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劇場版「スケバン刑事」~伝説の少女の怒りと情熱~

このところ昔の記事を読み返して、続きを書くつもりでほったらかしている作品を思い出す日々だ。TV版「スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説」を当ブログで扱ったのは2014年5月のこと。すぐに本作を扱うつもりだったのだが、どうしても扱いたいネタを優先してしまい、すっかり忘れていた。逆になんでいまさらこの作品かと問われれば、理由なんかない。ここのところ80年代作品の視聴が続いており、その延長線上で思い出した作品だっただけで、大した理由なんかない。この作品がどんな映画だったかについては、この後じっくりと語るが、1985年当時、斉藤由貴主演でスタートしたTV版「スケバン刑事」シリーズ3作品と、劇場版2作品が、どれほどの熱量をもって作られたか、そしてどれほどの愛着と反感をもって迎えられたかを、本作を語ることによって説明してみたいと思っている。DVDを見ながら、当時を思い出し、熱量だけなら他ブログにも負けないつもりの筆者の力量で、どこまでせまれるのか?

<作品解説>
 本作の元となっているTV版「スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説」は、前作「スケバン刑事」の後を受けて、1985年11月から放送を開始した。人気に火がつき始めていたアイドル・南野陽子を主演とし、二代目スケバン刑事・麻宮サキとして、約1年の放送期間を終えて、次作「~III 少女忍法帖伝奇」へとバトンを渡したのが1986年10月のことである。「~III」が1クール(13話)を消化し、三代目スケバン刑事である風間唯が、2人の姉と共に己が宿命を知ったころ、満を持して劇場公開となったのが本作「スケバン刑事」である。1986年2月14日のことだ。人気絶頂のまま終了した前作「~II」の後日談であり、あの少女戦士たちが取り戻したはずの日常を投げ出して、再び戦場へと戻るには、どんなドラマがあったのか?

 深夜の海を必死に泳ぐ2人の影。和夫と喜久男の2人だ。寒さをこらえて港へと辿り着いたものの、喜久男が足に怪我を負ってしまう。ともにいけないと知った喜久雄は、妹への形見の人形を和夫に渡し、二手に分かれて逃げることにする。和夫はすぐに走り出すが、喜久男は電話ボックスに駆け込み、妹・めぐみへと電話を入れる。だがそこに何者かが現れ、喜久男が入った電話ボックスは荒々しく破壊される、電話はこと切れる。

 梁山高校の図書室にて受験勉強に励んでいた早乙女志織こと五代陽子こと元二代目スケバン刑事であった麻宮サキは、ふと思い出したように、かつての仲間である矢島雪乃からの手紙を読んでいた。雪乃は留学の準備をしており、旅立つ前にサキやもう一人の仲間であるビー玉のお京こと中村京子との再会を望んでいた。最愛の仲間からの手紙に懐かしさがこみ上げるサキ。街に出かけるサキは、平和な日々、戦いのない日々に満足し、思うさま青春を謳歌していた、はずだった。サキをけたおしてバスに乗り込んだのは、あの和夫だ。ファイルを落とした和夫にファイルを返すため、バスに乗り込むサキ。だが和夫を囲む二人の男性教師に不信感を持ったサキは、和夫と一緒にバスから逃げ出そうとするも、移動するバスの中で二人の教師達と対決することになる。街中でたまさか購入していたヨーヨーを武器に、男達を制するサキであったが、運転手が一人の教師に射殺されたため、バスは大型のショベルカーに衝突! サキは気を失ってしまう。サキが目覚めた時、サキは電流による拷問を受けており、和夫もまた盗み出した写真のありかを詰問されていた。電流に堪える強靭な体と精神力を有するサキを見て、サキを仲間に誘う総髪の男。すげなく断るサキは、さらなる拷問を受ける。牢に幽閉されたサキは和夫とともに隙を見て逃げ出すことに成功する。逃げのびた先で和夫が逃げだした理由を聞くサキは、「地獄城」と呼ばれた三晃学園の実態を知る。表向きは全国の高校が扱い兼ねた学生たちを広く受け入れる私立高校であるが、その実態は校長である服部に従属させ、学生たちに厳しい軍事教練を強いる学校だという。軍事教練の理由は知る由もないが、和夫は仲間の学生が、教練中に何人も死んでいったのを間近に見ていたという。和夫と喜久男は、三晃学園の非道さを広く知らしめることで、仲間たちを助けようとしていたのだ。

