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機動刑事ジバン~その4・ホンネとタテマエ~

承前
 少しだけ本作の音楽について触れておきたい。本作のBGMを作曲したのは、名匠・渡辺宙明氏。DVD3巻のブックレットには考察が残されているので、そちらも参照いただきたい。日本コロンビアから発売されていたANIMEX1200シリーズでCD化された楽曲を聞くと、本作のために宙明先生が書き下ろした楽曲は、劇中でほとんど使われていない。この件については多くの憶測も含めて、様々な言説もあるが、現実にはこれまでの宙明サウンドの流用によって賄われており、その後、東映特撮作品から渡辺氏は距離を置くことになる。CDを聞く限り、特撮ヒーローらしい打楽器を多用した音楽でありながら、宙明氏の都会的センスが凝縮されたサウンドとなっており、音楽的な面でも「あぶない刑事」などの都会的な印象を目指したことが伺える。結果的には後半3クール目あたりから少しずつではあるが本作用の楽曲が使われ始めることで、多くのファンは溜飲を下げることになる。反面、劇中で使用されているかつての宙明サウンドが作品の印象を損なうことはなく、往年の東映作品のファンは様々な作品の楽曲の使用によって耳を楽しませることになる。

 一方の劇中曲については、番組当初より使用頻度が高いのは「吠えろジバン!」と「GOYOだ!」の2曲だ。「吠えろジバン!」は洋子ら人間たちがバイオロンに人質にとられ、間一髪という時に流れ、ジバンの登場を音楽で印象付ける力強い1曲。「GOYOだ!」はジバンの捜査開始に合わせて流れる印象が強いが、その一方で直人や洋子が捜査を始める際にも流れるので、捜査開始のイメージが去来する楽曲になった。また「ジバン3大メカの歌」も含めて、各曲のイントロ部分などもジバンの登場ブリッジや戦闘開始を告げるファンファーレとして使われていた。35話でパーフェクトジバンが登場すると、その登場や活躍に合わせて流れるのは「パ―フェクトジバン」という曲である。ジバンの新装備を紹介しながらその力強さを串田アキラ氏の声に乗せて押し出してくる。後半のバトルシーンを飾った名曲だ。

面白い楽曲の使用を紹介しよう。42話「怪物ロックンロール」では洋子が応援するデビュー前のロックバンドが歌う曲が、なぜか「バイオロン軍団現わる!」なのである。歌うは「超新星フラッシュマン」でブルーフラッシュ・ブンを演じた石渡譲だ。物語は恐竜型のバイオノイドを生み出そうとするギバの命令を受けて、必要となる電気を盗み出すナマズノイドの作戦を挫く話なのだが、バイオロンを称賛するこの歌を、なぜかナマズノイドはギバをバカにしたといってロックバンドを襲うのである。しかも「下手くそ」とこき下ろしてまでw
 清志郎の妹が上京するタイミングで時計が狂いだす事件に巻き込まれる40話、洋子の後輩婦警さんが奮闘する41話と、「機動刑事ジバン」最終第4クールは、こうして幕を開けたのである。

<ようこそ!洋子、バディの可能性>
 43話では三度、片桐洋子刑事がフューチャーされる。クイーンコスモがギバに渡した宇宙ウイルスを使い、コブラノイドを押し立ててジバンにウイルスを注入する作戦を実行するマーシャとカーシャ。そのために非番の片桐洋子を襲い、まず彼女にウイルスを注入する。コブラノイドによって操られた洋子は、助けに入ったジバンにウイルスを注入してしまう。ウイルスは洋子の命を蝕むと同時に、ジバンの内部メカニックまでカビで腐食して機能に変調をきたしてしまう。ハリーボーイは宇宙ウイルスの対抗薬を作るが、それはあくまでジバン用であり、洋子には効かない。ハリーボーイはコブラノイドの持つ宇宙ウイルスを取り出してワクチンを作ることを提案する。おびき出される洋子を助けるために、ウイルスに侵された体をおして戦う劣勢のジバン。洋子は命を顧みず車でコブラツイストに体当たりしようとする。間一髪、洋子を車から助け出したジバンは、ようやく駆けつけたハリーボーイによって宇宙ウイルスは処理され、逆転するジバンであった。

