なぜウルトラセブンだけが作り続けられるのか?

 「ウルトラセブン」が放送されていたのは1967~1968年のことだ。ウルトラ兄弟の中でも比較的客演が多く、「ウルトラマンレオ」の1話を見る限り、ウルトラマンタロウが地球を去った後で、ふたたび地球守護の任についている。また1994年に日本テレビ系列にて、続編となるテレビスペシャルが2本放送されたのを皮切りに、「誕生30周年記念3部作」「1999最終章6部作」「EVOLUTION 5部作」とオリジナルビデオが制作されている。また2007年には、深夜枠で「ULTRA SEVEN X」が放送され、本編と関連のない作品かと思いきや、最終回で意外な世界観の連続性が提示される作りとなっており、驚かされたりもした。またウルトラセブン製作当時の舞台裏をドラマ化した「私の愛したウルトラセブン」がNHKで放送され、好評を博した。他のウルトラシリーズを見ているかぎり、これほどのしつこさで作品化された作品はない。円谷には「ミラーマン」や「ジャンボーグA」などの良作はいくらでもある。にもかかわらず、なぜ「ウルトラセブン」だけがこれほど愛されるのだろうか?

 「ウルトラセブン」を語る際によく用いられるフレーズとしては、「よく練り込まれてSF性」などと言われる。その一翼を担っているのがウルトラホークなどのメカニックの設定だろうか。分離合体のホーク1号、小型で小回りのきくホーク3号、宇宙ロケット型のホーク2号、小型潜水艦のハイドランジャー、地球防衛軍が誇る原子力船マックス号、地底戦車マグマライザー、そして地上パトロールの担い手ポインターなど、その鋭角的でハイセンスな機体の数々に、子供達はこれからの未来兵器の姿を重ねたに違いない。現実にはこれらにまったく追いついていないのだが。またそれらの超近代兵器を支えるのは、現実に即しながらも、いまだ誰も見たことがない心躍る発進シークエンスだろう。ポインターが発進する直前のターンテーブル、ウルトラホークの発進シークエンスは、それ以降のウルトラシリーズの礎であるし、ロボットアニメにおける発進シークエンスのほとんどは、これを発展進化させたものである。そしてホーク3号のコンテナから発進するマグマライザーの力強さに、興奮必至である。これらミニチュア特撮の極地は、当時放送されていた特撮作品「サンダーバード」の影響下にある。それは先のマグマライザーのシーンを見れば一目瞭然だ。ところが残念なことに、後年制作されたセブンのビデオシリーズでは、これらの特撮シーンは見あたらない。発進シークエンスがそもそもないし、ウルトラホークが活躍するシーンも圧倒的に少ないのだ。これはビデオ作品を見たときに、だれもが等しく残念に思う事だと思う。

 ってことは、「SF性」に含まれる「宇宙人の侵略」というモチーフだろうか? たしかにいずれの作品でも、悪役に設定されているのは侵略宇宙人であるが、最終6部作の「果実が熟す日」のレモジョ星系人やEVOLUTION 5部作のペガッサ星人穏健派などのように、地球人類と友好をかわす宇宙人もいる。それ以上に、最終6部作では、旧作の「ノンマルトの使者」の続編となる物語を紡ぎ出し、ウルトラ警備隊のしでかした行為を完全に否定し、侵略者である地球星人を断罪すらしている。そこにあるのは単なる価値観の相違や価値観の逆転ではない。そもそも「地球」という惑星に暮らす、自分たちの出自と血を疑う行為である。だがこうなるとモチーフとしての「SFマインド」ではなく、もうウルトラセブンだけが持つドラマ性に起因していると言わざるを得ない。事実ビデオ作品で紡がれたウルトラセブンの物語は、地球人自身を存在を揺らがせるドラマが続出している。

 先のノンマルトの話もそうだし、ペガッサ・シティを破壊されたペガッサ星人にも、同じ事が言える。事実EVOLUTION 5部作の1話目では、強硬派と穏健派に別れたペガッサ星人が、地球に潜入していながら人間とともに暮らす道を模索する一方で、地球を侵略しようとする策略を、ウルトラ警備隊が阻止するという話だ。ソノラマ文庫の小説版の「ウルトラセブン」を執筆した武上純希氏は、その小説の中で、地球人の罪として、ノンマルトの件やペガッサの件をとりあげ、そこに荷担したウルトラセブンを断罪する。EVOLUTION 5部作の当初の話では、この地球人の罪とセブン自身の罪を受け入れ、ウルトラセブンは馬頭星雲に閉じ込められている状態で登場する。だがそれは前のシリーズに登場した「宇宙人と地球人の約束」として、ダンとフルハシの間に結ばれた友誼が重くのしかかるのだ。