やつらが捜していたと思しき写真を手に、かつての上司である西脇と再会するサキは、そのまま暗闇指令の元へと写真を持ち込むも、暗闇指令はやんわりとサキを追い返してしまう。話に乗ってこない大人たちに業を煮やしたサキ。だが暗闇指令は、すぐにこの写真の重要性に気がついていた。そこに映っていた男こそ、5年前の国防省クーデターの首謀者である北時宗だった。暗闇指令は推理する。クーデターが暗闇指令の機関によって失敗を余儀なくされた時、北は自爆して果てたはずだった。だが北はその後も顔を変えて生き抜いており、三晃学園を隠れ蓑にして再び国家転覆を狙っているのでは? サキたちを止めようとする西脇だったが、暗闇指令は今再びサキたち果敢な挑戦に託すしかない。

仲間を求めてサキはかつての戦友・ビー玉のお京を訪ねる。退屈していたお京は、すぐにサキの話に飛びつくが、三晃学園と戦うのではなく、和夫をまず四国へと逃がすという。かつての熱量ではない逃げ腰のサキのやり方に、反感を覚えたお京。だがお京の熱に突き動かされて、サキはあらためて三晃学園に乗り込んで、仲間たちと共に生徒たちを救い出すことを決意する。和夫は喜久男の妹であるめぐみに会いにゆく。喜久男から託された人形をめぐみに渡す和夫は、喜久男の救出を約束するも、めぐみは自分にも手伝わせろといって引かない。やむなくサキはめぐみを仲間にする。

梁山連合の仲間であった房総の平田たい子と再会するため、とある山間の石切り場へと向かうサキたち。だがそこに待ち受けていたのは三晃学園が送り込んできたヘリコプターによる攻撃だ。逃げ回るサキたちを尻目に、敢然とヘリに立ちはだかったのは、三代目サキこと風間唯! 唯はサキへ超合金製ヨーヨーを渡すために、西脇から頼まれたという。砲撃に倒れたたい子を救うため、砲撃の前に身をさらした和夫は、凶弾に倒れる。無茶をする唯はヘリのスキッドに自分のヨーヨーを絡めて、身動きが取れない。唯の持ち込んだ風呂敷からヨーヨーを取り出すと、サキはヘリをにらみつけ、砲撃をたじろぎもせず受け流してヨーヨー一閃! サキのヨーヨーの直撃を受けたヘリは、空中で爆発炎上し、墜落する。和夫の死に悲しみに暮れるサキ。イギリス留学のため飛行場へと向かう矢島雪乃の車の前に、雨に濡れたお京が現れる。たい子らの助けも借りられず、仲間の手を欲してのお京の願いに、雪乃は留学を取りやめてサキへの助力を誓う。

<サキが戦場に戻るまで>
 この物語の脚本の成立に当たり、2つの原案があったという。1つは映画「幌馬車」のように、主人公たちが移動しながら次々と襲い来る敵と戦う話であり、もう一つは映画「ナバロンの要塞」のように、難攻不落と言われた孤島を、主人公たちが攻め落とすというお話だ。「幌馬車」の方は、「~III」のテレビスペシャルとして放送された作品として結実している。つまり本作の要諦は、「ナバロンの要塞」的なお話となっている。もちろんサキが三晃学園もとい地獄城を攻め落とすにあたり、その理由がきちんと示されないと、お話が進まない。その理由を説明し、彼女が戦場へと舞い戻るために、この物語のほぼ頭3分の1が費やされている。

