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「スパイダーマン:スパイダーバース」~成長と可能性の世界線~

 マーベル・シネマティック・ユニバースが、「アベンジャーズ エンドゲーム」と「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」でフェーズ3を完了した時点で、ほんの少しだけ熱量が落ち着いたと思いきや、マーベルがフェーズ4以降の発表を行ったとたんに聞こえてきたのは、「スパイダーマン」の映像権利に関して、マーベルとソニー・ピクチャーズの間でもめ事が始まった。当のソニーにしてみれば、2018年に公開された本作「スパイダーマン:スパイダーバース」が成功したことで、以前の実写映画シリーズを超える手ごたえを感じたことだろう。ユニバースによって鎖につながれたような状態のスパイダーマンを、自分たちの手元においておき、コミックスで多様な展開を見せたスパイダーマンの可能性を広げたい。だがソニー側が新たな商売を思いついても、マーベルの鎖につながれた状態では、思うようにいかない。一方でマーベルもシネマティック・ユニバースにおけるスパイダーマンの活躍や、トム・ホランドによって、強い印象を残すやんちゃで子供っぽさも残す映画シリーズを継続させることで、新たな商売を展開させたいのだろう。原作権があるマーベル側はスパイダーマンの生殺与奪を自由に行使してしまう。「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」のラストのような状況を見せつけたならば、ソニー側にとってはドル箱キャラクターをみすみす殺してしまうことになる。もちろんそんなレベルの低い話し合いではなく、より高額で高度な商売が、二つの会社の闘争を引き起こしたとなれば、「スパイダーマン」というキャラクターも、なかなかに厄介な存在ではある。

 筆者はすべてではないにしろ、アメコミヒーローのアニメ化作品を愛好している方なので、この映画も劇場で観たかったと、BDを見ていてつくづく思ったのだが、かなわなかった。今回BDによる初視聴での感想を、残しておこうと思う。

<可能性の世界線>
 この物語の主人公はブルックリンに住む高校生マイケル・モラレスだ。劇中の説明によれば、放射能によって突然変異したクモに噛まれることで、スパイダーマンとなる力を得たマイケルだが、その力の使い方も、戦いに臨む勇気もない。だが目の前で本家スパイダーマンであるピーター・パーカーの死を目撃してしまう。その時の事件がきっかけで、次元の扉が開き、別の世界で活躍するスパイダーマンがマイケルの前に現れる。彼らを元の世界に戻すため、死んだピーター・パーカーとの約束を守るため、勇気を振り絞って自分の成すべきことを失意の中から探し当てたマイケルは、自らの意志でスパイダーマンとして戦いの場に臨む。

 マルチバースが適用された物語は、日本ではすでに映画「ウルトラマンゼロTHE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」で登場し、その後の平成ウルトラシリーズのありかたを方向づけたので、いまさら説明するまでもないだろう。マルチバース、多元宇宙。言い方はなんでもいいが、この世界は様々な平行世界の一つであり、世界は単一ではないという考え方である。SFではなく理論物理学の話なので、その詳細を門外漢である筆者が語ることはできない(笑)。だがこの理論によって、現象面としてとらえようのない事柄を語る上で依存する理論であり、語り口は哲学からSFやTRPG、はては宗教学にまで登場する。

 そんなマルチバースはこの物語においてどんな意味を持つのか。先述の「ウルトラマンゼロTHE MOVIE」であれば、ゼロが別次元に移動することによって、かつてウルトラマンたちが地球で活躍した世界とは異なる世界で活躍し、その世界でヒーローになることで、ウルトラ兄弟に依存しないウルトラマンゼロの戦いを描いて見せた。ウルトラ兄弟のいるゆりかごから外の世界に歩み出し、新たな仲間を得ることで別世界を救うゼロの物語は、通常のウルトラTVシリーズ分のエピソードを消化しないで、ウルトラマンゼロというキャラクターを、かつてのウルトラ兄弟並の歴戦の戦士として描くことに成功した。この1作でゼロはウルトラシリーズの看板を背負うキャラクターの成長したのだ。