 続く44話ではクイーンコスモの操る宇宙バイオによって街中の人々が眠ってしまう事件が発生。NASAの日本人科学者が日本に招へいされるが、彼の技術を狙ったバイオロンによって襲われる。襲ったバイオノイドは記憶を抜き取る能力によって、科学者とそのファンである少年の記憶が入れ替わってしまう。だがVIPだろうが子供だろうが命がけで戦う洋子の姿を見て、科学者は変節するという話だ。

 この2話を見ていて、それまで直人の先輩刑事である側面ばかりが強調される一方で、それ以上の活躍が望めなかった洋子が、ここにきてやっとフューチャーされてきたと思うことだ。43話ではジバンのために命を懸ける洋子の姿を描き、互いを思いやる優しさで困難に立ち向かう話となった。44話では高慢ちきでイヤミな科学者を、刑事としての姿勢をもって変節させている。双方ともにジバンだけでは物語が成立しない。洋子自身がキーマンになっている物語でもある。そう考えると、もし洋子が直人とジバンの真実を知ることで、洋子がジバンのバディとして捜査に当たることで、直人と洋子の関係性も、捜査や事件解決への糸口など、もっとスムーズに進む気がするのである。実際の作品はそうなっていないのは、もちろん刑事・田村直人というキャラクターをオミットさせないための配慮が理解できるから、仕方のないことではあるのだが。

 片桐洋子を演じる榎田路子さんは、南野陽子のデビューとなったTBSドラマ「東中学3年5組」にも出演。「ポニーテールは振り向かない」にも出演したが、筆者的には「スケバン刑事III」の25,26話に登場した外法衆・馬頭(めず)役が忘れがたい。世界を闇に包もうとする忍者集団「影」。その野望を阻むために戦う三代目スケバン刑事・風間唯と二人の姉の風間三姉妹は、影が繰り出す忍者たちが仕掛ける事件に立ち向かう。外法衆の牛頭(ごず)と馬頭はその刺客であり、唯たちの命を狙って彼女たちの高校に転校してきたが、唯が放った必殺の分割ヨーヨーによって倒される。なお榎田路子さんは1991年に結婚して引退している。

<クイーンコスモ最終決戦!>
 イカノイドがスルメ生産者に復讐するとかいいながら、強力な墨を吐いて社会を混乱させたり(45話)している間に、クイーンコスモは最終作戦の準備に余念がない。これまで「女だけの帝国を作る」などとうそぶきながら、ジバンによって邪魔されて何一つ成果を得られなかったクイーンコスモは、宇宙から飛来した隕石を使って最終作戦を発動しようと企んでいた。ギバにまで宣戦布告し、街中で暴れ始めるクイーンコスモは人々から生気を奪っている。そのエネルギーをまるでエイリアンの卵のようなものに浴びせかけ、クイーンコスモはほくそ笑んでいる。彼女の最終作戦、それは自分のような人間型の生命体を生み出して仲間とし、人類に一斉攻撃を仕掛けるというものだった。隕石をたまさか発見してクイーンコスモの企みを知ってしまったのは、さすらいの良とみどり=まゆみだ。まゆみに利用価値があると知り、クイーンコスモはまゆみをさらい、ジバンを牽制する。クイーンコスモとの激しいバトルの一瞬を突き、卵を破壊するジバン。クイーンコスモは怒りに任せてジバンを攻撃し、まゆみの指輪爆弾でアジトごと破壊するという。マクシミリアンの細いビームでまゆみの鎖を断ち切るジバン。だがもう少しのところでクイーンコスモとの戦いのダメージから機能不全となるジバンは、まゆみを助け出すことができない。そこに現れたのは良だ。良は指輪爆弾をもってアジトの外に運び出すが、爆破に巻き込まれて落命してしまう。良の死を看取ったまゆみは、ついにすべてを思い出した。再会の時、近し!そう思ったのもつかの間、バイオロンがまゆみを確保する。そして真の正体を現したクイーンコスモは、怪物コスモとなってジバンに襲い掛かる。対バイオロン法では裁けないクイーンコスモを、電子手帳にかけて戦いを挑むジバン。クイーンコスモ、その正体は月に廃棄された廃棄物から生まれた生命体であり、岩石状の体を持つ生命体であった。だが不思議にもエネルギーをチャージし、パーフェクトジバンとなったジバンに敵はない。オートデリンガーのファイナルキャノンで、謎の強敵・クイーンコスモは消滅する。だがまゆみはバイオロンに囚われたままである。ジバンとバイオロンの最終決戦は近い(46話)。

