それは「鏡花水月」~必殺シリーズ雑感~

 子供の頃に両親や祖父母などと一緒にテレビを見ると、時代劇をよく見ていたことはないだろうか? いまだに放送が続いている「水戸黄門」や、お白州で桜吹雪をちらす「遠山の金さん」。NHKの大河ドラマだって時代劇が主流だし、最近では「逃れ者おりん」なんて作品も注目された。また再放送に恵まれているのも時代劇の特徴だろう。その気になればいつでも見ることができるってのは、時代劇が持つ普遍性だと思う。その普遍性は同時に、時流に逆らわず、時代をうまく取り込むことで勝ち取ったものだろう。だが同時に、時代を相手に真っ向勝負を挑んだ時代劇がある。それが必殺シリーズだ。

 1972年9月に「必殺仕掛人」でスタートしたシリーズは、1987年9月に「必殺剣劇人」で一端幕を下ろすまで、都合15年にわたりシリーズを継続。その後劇場用作品やテレビスペシャルなどを断続的に制作されている。2000年代になると、テレビでの放映がなくなるが、どっこい舞台化されている。そして2007年のテレビスペシャルで復活し、先頃放映された「必殺仕事人2009」で、テレビ版としても復活した。
 この必殺シリーズ、地方にいくと意外に再放送にであう確率が高い。また本放送とは異なる地方放映版というのも存在するため、再放送が絶えて久しい東京地区では、ファン垂涎の仕様となっている。

 私は必殺シリーズが好きである。特に後期必殺を愛しているのだが、前期必殺をけなしているものではない。それは単に見始めたのが「仕事人4」からであるからだ。それは三田村邦彦氏演ずる「秀」と中条きよし氏演じる「勇次」の2枚看板による、空前の必殺ブームの頃であり、「必殺!」という劇場用映画が製作されたときだ。だから見慣れたのがこの作品であり、それ以前のシリーズを見ていなかったからだ。当時はまだビデオが普及し始めたころであり、旧シリーズを見ることはなかなか叶わなかった時代である。それでも旧来からのファンによれば、当時の必殺よりも、旧シリーズのほうが良かったなどの話は、耳にタコができるほど聞いていた。しかし旧作を見ることができない私にとっては、判断基準がないため、比較できない。

 そんな状況が一変するのが、大学で6年暮らした高知県にて、再放送が始まったことだった。「暗闇仕留人」「必殺仕置屋稼業」を初視聴。また「必殺仕置人」の1話と最終話は、ビデオになってレンタルできるようになる。おかげさまで勉強になりました。当然ダメと言われていた後期シリーズとの比較もできるようになってきた。その中で私が感じたのは、「必殺シリーズ」は良くも悪くも「時代」に支配された作品群であったことだ。

 「必殺仕掛人」は、原作に池波正太郎氏を迎えて、ストイックさを持ったアウトローが活躍する時代劇であった。それは当時の対抗馬であった「木枯らし紋次郎」の影響が大きいのだろう。しかしシリーズ2作目の「必殺仕置人」では、むしろ市井の人々に焦点を当てている。闇の仕置師たちも市井の人々であるから、世界の末端にいる人が主役であった。そのため洗練されたストイックさは消え、逆に泥臭さや人間としての生々しい本性がぶつかりあう「江戸」という町の、活気を活写した映像が作られる。反対に外連味を増し、陰影に重きをおいた「殺し」の映像の美意識は、この作品以降で完全に開花する。この2項対立の映像表現の独特さが、前期必殺シリーズの持ち味となる。それは高度経済成長期にある、日本の風景が持つ二面性を映像化したようなものだ。それゆえ必殺は時代や世相を映す作品となる。

 視聴率的にも低迷し始めると、時代がダイレクトに作品そのものに反映される。特に「必殺仕業人」の窮屈そうな場面作りは、省エネだとかオイルショックだとか、高度経済成長を経て、じり貧の状態に陥った日本の世相にあわせている。無精髭すらはやした藤田まこと氏演じる中村主水の姿は、どう考えても社会の軋轢にもまれるサラリーマンでしかない。
 
 そうした時代をとりこみ、自在に姿を変えていく作品作りは、いつしか行き詰まってくる。通常「新必殺仕置人」の人気のボルテージをもって、前期必殺とする。その後に制作された「飛べ!必殺うらごろし」で大こけしたスタッフは、シリーズの根幹を見直し、起死回生の一打を放つ。それが基本に立ち返った「必殺仕事人」である。この作品に初登場した若い仕事人の「秀」が人気を博し、シリーズは完全に息を吹き返す。「仕事人」シリーズと、13話1クールのシリーズを交互に放映する形態で、やはり時代をとりこんだストーリーと、中村家で主水が嫁と姑にいびられるコントで人気は上昇する。そして「新仕事人」に登場した「勇次」の大人の雰囲気を称えた流し目で、さらに女性ファンがつき、完全なブームとなったのである。