 物語開巻当初は、完全に普通の女子高校生へと自身を埋没させていたサキであったが、和夫との突然の出会いによって、平穏な暮らしの背後に潜む悪事を敏感に感じ取っている。サキが和夫と出会ったバスの中でのシーンを見ると、和夫と和夫を追ってきた教師たちの間に流れる不協和音を敏感に察知し、和夫にバスを降りることを促すシーンがそれだ。平穏を装う教師たちの言葉はあくまで他者に対して丁寧だが、和夫の態度とファイルのやり取りから、きな臭い匂いを感じ取っているサキ。この後で馬脚を現した教師たちとバトルになるのだが、バスに乗る直前に偶然買ったヨーヨー(ヨーヨー売りのおじさんは、原作者の故・和田慎二先生だ!)では、教師たちを撃退できない。格闘ではなくあくまで消火器に頼る戦い方をしたのは、相手の手の内がまだサキに見えていなかったからだ。それが悪辣な大人のやり方であると認識したサキは、拷問を耐えた後に脱出を図ることになる。つまりサキがあまりに手練手管に長けているとバレてしまえば、こうして脱出することもできなかっただろう。サキは手の内をさらさずに、脱出する機会をうかがうために、出来る限り最小限の動きで敵に対応している。この時点ではまだ降りかかる火の粉を払っていただけで、自身が戦う決意をしているわけでもない。

次にサキは和夫の話と写真を持って、かつての上司である暗闇指令のもとへとねじ込んでいく。この時点でもまだサキは自分で地獄城へ乗り込む決意もしていなければ、できるなら大人たちに頼ることで、自身が戦うことは避けているのだ。それを翻させたのはお京の言葉と和夫の死であった。お京はかつてのサキなら前のめりに事件に首を突っ込んでいくのだったが、スケバン刑事を解任され、桜の代紋を剥奪されてしまって、情けなくなったというのだ。だがお京は間違っている。正しく日本の中で社会生活を営むのであれば、女子高校生が首を突っ込んでいい話ではない。サキのこれまでの逡巡は当然であり、それもまた大人の判断であろう。だがそれでは物語が弾まないw お京に言われてサキはひとり独白するわけだが、普通の女子高校生としての生活が、怒りを忘れさせたといっている。この「怒り」は、サキの動機でもあり、かつての信楽老との戦いにおいても、鉄仮面をつけなければ生活できない運命を自分に強いた男に対して、怒りをもって復讐し、自身の出生の秘密を解き明かすことこそ、TVシリーズにおける2代目サキのモティベーションであった。この「怒り」を忘れるには、あの厳しい戦いの後の数か月は、決して長くも短くもない。おそらくサキはそんな普通の日常に埋没することを自分に課していただろうし、それこそが戦いの後に得たものの実態だったから、サキ自身は容易に手放すことはできないはずだ。それを手放す時が来たのである。

そしてダメ押しは和夫の死である。劇中牢に囚われている際に、サキは和夫の顔を間近に見て大いに照れているシーンがあるが、それまで年の離れたおじさんや老人、どう考えてもアウトローな若者たちを見慣れたサキの目には、和夫の年頃らしい端正かつごく普通にかっこいい男子学生の顔は、けっして見慣れた顔ではなかったのだろう。だがそれくらいでサキが和夫に一目ぼれしたかといえば、それは否であろう。知り合った時点ですでにサキの庇護下であった和夫は、サキにとって庇護欲を掻き立てる存在であり、その母性こそが和夫の庇護を正当化させる感情だったろう。和夫を失ってサキは、目的を失ったのではなく、むしろ和夫の無念を晴らしてやりたい。そしてまた和夫を失ったことで、敵である三晃学園こと地獄城への怒りを募らせる。怒りへの回帰と和夫の死。この二つの要素がサキを地獄へといざなうのである。