 結局最後の最後まで何がしたかったのかわからなかったクイーンコスモ。実に不可思議で、人間の文明を全否定する言葉を発しながら、人間の生み出した美しい洋服や装飾品を愛してみたり、女性だけの帝国を作るといいながら、その女性とは人間ではないのか?とかいう謎もあるし、やっていることはジバンの邪魔とバイオロンの加勢だけ。洋子を瀕死にした宇宙ウイルスにしたところで、持ってきてギバに渡しただけで、ジバンに注入する方法論はバイオロンにおまかせである。最終決戦といいつつ、自分の仲間を得るために、否定した人間の生体エネルギーを利用するとか、もう本末転倒にもはなはだしいのである。これほどまでに矛盾だらけの作戦を、さもいいこと考えた!風に立案して実行するクイーンコスモも、ギャル言葉でしゃべるマーシャとカーシャに引けを取らない当時のイマドキ風の女性の浅知恵に感じてしまう。この点においてやはり脚本陣もスタッフも、彼女のキャラクターを扱い兼ねたのか、バイオロンとの最終決戦の前に整理されてしまった感は否めない。この46話でもっとも重要なポイントは、良が死に、まゆみは記憶を取り戻したにもかかわらず、またしてもバイオロンに拿捕されてしまったことで、17,18話の直前に物語が回帰したことである。クイーンコスモは初登場時に、すべてのインパクトをもって登場したため、これ以上のインパクトも狙えず、ほとんど飼い殺し状態であったので、カンフル剤とはなりえなかった。この謎の美女クイーンコスモが、時にバイオロンに肩入れし、時にジバンに協力し、その目的を明かさぬままに、宇宙開発や月への廃棄作業がクイーンコスモの攻撃にさらされて、などという物語でもあれば、また違った方向性もあっただろうが、まこと残念なキャラクターであった。

<冴える!雨宮慶太演出>
 ここで劇場版について触れておきたい。1989年7月に公開された「東映まんがまつり」の一編として公開された作品で、本作唯一の劇場作品だ。70年代の「東映まんがまつり」なら、TV版の1編を上映用にし直したものだが、80年代以降は劇場用に新作が作られており、「東映特撮ヒーロームービー」としてDVD-BOXが発売されている。なお本作についてはTV版のDVD5巻にも収録されている。なお「大爆発!!恐怖の怪物工場」というサブタイトルがつく場合もある。この物語が本編のどのあたりに位置するかを考察すると、クイーンコスモ登場前で、なおかつダイタロス登場以降になるので、12話から28話の間ということになる。公開日が7月15日であることを考慮すれば、24話と25話の間と考えるのが妥当な線だろうか。

 物語は多くの親子連れが集う船の科学館を、バイオロンのマスクたちが強襲し、子供たちをさらうところから始まる。この事件以前にその種はまかれており、いくつかの動物が盗難にあっていた。子供たちを追った洋子共々、バイオロンの先兵として改造されそうになるところで、それを助けに入るジバン。だがそれはジバンが来ることを見越してドクター・ギバが準備したジバン抹殺の罠であった。果たしてジバンはギバの仕掛けた数々の罠を潜り抜け、洋子と子供たちを助けることができるのか?