 また旧作「超兵器R1号」で登場した、「血を吐きながら続けるマラソン」という、軍備拡張と防衛のいたちごっこを皮肉った話も、最終章6部作において防衛軍がすすめる「フレンドシップ計画」に見え隠れする。その計画は名前とは裏腹に、異星文明を徹底的に排除する計画である。そこにふたたび地球人が罪に手を染める可能性を見いだしたウルトラセブンにより、計画は白紙撤回されることになる。そしてセブンは、地球人がかつてノンマルトに対して行った非道な行いについて書かれた「オメガファイル」を公表することで、自身が罪をかぶることになるのだ。結局はだれかが背負わなければいけない罪だということか。

 ことほどさように、旧作シリーズにおける事象に、こまかいツッコミをいれるように、ビデオ作品が作られている。このほかの話を見ても、SFよりは寓話に近い「模造された男」や「約束の果て」、ウルトラ警備隊員のひとりに注目した「空飛ぶ大鉄塊」など、どちらかというと優しく悲しい話が多いのも特徴か。それはやはり旧作の「ウルトラセブン」が持っている、「正邪の判断基準のあいまいさ」にあるだろう。
 細かい話は切通理作氏の「怪獣使いの少年」に詳しいので省くが、沖縄における人種問題(本土と沖縄の人間の根本的な違いや、沖縄人の外国人感)を常に意識していた金城哲夫氏、彼を慕っていた同郷の上原正三氏の脚本が、「ウルトラセブン」の方向性を決めていった可能性がある。時折しも「ベトナム戦争」まっただ中の時代である。アメリカの関与により、ベトナムの民族的独立が問われた戦争において、正邪の判断があまりにあいまいになった時代を象徴する出来事だ。そして日本では、1970年を目の前にして、高度経済成長期にありながら、日常の出来事が歪んで見えてしまう時代でもあった。そんな価値観のゆらぎを持っていた時代が、作品を作った人々の熱量と共に、「ウルトラセブン」に反映されている。

 翻って現代を見れば、核の脅威も、他国の侵略の驚異もなく、日々穏やかに暮らすことができる時代。人々の心配事はといえば、いつまでも続く日常にうんざりしながら、その日常を犯されることを極度に嫌う。そしてその裏側で、国の経済破綻がじんわりと足下に忍び寄るが、人々はその問題から目を背けようとしている。そんな時代には、問題提起が必要なのだろう。そんな問題提起を示す「ウルトラセブン」だから、これからも旧作の重箱の隅をつつくような物語が生まれる可能性だってある。そこに現れたリニューアルされた物語が、どんな問題点を指摘するのか、楽しみだ。そんな思いが、「ウルトラセブン」をリニューアルさせ続ける原動力なんだろう。
 物語が飽和していくテレビの世界で、あふれかえる物に付加価値を与えることでしか快感を得られなくなった現代の日本人には、今一度世界が問題意識を共有していた時代に戻りたいという欲求があるのかもしれない。それは単なる懐古主義ではない。問題提起と議論がそこになければ、振り返る価値がないとは言うつもりもない。でも無関心でいるぐらいなら、せめて「ウルトラセブン」でも見て、何をか感じて欲しい。

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テーマ : 特撮
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コメント

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No title

そもそもノンマルトの話は金城さんが満田監督と酒の席で話した話を元に書いたもので、あまり重要な意味を持たせたものではなかったようです。

No title

なお様

 コメントいただき、ありがとうございます。

 とはいえ、後年「ノンマルトの使者」が意外なほど波紋を広げ、なおさんもご存じのように高く評価され、オリジナルビデオでもその後日談が映像化されるほどです。作り手にとっては意外な結果かも知れませんが、作品に別側面を見いだして評価していったファンの活動の成果なのかもしれません。それはそれで素敵なことだと思いますよ。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
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戦隊シリーズをこよなく
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