かつて発売されていた「ビークラブ・スペシャル5 スケバン刑事研究」(バンダイ,1987)に掲載されている、本作のプロデューサーである岡正氏の寄稿によれば、TVシリーズの製作に当たり、和田慎二氏の漫画作品を原作としながら、いまひとつ原作として念頭においていたのが、大江健三郎氏による小説「日常生活の冒険」だったという。主人公の青年が日常生活の中でさまざまな冒険的な行動をしながら、どの冒険も成し遂げることができず、最後には主人公は自殺してしまうという内容であり、この主人公の青年を負の冒険者とするならば、麻宮サキは正の冒険者としたいと考えていたという。また同書に掲載されている中島紳介氏によってまとめられた岡正氏のインタビューによれば、TV版放送当時の批評として、本作の世界観や状況設定を表して「南蛮屋敷」という言葉で表現されたという。「南蛮屋敷」とは時代劇における悪事や悪意の巣窟であり、これが画面に登場すれば、視聴者は何事か悪事を企んでいる者がいることをすぐに理解できる仕掛けである。時代劇を見るものにとっては共通認識として認知されているものだから、余計な情報を重ねることなく、状況が飲み込めてしまうのだ。TV版「スケバン刑事II」は、日常の中の非日常を表現した特撮アクションドラマであったわけだが、数多く登場したサキの敵キャラが、時代劇的なモチーフを有していることは、見ていればすぐにわかる。そうしたキャラクターや西脇とサキの会話、雪乃やお京とサキの関係性や台詞の成り立ちに至るまで、そうした「南蛮屋敷」的な小仕掛けが成立しており、ドラマとしての嘘を重ねることなく、視聴者は理解していたという。しかもその理解は、作り手送り手である岡正氏の予想を超えていたというのだ。もちろん、TV版スケバン刑事シリーズが原作漫画ファンから総スカンをくらったことも理解しているが、それでも本作の持つ荒唐無稽さ、日常の中の非日常の面白さ、アクションドラマとして充実した楽しさは伝わっていたはずなのだ。本映画においてもまったく同じ仕掛けが施されており、「南蛮屋敷」としての地獄城という舞台、日常にいたはずのサキを非日常へと舞い戻らせるきっかけとしての和夫の存在感など、TVシリーズ同様にきちんと1本の映画の中に盛り込まれている。

<地獄城、突入!>
 海に臨む矢島家の別荘へと身を隠した少女たち。夕餉の準備をしながら、安らかなひと時ではあるが、5人は地獄城へ突入する作戦を話し合う。作戦立案者である雪乃によれば、島の割れ目より侵入し、サキとめぐみは学生たちを開放し、唯とお京が見張り台の銃器を押さえ、島の電源ケーブルを雪乃が切断し、逃走経路を確保。ボートを使って学生たちを逃がすという算段だ。問題は敵との接触と電源の回復タイミングであり、予備電源と切り替わるまでの数分が勝負であるという。作戦決行は明日の夜。それぞれに秘めた思いを胸に、夕日を見つめる5人。その夜、寝ているサキは車の近づく音で目が覚める。外に出てみると、そこにいたのは西脇だ。西脇は持ってきたアタッシュケースの中から、新開発の新超密度合金製のヨーヨーを出して説明する。4倍の重量と16倍の破壊力。だがその能力故に使いすぎれば使用者の腕をも破壊するという。西脇はこれをサキに託して、「生きて帰れ」といって去っていく。少女たちだけを死地へと向かわせる我が身を悔やむ西脇に、暗闇指令が見せた書類は、地下整形医から入手した北時宗の新しい顔写真。それは三晃学園の校長・服部の顔であった。サキたちを止めようとする西脇だったが、暗闇指令にとって他に手はなく、娘たちに託すしかないと。

 地獄城のある島の桟橋へとボートを近づける5人。脱出用のボートを隠し、ライトをかいくぐって崖の割れ目へと入り込む。準備を整える5人は時間を合わせ、生きて還ることを誓い合う。その頃三晃学園では10名の成績優秀者を卒業生として讃えていた。そして卒業生を前に、自身の企みを聞かせる服部は、国家の中枢にいる援助者の下で、テロとクーデターによって首都に戒厳令を出し、国家転覆を計画しているという。地獄城の奥深くへと侵入する5人は、3方に分かれて行動を開始する。だがその侵入行はすでに服部の手の中にあったのだ。見張り台の銃座で襲われるお京と唯。電源パネルで捕えられる雪乃。そして今またサキも、牢に潜んでいた兵によって押さえつけられるサキ。内通者はめぐみだったのだ。兄を助けたい一心でサキたちの行動を逐一報告していたのだ。サキは他の3人が捉えられている場所へと突き出され、服部と再会する。服部のやり方はサキとは相いれない。サキの目を見て服部は、サキの始末を10人の卒業生たちに命令する。だが服部の被害者にすぎない卒業生たちを、サキは攻撃できない。サキは服部を安全な場所から他人の犠牲を要求する卑怯者と糾弾する。この声に服部は自らサキを始末することにする。サキはフレイル型のモーニングスターを与えられて服部との対決を強いられるも、攻撃を跳ね返す服部の強靭さにたじろぎ、徐々に追いつめられていく。そしてついに力尽きて倒れたサキは、服部の命によってある処置を施されることになる。その処置が始まる刹那、処置室での注射からのがれようとするサキは、めぐみによって助けられる。サキはめぐみの兄・喜久雄が、ロボトミー手術によって廃人となってしまった事実を知る。サキは西脇から与えられた新超密度合金製のヨーヨーを装備し、仲間の救出へと立ち向かう。反撃の時、来たる!