 物語冒頭のマスクたちの車とジバンのバイカンのカーチェイスの迫力は、まさに劇場版スケールの大きな画であり、わかりやすい導入とともに期待値が上がる。田村直人として登場するシーンは冒頭のジバン基地での一人語りだけなので、俳優・日下翔平氏としては、少し残念ではあるが、そのかわり洋子先輩が大活躍するので、納得しておこうか。

 特筆すべきは本作に登場するバイオノイドであるダイギバノイドである。名前が示す通り、おそらくは「機動刑事ジバン」のギバの最終形態として用意された可能性もあるが、結果的には劇場版でのお披露目となった。実にユニークなことに、このバイオノイドは3体のブロックに分裂し、それぞれがギバの仕掛ける罠を構成するのだが、コウモリブロック、スパイダーブロック、アンモブロックの3体のうちアンモとコウモリはそのままバイオノイドのような人間状の形態をとっている。特にコウモリブロックとアンモブロックは頭部がさらに分割するギミックまであり、ジバンは様々に形態の変わる敵を相手取って戦わねばならない。しかも分割した2体の頭部とスパイダーブロックが合体し、不気味なまゆを作ると、さらなる合体形態としてダイギバノイドが誕生するという千両役者っぷりを見せる。この時のまゆからの脱皮のシーンは、非常に気持ちが悪くなるシーンが連続するが、ここではその詳細は伏せておく。この演出部分は名匠・雨宮慶太の趣味が炸裂する素晴らしいギミックとミニチュアを使ったコマ撮りの演出で、「ゼイラム」の骨ゼイラムや「仮面ライダーZO」のクモ女のシーンを彷彿とさせる素晴らしい特撮シーンとなっている。白い皮膚の下から現れる赤い内部構造に、割れる下あごなど、雨宮氏らしい趣味が顕著に表れた魅力あるシーンをご堪能あれ。

<あばかれたまゆみと直人の秘密>
 ここからは最終回に向けて、盛大なネタ晴らしと怒涛のバトルラッシュとなる。子供たちからバイオノイドのデザインを募集する、何やら楽屋落ちめいた作戦の47話と、早めの除夜の鐘でお清めを受けたジバン(笑)の48話を経て、ジバン最終4話が幕を開ける。ここまでの話を一度整理しておきたい。46話でバイオロンに囚われたまゆみであるが、その生存が確認されたのが48話の終わりである。金欠で住むところもなくなった二人の若者が、地震によって口を開けたバイオロンのバイオ工場の入り口を発見して巻き込まれる話だが、死んだと思われていた若者の一人が耳にした話から、まゆみの生存が確認できたことになる(話の真意を確認しなくていいのかwww)。

続く49話ではどうしてもジバン基地の場所を話さないまゆみに業を煮やしたギバは、まゆみの優しさに付け込み、ニセハハノイドをまゆみの母に仕立てあげ、ジバン基地まで案内させようとするが失敗に終わる。恐ろしいのはニセハハノイドで、体内に爆弾を抱え込み、ジバン基地で自爆するつもりだったというから驚きだ。どうでもいい話だが、まゆみの母は登場するたびにバイオロンに利用されており、本来の母親的な部分はあまり見られなかったのが残念だ。

そしてついに50話「二人を結ぶ点と線」を迎える。物語冒頭でまゆみを思う直人が、直人を心配する洋子に向かって唐突にこんなことを言いはなつのである。「かつて行方不明になった両親と妹がいる。その妹がまゆみとそっくりだ」と。妹の写真まで出してきて、直人はジバンとしてまゆみに出会ってからも、いけないと思いつつまゆみの身辺を洗っていたが、確証が持てずにいたというのだ。しかも直人が刑事になったのも、これが理由だというのだ。

は? いや、なんというか、恩師・五十嵐の孫というだけじゃ、ダメなんですかね?

