。

 ちなみに。DVDでの視聴の際、いつもならOPやEDは飛ばして観てしまうのだが、本作に限っては1度たりとも双方を飛ばしたりはしなかった。それぐらい本作の楽曲も気に入っている筆者でした。
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コメント

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お疲れさまでした。

ファイブマン完走お疲れさまでした。

まにまにさんも剣道してあったんですね。
またまた親近感!!

戦隊シリーズもルパレンVSパトレンで42作目(でしたよね?)、これだけ歴史を重ねれば時代に対応させる為に試行錯誤の繰り返しだと思うけど、そのブリッジとしてのこの作品、まにまにさんの記事で、改めて見たくなりました!!
レンタルしてる所とそれを見る時間、共に見つけ出そうっと
( ̄∇ ̄*)ゞ

ちなみに、ダイレンから3年って書いたけど、シリーズ名がタイトルの記事がって事で、ニンニンVSジュウオー、スペスク等で劇場版はスポットで書いてありますよ!!
去年の3月頃もジュウオー(ってよりアムちゃん!)をネタに二人で(主に私が!)ニヤニヤダラダラやりとりしてたし・・・

ありがとうございます!

ちんたらさま

 コメントありがとうございます。おかげさまを持ちまして、ファイブマンなんとか完走できました。

 最後のまとめのあたりは、ずいぶんと辛らつな話になってしまいましたが、初期設定の作りこみの甘さと、脚本陣の自由度がこういう展開にさせたことは疑いえず、その薄さを逆手にとって放り込んだエピソードの多さは、1話ずつの解説を連ねる結果になりました。おかげで長いったらw

 本文中にもありますが、小学3年から中3まで剣道してまして、私が通っていた道場は「スケバン刑事II」の2話に敵地として登場してます。

 戦隊シリーズは見ているだけで楽しいので、ブログでもっと取り上げたいのですが、問題は記事のテーマ設定がやりづらいところで。とはいえ取り上げたい作品はまだまだあるので、もう少し期間を詰めて書きたいんですが、他にも書きたい作品ありますので、いつも後回しになります。
 次はカクレンジャー、メガレンジャー、ライブマンあたりでお目にかかりますwww

いや~、確かに

読みごたえ充分でした!!
まにまにさんのファイブマンに対する思いが伝わる文章でした!!

カクレン、メガレン、ライブマン、この辺りも例によって見てないような気がするけど、ゲッターと合わせて楽しみに待ってますぜ!!

それにしても

ちんたらさま

 思うのですが、ファイブテクターがもったいない、とw
 なんかね、出し方がそこそこドラマティックだっただけに、出番がすべて特攻技。見た目が地味。
 防御力アップだけで、他のステイタスに影響しない感じも地味。個人武器との連携とか、おもちゃ展開でもあれば、どうにかなったろうに、と思わないでもなくて。

 あ、ゲッター、がんばります(てへ)
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
48歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitterやってます!

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