<この作品のキモの話>
 この作品、前述の通り、受け手の熱量と共に作り手の熱量が大きな割合を占める作品で、この熱量がなければ、この作品はまともに正視すらできない作品だろう。その熱量の発露は、いたるところで感じられるのだが、最初に現れるのが、地獄城へと突入する前日に、雪乃の別荘で夕日を見つめる5人のシーンだ。実際に話しているのはサキと雪乃とお京の3人であり、かつてのトリオが思い出話にふけるでもなく、これから成し遂げようとする作戦を、メンタルの面で押し支える大事なシーンだ。特にサキが言う、「こんな時代にムキになって、おかしい」といい、それに雪乃が返答する「今が平和な時代というのは、見せかけだ」というくだりは、この物語がフィクションでありながら、現実社会における不穏当な事件の数々をメタフィクション的に言い当てている言葉であるから、このあたりは脚本家および作り手が込めたメッセージとも受け取れる。あの当時の軽薄な風潮に対し、何をか楔を打ち込みたいという、作り手の願いがモロに出ている台詞だろうし、こういうセリフを言わせるあたりを本作の受け手がどう受け取るかを、如実にわかっている感じがして、妙にいい具合だ。そうこんな熱くて若さと情熱がほとばしっているような作品が見たい。この作品が学園アクションドラマの枠組みを超えて、特撮アクション作品へと気持ちよ~くダイブしてしまった証しがここにある。

 一方、本作の敵である北時宗あらため服部にも、どこか本音が表れているキャラクターだ。北時宗の名前が、2・26事件の理論的指導者と目された「北一輝」からとられていることは明白であり、本作における北時宗の行動は、もし北一輝が刑死しておらず、地下へと逃げ延びて事件のようなクーデターを再び起こそうとしていたら?というIFになっていると考えると、わかりやすいかもしれない。とはいえここはあくまでもフィクションであるし、特撮アクション作品である以上、わかりやすい悪役然とした事情が必要となる。それが自身の学校の生徒を使ったテロとクーデター計画なのだ。国家転覆によって、その後のビジョンが明確に見えない辺りは、他の世界制服を企む悪の組織となんら変わらないが、服部が「北時宗」という隠し名前とともに、「北一輝」の影がちらつくことで、服部はどことなく血肉が通うキャラクターになっている気がする。同じことが「機動警察パトレイバー」初期OVA「二課のいちばん長い日」に登場する「甲斐」にも言える。

 この服部のキャラクターを特徴づけるのは、地下医師によって整形して顔を変えているだけにとどまらず、全身の機械化によるサイボーグのようになっていることだ。ラストシーンで登場する顔の皮膚が剥げ落ちたシーンでは、かの名作「ターミネーター」のT-800を思い出させる。デザインは出渕裕氏であり、当時雑誌「B-CLUB」などで紹介されたデザイン画には、完成した映像のようなものの他、大きなフードを全身に被ったようなデザインもあり、よりまがまがしいものもあった。このデザイン画の一部は、劇場公開時のポスターなどにも背景にうっすら映り込んでおり、劇中のような総髪ではなく長髪になっている。

<勝利の凱歌、そして伝説へ>
 新ヨーヨーを引っ提げ、3人が幽閉されている牢へと歩みを進めるサキは、見張りの兵をなぎ倒し、3人を開放。3分後に再度作戦を決行することを決め、行動を開始する4人。お京と唯は見張り台を攻略。雪乃も見張り兵を排除して再び電源パネルへと近づく。そしてサキは生徒たちの牢を開放する。だが希望を失った生徒たちはサキの声に耳を貸さずに牢を出ようとしない。そこに現れたのは、廃人となった兄を連れためぐみだ。めぐみは地獄城の連中が、結局は皆をこうしたいのだというと、うなだれた生徒たちも逃げ出そうとする。雪乃が電源ケーブルを切断。予備電源が回復するまでに、生徒たちに電気が張り巡らされた塀を越えさせなければならない。学園側の抵抗を排除しながらも、生徒たちを逃がす5人。間一髪でお京、雪乃、唯は脱出に成功。めぐみは一人地獄城へと戻り、武器庫を爆破する。これによって火災と崩壊が始まる地獄城。だがサキは服部を対決するために、再び地獄城へと舞い戻る。海へと逃げ出す生徒たちはボートへと乗り移る。