この疑問がどうしても頭がよぎる。しかもこのシーンのあと、アバンタイトル直後に、警視庁の柳田の部屋からジバン計画のファイルが盗まれる。ジバン基地では直人がバイオロンにどこまでジバンの秘密が漏れたのかを確認しようとしていたが、柳田はそれを止めようとする。だがそのファイルには記されていたのだ! まゆみこそ生き別れた直人の妹であることが。直人の両親たちが行方不明になった事件とは、バイオロンが実験のために人間狩りをしていた事件であり、偶然北海道のバイオロンのアジトで発見された生き残りがまゆみであったという。まゆみを発見した五十嵐博士と柳田は、五十嵐博士の息子にまゆみを預け、親子として暮らしていたという。だが五十嵐親子の感情を思えば、それと知った柳田でも直人に真実を話せないでいたという。

この話をどうお思いですか?
筆者は申し訳ないが、正直どうでもいい情報のように思えた。別に恩師の孫娘でいいじゃない、と思ってしまう自分がいた。だがよくよく考えれば、この話は直人が刑事になるためのエピソードを補完する事実でもあるから、無駄な話でもない。でもあまりにも唐突すぎるのだ。もしこの直人の独白がもっと早めに登場していたなら、物語の誘引要素として十分物語を牽引していけた可能性もあったはずだ。まゆみが直人の妹である可能性。それを縦糸としてまゆみと直人を出会ったり引き離したりを繰り返せば、なかなかにドラマティックに展開した可能性だってある。さすらっている間のまゆみは、良といったいどこにいたのか?その答えがまゆみの幼き日の記憶をたどっていたとしたら、それはまゆみが記憶を取り戻す過程だったかもしれず、さすらう事情を補完しただろう(もちろんさらわれた当時のまゆみが幼すぎて無理なのは承知していますがw)五十嵐の孫娘としてのまゆみには、ジバンとの重要な接点がある。だが直人としては直人の正体がジバンであると知っていて直人を「お兄ちゃん」と慕っている、という構造がある。インターフェイスとしての「ジバン」が間に挟まっている以上、直人とまゆみの間は、ジバンを間に挟んだ3点を結ぶ2つの線でしかない。この物語のサブタイトルになっている「二人を結ぶ点と線」が直人とまゆみの関係を直接結ぶ2点と1線を表す言葉だとしたら、それは物語からジバンという主人公を外してしまうことになり、「機動刑事ジバン」という物語としては、はたしてどうよ?という結果となる。だがこの後の物語で、その事実と引き換えに、直人はいくつか大事な人々を失うことになる。

まゆみの真実が判明した直後、ジバンキラー・マッドガルボの挑戦を受けるジバン。だが崖の上に立つ敵の姿は、ジバンと同じ姿をしていたのである。盗まれたファイルを元に、ギバによってすべてをジバンより上回るよう改造されたガルボは、ジバンに襲い掛かる。しかも3大メカのコントロールまで奪われたジバンは、マッドガルボと3大メカの猛攻に喘ぐことになる。だがジバンとまゆみの絆と思いの力がマッドガルボを攻撃し、ファイナルキャノンで撃退することに成功する。