 さて前期シリーズと後期シリーズを比較して気づくことは、まず画面から放たれる熱量に差があることだ。それは撮影方法にも現れている。たとえば前期シリーズでは、大勢の人々が大騒ぎしたり、殺されたりする大きなシーンに、キャメラマンがハンディカメラでつっこんでいくなどの、現在の位置を固定されたカメラでは考えられない、撮影を行っている。それはなんとかしてギラギラとした熱量のある、迫力ある画面をつくろうと努力奮闘するスタッフの姿である。当然危険が伴う撮影であるのだが、そのできあがりの迫力たるや、固定カメラで遠方から撮影された画像の比ではない。
 また前期必殺では、世相を個々の作品のカラーとするべく、作品の背景に託したのだが、後期必殺では、個々のストーリーの脚本に、世相が反映されている。ええと、わかりづらいかもしれないけど、前期では先の「必殺仕業人」のように、作品の雰囲気に世相が込められているのだが、後期必殺では、「エリマキトカゲ」や「ルービックキューブ」など、その時代の流行が、個々の1話のシナリオにのみ反映されている。端的に言えば、世相の捉え方がとても短絡的なのだ。おそらく後期必殺を否定しているファンは、このあたりを指摘したいんだろう。よく前期はハードで後期はチャラけているとか、簡単にいう輩がいるが、前期にだってちゃらけた話はいくらでもあるし、後期にだってハードな展開を見せる話はある。それはすべて時代をどん欲に取り込もうとした結果であり、方法論の違いでもある。善し悪しではないだろう。

 だがそうしたどん欲さは、最終的に裏目に出る。単に視聴率の低迷だけではなかろうが、1987年に一端その幕をおろすことになる。それは取り込み続けた「時代」に、はじかれた結果だとは言えないだろうか? 時代劇はもう古い、当時の人々には「トレンディ・ドラマ」が喜ばれた。そんな時代背景に、「必殺」は裏切られたのだ。その後も断続的に続けられるテレビスペシャルや「~激突」、そしてついに中村主水に死が訪れる・・・とかいいながら、ちゃっかり復活する。だが時代劇である本質、必殺としての外連味が、必殺に「普遍性」をもたらす。それをこそ強みであると、復活してみせる。それが「~2007」そして「2009」に結実したと思いたい。

 この「2009」で特筆すべきは、東山紀之氏が演じた「渡辺小五郎」である。裏と表の顔については、中村主水のオマージュであるが、仕事に挑む時の小五郎さんは、本当に怖い。鬼気迫る表情で圧倒的な怒りのパワーを胸に秘め、仕事を遂行する。そしてそのために仲間を平然と犠牲にできるのではと思わせるほどの残酷さすら併せ持つ。それゆえに中村家と渡辺家のほのぼのコントが、本当にほっとさせてくれた。それほど息が詰まるかとおもうほどの緊迫感でせまるのだ。今回の「2009」は視聴率好調により放送期間も延長したし、若い仕事人の死と、そこから再生する仕事人チームというドラマも見ることができた。尚かつ新人の加入や、あわやチーム崩壊寸前のところまで追い詰められた。ドラマ的には非常に見応えがあった。

 だからといって前期必殺のようなギラギラした感じは、やはりしないのだ。それはやはり30年にもわたるシリーズの継続による、スタッフの熟達によるものだと理解したい。だっていまだに必殺のテレビクルーは、女優を美しく撮影することについては定評があるのだ。そして必殺ファンだったTOKIO松岡が必殺に出演するという、いわばファン代表の夢のようなことになっているのだ。この時間の流れを否定しようがないではないか。だからいまさら前期必殺のような作品を望むということは、すでに手に入らないものを欲しがるのに似ている気がする。それはまさに「鏡花水月」だといえる。
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初めまして☆
「第4のペロリンガ」さんのブログと相互リンクさせて頂いている
シャオティエンと申します。

私は、オンラインクイズゲームのプレイ記を中心にブログを書いてますが、
プレイしないとブログに多くの空白が出てしまいます。

そこで、問題文に登場した自分好みのネタ(昭和の特撮、アニメ、ドラマなど)
から少しずつ記事を書き始めました。

今準備しているのは、「必殺バトン」の回答です。12月中にはアップできる(?)
予定ですので、コメントなど頂けたら嬉しいです☆☆
因みに、私がリアルタイムで観始まったのは「仕切人」です。小野寺昭以外は
必殺の常連俳優が勢ぞろいした「怪獣総進撃」みたいな作品だったような?
「ルービックキューブ」の話は「ゴリムリン」でしたね。私が覚えてるのでは
「ゲートボール」が「関所鞠つき」というような名称で登場した話もあったはずです??

リンクフリーということなので、リンクさせて頂きます。
今後とも宜しくお願いします。

ありがとうございます!

シャオティエンさま
 ようこそおいでくださいました。こちらこそよろしくお願いいたします。
 リンクさせていただきました。

 なるほど「必殺バトン」、作品タイトルは「ひ」「え」「と」「た」「し」ぐらいしかありませんので、無理ですけど。闇の仕事師でバトンすると、空欄がこわいですwww

 「仕切人」は私も印象の強い作品です。リアルタイムで見た最初の「非主水作品」でもあり、連動で発売されていた音楽集のLPレコードの音質と奥行きに、びっくりしたのが忘れられません。
 「怪獣総進撃」とは見事なご指摘で、小野寺さんとスキゾーくん以外は、ほとんどがそれ以前の作品に登場した役者さんですから。それだけに全員そろっての仕切が、数少ないのが残念でした。みなさん舞台を抱えてらして、お忙しい方々でしたから。

 そちらのブログにもコメント差し上げたいと存じます。今後ともよろしくお願いいたします。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

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