 服部を探すサキは、卒業生たちとの対決を余儀なくされる。苦渋の選択でヨーヨーを繰り出し、卒業生たちをなぎ倒すサキ。倒した卒業生たちにわびるサキ。だがそこに服部が現れる。またもすべてを失い野望を挫かれた服部と、初めて服部という人間を憎むサキ。ヨーヨーの代紋を見せつけ、服部打倒を誓うサキ。対決の時迫る! その時服部は右腕のまがまがしい義手を光らせ、サキに襲い掛かる。義手の爪がサキを引き裂こうと襲い掛かる中、義手に仕込んだ矢を受けたのは、再度サキを助けためぐみだった。これまでに服部の犠牲となった人々の顔を思い浮かべるサキ。燃え盛る炎の中、服部を追うサキは2発目の矢を受けてなお、服部の前に立ち続ける。そして服部の体の正体を知ることになる。服部の体は金属で覆われており、半ばサイボーグ化していたのである。外側からの攻撃で服部を倒すことが無理だと悟ったサキは、ヨーヨーを服部の足に絡ませ、高圧電線に自らのチェーンを巻きつけて、服部を感電させる。あまりの電撃にさすがの服部も倒れたかに見えたが、服部の顔の皮膚の下から、金属の骨格が露呈する。大爆発の中を逃げるサキは、ついに海へと身を躍らせ、地獄城から生還する。脱出ボートに迎えられ、炎の中に陥落する地獄城を眺めるサキ。そしてその頃、服部を裏から援助していた政府高官の元へやってきた暗闇指令は、一丁の拳銃をおいて、すべての負けを認めさせる。部屋を出てゆく暗闇指令は、1発の銃声を聞く。海岸では救急隊とマスコミに囲まれた三晃学園の生徒たちは助け出されていく。そんな生徒たちから外れて、唯が姉たちと再会していた。そして西脇と再会したサキ。「今度こそ、さらばだ」という西脇に、サキは黙して答えず、ただ去りゆく。その胸に去来するものとは。伝説の少女戦士は、再び伝説の中へと消えてゆく。

<シリーズを見続けてきたから>
 本作の後半を引っ張るのはサキの「怒り」である。サキと服部に直接の接点がない。だからサキは服部に対して本質的に敵意が持てない。和夫を殺されたことが直接的な経緯となってはいても、サキは服部を直接的に憎めない構造になっている。だが本質的にサキがもっとも嫌いな人種は、他人にばかり犠牲を要求し、自身は高みの見物を決め込む卑怯者なわけだ。そうした人間に対して、サキは怒りを込めて言い放ったのが、本作の白眉だと思える「おんしが嫌いじゃ」という言葉だった。そも敵にすら一目置いてしまうほどの器量を持ったサキだから、これまで敵対していた人間とも友誼を結び、仲間を増やしてきた経緯がある。そんな彼女が直接的な接点がない服部に対してだけは、「怒り」をもってしか自己表現できなかった。生徒たちを己が野望のために自由を奪い、その野望のためのコマとしてしか生徒たちの存在をみなさない服部を、自身の自由を奪う可能性のあるものとして憎み、怒る。自由を奪われた生徒たちの代弁者として、これ以上ないほどの怒りをもって、サキは服部と対決したのである。

 東映から発売している本作のDVDには、メイキング映像が40分以上もついている。これは当時メイキングとして単独でビデオが発売されており、それとカップリングになっていると思えばよい。それを見ているとどうしても感じてしまうのだが、主演女優である南野陽子はじめ、主要キャストの演技は総じてつたない。つたないだけならいいのだが、どうしてもそのアクションも物足りないとは思う。どうしてもハッと我に帰ってしまうシーンはいくらでもある。地獄城でのバトルシーンでは、何度か敵兵や卒業生たちと戦うが、このアクションの一つ一つの段取りがこちらにまで見えてくる。それはアクションにつなぎ目があって、それがどうしてもスピードに乗りきれずに目立ってしまうので、決してほめられたものではない。TVシリーズの撮影中、腕立て伏せができずに吊って撮影したとか、でんぐり返しもロクにできなかったとか、アクション面ではつとに問題が目立った南野陽子ではあったから、いたしかたない。だがこのメイキングをみると、主演である南野陽子自身が、どれほどの情熱で本作に出演していたか、出来る限り自分自身でアクションをこなしたいと頑張っているかがよくわかる。そしてそれがわかって振り返ってみれば、その熱量に気持ちよくほだされるように、物語に埋没できるのだ。ただ一つ、最後の桟橋から海に飛び込むシーンだけは、どうにもいただけない、とだけ申し上げておきたい。