続く51話「幻のまゆみを切れ!」冒頭で、バイオロンは最終攻勢に出る。マッドガルボは盗まれたジバン・ファイルからジバンの行動パターンを読み取り、田村直人の状態でもバイオロンに襲われてしまう。直人は一計を案じ、田村直人という個人を捨て、無念無想の境地を開くために、すべての関係を絶って修行に入る。一方柳田とハリーボーイは、バイオロンの大攻勢を尻目にジバン基地を死守することしかできない。バイオロンは国会や警視庁をはじめとする国の重要施設の占拠を行う。大攻勢によって窮地に立たされた柳田は捨て身の戦法に出る。バイオロンにミサイルをジバン基地に打たせて、逆にバイオロンのアジトを発見しようというのだ。そしてついにバイオロンのミサイルは発射される! ジバン基地まであとわずか。3大メカは脱出したが、柳田とハリーはジバン基地に残り、バイオロンのアジトをジバンに伝えようと奮闘する。だがついに二人は命を落としてしまう。かけがえのない二人の仲間を永遠に失った直人。死に際の柳田の言葉を聞き、柳田の亡骸を抱きながら、直人はバイオロン打倒を誓う。さあ、バイオロンとの最終決戦だ!

<ジバン、開眼!>
 ダイタロスで空を飛び、パーフェクトジバンの状態でバイオロンの基地に侵入するジバンは、二人の敵討ちのためにテンションMAXで挑んでいる。ここにきて直人=ジバンの問題は、マッドガルボに指摘されたジバンの弱点である「人間としてのやさしさ」をどうやって克服するか?という点に尽きる。最終決戦になだれ込み、バイオロンの基地へと潜入するジバンではあるが、頭の片隅には、このことが頭から離れない状態での突入であったろう。マッドガルボと対峙するジバンは、やがてマッドガルボの姦計にはまり、田村直人の既知の姿を借りたマスクになぶられることになる。まゆみにまゆみの両親、洋子に清志郎、そして柳田の姿のマスクに、いいように切りつけられる中で、ジバンはついに悟るのだ。

「やさしさで地球を滅ぼしていいはずがない!」
「心を捨て去るというのは、まやかしの優しさを捨て去り、本当の愛のために非情になるということだ!」


 そして親しい人の姿をしたマスクを切り、窮地を脱するジバンは、マッドガルボに言い放つ!

「俺は鬼になったのだ! 大きな愛のために、鬼となったのだ!」
「きさまにはわかるまい、バイオロンの怪物に、本物の愛がわかってたまるか!」


 本編中白眉ともいえる台詞だったので、書き出してみましたが、これにも矛盾があるのよねえ。何度も書いたように、バイオロンにも心が生まれる可能性があることを、物語で示しておきながら、ジバンにこれ言わせちゃったら、それが全否定になる。物語を弾ませるために書いた脚本上の美点としてのバイオロンの可能性を、この台詞一発で吹き飛ばしちゃうことになるんだけど、まあカッコいいから、いいかw ついでに書き添えておくと、こういった感情論ともいえる話は、ジバン=ロボットではないことを浮き彫りにしてしまう。やはり直人の脳だけを残したことを考慮すれば、容姿のタイプチェンジがあるにしても、ロボットではなく、サイボーグのほうがあてはめやすいかもしれない。

 そしてマッドガルボやマーシャカーシャの攻撃を潜り抜け、ガルボがジバンの腹を刺し貫こうとした剣はジバンの左手によって止められる。肉を切らせて骨を断つ! ガルボの腹部をとらえたジバンのマクシミリアン。ジバンエンドの一閃で沈んだかに思われたマッドガルボは再び立ち上がり、ジバンに襲い掛かろうとするも、ファイナルキャノンでとどめを刺される。残るはドクター・ギバだけだ!(51話)

<二つの母性の帰趨>
 こうしてバイオロンの母性を司ったマッドガルボは打倒されてしまった。すでにまゆみはバイオロンの手に落ちているから、ジバン=直人が母性を欲してバイオロンに戦いを挑むのは当然である。しかも柳田とハリーボーイを失ったゆえに、その敵討ちの意味合いもある。ここで柳田が「父性」を感じさせないことが重要で、本質的な父性である五十嵐博士は既に亡く、柳田の立場はそれに代わるものではないという点は、直人が柳田を諭したり、柳田の制止を振り切って戦いに赴き、モニター越しの柳田はそれを応援することしかできないという部分が、これを補強する。柳田はあくまで直人=ジバンにとっては同志でしかないのである。父性を失ったジバンは、母性からも引き離されるから、その母性を求めて戦い続け、青年として成長を遂げるというのが「機動刑事ジバン」という物語の本質的な縦糸であることは以前も述べたとおりだが、自身の母性を取り戻すために、他人の母性を傷つけるということまでやってのけるまでにジバンは成長する。前述の「鬼になる」はまさにこのことである。