 では翻って本作ではどうか? マイケル・モラレスという少年がスパイダーマンとして成長していく物語としてとらえるのは至極簡単だ。MCUの「スパイダーマン ホームカミング」やかつてのスパイダーマン映画、特にヴィジュアル面で似た印象を残すトビー・マグワイヤの「スパイダーマン」を見れば、「スパイダーマン」という作品のスタートには、欠かせない要素として登場するシチュエーションである。もう一つの意味合いを探ると、マイケル・モラレスという少年自身にヒントがある。違和感を感じながらも、両親、とくに父親の期待を背負って、高校進学を機に全寮制の高校へと通うマイケルは、ごくありふれた少年である。特殊なクモに噛まれてスパイダーセンスが発揮されたとしても、スパイダーマンとして活動する理由がなく、序盤の彼には特にその勇気も決断もない。とすれば、彼はそれこそ何にでもなれたのである。だが彼はいくつかの出会いと別れ、そして勇気を与えてくれる経験を重ねて、この世界のスパイダーマンとして心の成長を見せるのである。そう、何にでもなれた、のである。事件の発端となる別次元の扉が開いたせいで、そこから現れたのは別世界で活躍するスパイダーマンたちであったが、マルチバースとさまざまな世界で活躍する色とりどりのスパイダーマンとの出会いは、まさにマイケルの「何にでもなれる」可能性そのものだ。つまり本作におけるマルチバースは、マイケルの可能性に他ならない。そして何ゆえにマイケルがスパイダーマンとして活躍する道を選んだのかは、本作を見てのお楽しみである。

<シリーズに通底すること>
 この作品がヴィジュアル的にも物語的にも荒唐無稽にすぎることは、本作を評価するのに重要なポイントではあるが、「スパイダーマン」としてはどうだろうか? かつて本ブログでご紹介した「ニンジャバットマン」も、タイムトラベルによって日本の戦国時代へと迷い込んだバットマンとヴィランたちが、画面狭しと暴れまわる痛快娯楽作であったが、どちらも通底するのは、いつもの世界では収まりきらないために、別世界を設定したことで、ゴッサムを飛び出したバットマンは戦う理由を失うかと思いきや、元の世界に戻る選択肢を顧みずに、歴史を正しく戻すためにヴィランたちと戦い続けるという話だった。ゴッサムを守るという、バットマンになくてはならない戦う理由を外してなお、バットマンは戦い続けられるのかという問いかけには、あまり触れないでおくという作劇が、本作を痛快娯楽作にしていると思えるが、「スパイダーバース」は「スパイダーマン」足りえただろうか?

 「大いなる力には、大いなる責任が伴う」。この言葉は本家「スパイダーマン」に登場する、物語当初にピーター・パーカーの伯父であるベンの言葉であり、「スパイダーマン」が戦い続ける動機づけとなっている重要タームである。ベンが強盗によって殺され、その強盗を見逃してしまったピーターは、全てを救えないことを、ベンの死から知り、そしてこの言葉によっていかなる時でも責任を放棄しない道を選んだからこそ、スパイダーマンとして戦い続けている。ところが本作では、この言葉が呪詛となる。マイケルを尻込みさせ、別世界からきたくたびれたピーターはこの言葉を嫌い、グウェンはこの言葉を聞いて心底嫌そうな顔をする。どうやらマルチバースのどの世界のスパイダーマンも、この言葉に突き動かされてスパイダーマンとして活躍しているようだ。本家「スパイダーマン」の指針は、この作品にも共通しているばかりでなく、マルチバースのどのスパイダーマンにも通底していると考えてよさそうだ。

 もう一点、見逃してはならないのは、マルチバースのスパイダーマンたちが、同様に大切な人を失った喪失感を抱えていることだ。愛する妻であったり、叔父であったり、父親代わりであったり、またはその世界でかつて活躍していたスパイダーマンであったり。この喪失感は世界を別にしながらも連帯感を生み、スパイダーマンたちは互いのピンチに手を差し伸べ合い、戦いの場に臨むのである。彼らがこれだけの人数が集まりながらも、反目せずに協力し合えるのは、この喪失感と連帯感ゆえなのだ。そしてまたこの喪失感もまた本家に通底している事柄でもある。その意味で「スパイダーバース」は誠に「スパイダーマン」であることは疑いえない。あまりに番外編が過ぎる「ニンジャバットマン」とは一線を画すといっていい。

 「コミックから飛び出たような」あるいは「コミックの中を歩いているような」雰囲気漂うヴィジュアルも、イマドキっぽい音楽も、この作品を語る上で外せない技術的要素はいくらでもある。そうした要素も本作の感動を伝える本質的な事項ではあるが、物語部分で触れられないのは実に惜しいと思い、こんな駄文を書いてみました。物語のエンディング後に、これまた別世界、未来のスパイダーマンが登場し、新たな事件の始まりを予感させている。そんな“引き”にも楽しみがある作品です。願わくば、コミック「スパイダーバース」でも登場した、日本ではおなじみの東映版「スパイダーマン」に登場したレオパルドンが、次回作で登場することを、拙に願っております。(それにしても、最近アメコミ映画しかみてないなあw)
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