 先に触れた雪乃の別荘にて、5人で夕日を見るシーンや、サキとお京の再会のシーンなど、シリーズを見続けてきた人なら、どうしても涙腺が緩むシーンがあるのも、本作の見どころだ。おじさんになって今の目で筆者が見ると、どうしても西脇や暗闇指令あたりに目が行きがちで、サキと西脇の再会するシーンや、ラストのサキをねぎらいながらさらばと言う西脇のシーンを見ていると、短いやり取りの中にどれだけの思いがこもっているのだろうかと、西脇の胸中を思えば、それだけで胸が熱くなる。
また「~III」から参戦する唯が登場するシーンでは、唯の暴れん坊な感じも出ているし、ちゃんと台詞で「西脇さんから頼まれた」などというシーンもあり、放送中だったTVシリーズでも、唯が不在の話数がきちんと存在しているから、時系列的にちゃんと組み込まれていることがわかるのは、ファンにはとてもうれしい触れ方だ。まあそれならばお京ぐらい「~III」にちょっと顔を出してくれてもよかった気がするのだが、まあそれはそれ。

 この映画公開後、その人気は不動のものとなった南野陽子だが、フジテレビを中心に多くのドラマに出演する一方、その後は自身の代表作となる東映映画「はいからさんが通る」にも主演し、さらに歌のヒットもあり、その人気はピークを迎えることになる。南野陽子という一人のアイドル・女優の、一つの起点は間違いなくTV版の「スケバン刑事II」であり、本作であることは間違いない。もちろん公開された80年代中盤の世相や空気感を持っている作品であるから、現在の目でみれば奇異に映ることもいたしかたない。けれど、主演の南野陽子をはじめとする演じる側の熱量、そして作り手送り手の熱量、そして公開当時この作品を愛した受け手の熱量があって、この作品は厳然と存在し続ける。時代が移ろっても、その熱量はいささかも変わらない。

今一つ、このスケバン刑事のムーブメントは、映画公開当時にTVで放映中だった「スケバン刑事III」にも波及する。翌年の秋まで放送された「III」は、主人公・唯と二人の姉であるスケバン三姉妹に、あまりにも過酷な宿命を課しながらも、それをはねのけて勝利して完結。本作の公開の1年後に映画「スケバン刑事 風間三姉妹の逆襲」が公開し、大人気の内にスケバン刑事シリーズは終焉を迎え、ムーブメントは収束する。TV版は「少女コマンドーIZUMI」へとバトンタッチし、その後に「藤子不二雄の夢カメラ」へと移行し、木曜日の枠自体はここで消滅するが、月曜日に枠を移動して「花のあすか組!!」が放送される。88年9月末に放送は終了し、ここで東映が製作した「スケバン刑事」から連なる女子高生戦士の物語は終わりを告げることになる。だが本作を製作したスタッフは、東映不思議コメディシリーズに合流する。1989年初頭から放送されたシリーズ第9作「魔法少女ちゅうかなぱいぱい!」は、原作に石ノ森章太郎氏を迎え、実写版の魔法少女路線へと移行する。以降1993年の「有言実行シュシュトリアン」まで6作品を贈り出すことになる。このスタッフの流れをみてもわかるように、「スケバン刑事」シリーズは、一時代を極めた後に、東映不思議コメディシリーズへと合流していく流れとなっていたことは、東映の作品製作史としては記憶にとどめたいお話。さてこれにて「スケバン刑事II」と映画「スケバン刑事」を扱い終えた。次はいつになるのかわからないけれど、いつか必ず「スケバン刑事III」と「風間三姉妹の逆襲」を扱うことをお約束して、今回は筆をおくことにする。
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