 一方、いくらギバが生み出した存在とはいえ、本質的にバイオロンの母性であり要でもあったマッドガルボが、成長を経て脅威となった青年=ジバンに負けてしまう。絶対的な母性としての存在が、立ち位置として同じジバンとギバの対決を理由づけるように最終決戦に引っ張り出してしまうのだ。ギバはここでジバンと戦わずにトンズラこいてもよかったはずなのに、ジバンだけは打倒しようと策を練る。ギバが戦う理由が、マッドガルボの死にあるとしたら、やはりマッドガルボの母性は、ギバにとっては絶対だったろう。だからこそマッドガルボを失ったギバは、ジバンと戦うしかなく、しかも成長を遂げた青年はまゆみという母性を取り戻して、ギバを打倒するのは、自明の理であったわけだ。

<科学のホンネとタテマエ>
そして迎える最終話52話「愛の最終決戦!!」。マスクたちに占拠された警察署から、清志郎の応援を得て、洋子がジバンに加勢するために走り出す。マッドガルボを見殺しにし、ジバンの潜入を許してしまったマーシャとカーシャは、早々にギバに消去される。そしてギバは自分の手で生み出した生命も、人間の命も虫けら同然とうそぶく。そしてついにギバはその正体を見せるのだ。その正体とは、かつて五十嵐博士が所長を務めていた国立科学アカデミーバイオ研究所の廃液処理場から誕生したギバノイドだったのである。廃液処理上の汚泥から成長して誕生したギバノイドは、人間は科学の名のもとに命を弄び、自分たちの欲望を満たそうとしているとしてした上で、この地球上で命を大事にしている者などいないと宣言する。それはバイオロンとどう違うのかとジバンに問いかけるギバ。だがジバンはそれを全否定して敢然と言い放つ。人類は命を尊び、大切に育んでいる、と。やおら始まるジバンとギバの激闘! 呼応するように参上するレゾンとバイカンだが、ギバの攻撃に一撃で消滅してしまう。ファイナルキャノンも受け止めて、ギバはまゆみを人質にとり、最終作戦をほのめかして、アジトの大爆発の中、大型飛行船で逃げ去ってしまう。スパイラスでそれを追うジバン。ギバは最終作戦の要であるミサイル発射ボタンをちらつかせながら、ジバンを追いつめる。だがすでに開眼したジバンは、まゆみの目の前でギバノイドの胸をマクシミリアンで刺し貫く。ギバノイドは倒れ込む刹那、まゆみを地上に落下させてしまう。それを追って落ちていくジバンはダイタロスを使ってまゆみを救出。まゆみを洋子に託して再びギバノイドのもとに戻ったジバンは、燃え上がる飛行船の中でもみあいになり、飛行船ごとギバノイドを倒すことに成功する。
そして直人はまゆみをおいて旅に出る。まゆみとの暖かで平和な暮らしに安住することなく、世界にはびこる命の尊さを顧みない悪を倒すために。

 母性を取り戻そうとする成長が約束された青年と、絶対的な母性を失って組織は瓦解し、自暴自棄になった子供の戦闘は、当然の帰結として青年の勝利で終わる。構成上、いや設定の性質上、この戦いの趨勢はどうあがいてもこの結末になるしかなかったわけだ。だが物語の表面で母性を持ち出すことができない以上、表層的な理由が必要になる。それがドクター・ギバの侵略動機の部分だ。面白いことにここで本作のキモとも思える部分が顔を出す。ギバの誕生経緯は前述の通りだが、嘘偽りなく、ギバの主張とジバンの反論は、「科学」の本音と建前なのだ。ギバとは科学によって人類にもたらされるすべての恩恵のアンチテーゼであり、人間生活になくてはならない科学の進歩発展のダークな側面を強調した存在である。ところが一方のジバンの反論は、科学の建前として標榜すべき一側面ではあるが、お話としてはきれいごとすぎて説得力に欠けるのだ。ギバがバイオテクノロジーにあくまでも殉じて固執したように、その建前側もいいふくめればいいものを、ジバンは上っ面の建前論だけを言い放って戦闘になだれ込むあたり、建前の入る余地がないほどギバの言葉は本音として重すぎるだろう。そう考えを巡らしていけば、二つの母性の戦いという主軸の本音に、科学の二面性の建前をすり合わせてあるように思える物語である。つまり建前がおのずから勝てるように組み合わせてあるホンネとタテマエの二重構造だったという話が、「機動刑事ジバン」という物語の根本部分だったっていうことでしょうかね。

 DVDの特典映像では、DVD発売当時のジバン役・日下翔平氏のインタビューが収録されている。現在は俳優を廃業し、マネージャー業をなさっておられるようだが、その精悍なマスクも、奥行き深い声も健在で、廃業なさるには惜しいと思わざるを得ない。だがその一方で、本作で演じた田村直人=ジバンを深く愛し、ジバン役で俳優・日下翔平が全うできたという話も漏れ伝わってくる。筆者は本作を見ていて、ジバンが対バイオロン法を読み上げるシーンが大好きで、怒りと法を順守する者の重責がにじみ出る、対バイオロン法を読み上げる声の迫力は、日下氏の俳優としての白眉の一つであると思っている。日下氏のキャリアの中で、まるで必殺シリーズの中村主水のような表と裏の顔を持つ男の演技を、あの若さで演じきることができた背景には、多くの監督やスタッフおよび仲間のキャストとの親密な関係によるところが大きいであろう。それはDVDの特典映像でも日下氏自身の口から仔細に語られる話であるから、本作を愛してやまない方々には、ぜひとも見逃していただきたくないコンテンツである。

 さて「機動刑事ジバン」という作品は平成という時代のスタートの鐘をならした作品であるが、それはあくまで昭和の時代の名残である「善と悪の戦い」を「対バイオロン法」とロボットの刑事という存在によって犯罪を取りしまる過程を、善と悪という姿に置き換えた物語である。だが次回作である「特警ウィンスペクター」は、より「刑事ドラマ」に近い物語となり、犯罪を起こすのは超常の生物でも、改造された怪人でもなく、あくまでも人間自身となる。たまさか人間を超える何かが犯罪を引き起こすことはあっても、それは人間の悪意が介在して発生している犯罪であるため、総じて原因は人間に求められることになるわけだ。メタルスーツの装備もロボットも近未来装備も、すべては犯罪によって引き起こされた大規模災害に対応するものであり、結果的に強大な敵に対抗するモノではあっても、それ自体を人(犯罪者)に向けるものではない。そうした形に変質していったメタルヒーローシリーズの変換点としての「機動刑事ジバン」は、「重甲ビーファイター」で再び善と悪の戦いに回帰するまでの3年間の嚆矢となる作品であったことは記憶にとどめておきたい。とはいえ、ジバンのメカメカしくて圧倒的なヒロイズムもいいし、バイオノイドの華やかなデザインセンスの爆発といい、マーシャとカーシャのにぎにぎしさも楽しいし、ストレートにも過ぎる善悪の対立構造も、いまさらながら見やすい。複雑さが増す昨今の特撮シーンで目の肥えた方々には、むしろ歯ごたえがないかもしれないが、のど元をさらさらとすぎていく清涼感のあるお茶漬けみたいな作品も、これはこれで味わい深い。お酒とともにスルメのように味わいたい。イカノイドに殴られそうだけどw
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波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
48歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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