文字情報過剰につき・・・~アニメ「化物語」~

 過日、総集編が放映された「化物語」は、お話的に「まよいマイマイ」で一段落を迎えたところだ。どうやらテレビでの放送は全12話で、3話がネットでの配信となるらしく、製作は全15話らしい。原作としても「化物語」上下、「偽物語」上下と前日譚である「傷物語」の構成となっており、テレビ版では一通り放送される模様である。原作は西尾維新氏だ。

 物語は、主人公・阿良々木暦が、町の中で出会った人々にまつわる怪奇な事件を解決して回るという、人のいい話だ。その解決に一役買うのが忍野という人物であるが、彼と暦が解決する怪奇な事件は、日本古来の民間伝承や昔話を題材にとった「ばけもの」にまつわる物語に影響を受けていることが多い。そして事件をきっかけにした少女達と暦との関係性が、この物語の中心になる。すべての物語は、暦の一人称で進められている。なんとなくどうってことない物語のような印象を受けるかも知れないが、これが意外にも面白い。というよりも1、2話に登場した戦場ヶ原(せんじょうがはら)ひたぎや、3~5話の八九寺真宵(はちくじまよい)という少女達が異常に面白い。物語は暦の一人称で進むが、この暦と会話する彼女たちが、本当によく喋る。その話す内容は様々であるが、そもそも原作にあるとおりの会話は、西尾維新氏が意識的に書いた内容であり、多かれ少なかれ過激だったり、言葉遊びも含まれる。文字や文章という表現媒体の可能性を模索しているような、少しセンシティブな言葉使いが特徴の会話である。だがここで問題にしたいのは、彼女たちのキャラクターではなく、本編中に現れる「文字」である。

 本編の監督である新房昭之氏は、すでに製作会社の「シャフト」とともに、「絶望先生」シリーズを手がけており、現在も第3シリーズが放映中だ。2本の監督を同時期に掛け持ちするって事情について深く言及するつもりはないが、おどろくべき仕事量と精力だと言える(冗談です)。だが「絶望先生」シリーズにおいても、本編の端々に現れる「文字」が、特徴的に活用されていた。特に主人公・糸色望が、「絶望した!」とのたまうシーンでは、その絶望した内容が、文字として流れる演出となってるし、背景に現れる文字の数々も、一見して琴線に触れる独特の文字使いで、どうしてもVTRを止めて文字情報を確認したくなるのだ。そこには台詞では読み上げにくい情報の数々が羅列されており、「絶望先生」のギャグの一端を担っているのだ。

 同じ監督と制作会社で作られている「化物語」でも、同じように文字が多用されている。背景に描かれる道路の文字、道路の脇にある標識の文字、ナレーションを文字化したもの、文字自体をデザイン化したものまで、そのパターンは多岐にわたる。すべて明朝体で描かれたこれらの文字は、一見すると先の「絶望先生」と同じ印象を受けるのだが、よくよく見ていると、「化物語」で使用されている文字は、「絶望先生」とは異なる質の文字であることがわかってきた。

 「化物語」も「絶望先生」も同じ明朝体の文字を多用している点は同じだ。また文字が背景にさりげなく利用されていることも同じである。その演出はどれも一瞬だけ写されることが前提となっており、一瞬では判別つかない場合が多い。それは人間が視認するよりも短い時間で写されているからだ。すると視聴者は流れるVTRを止めて確認したくなる。これが映像として視聴者の心と記憶に引っかかる。確認しないと、なんだかもやもやするではないか。録画したVTRを、一時停止ボタンを押しながら文字内容を確認すると、かなりの確率で他愛のない内容の文字が書かれていることに気づく。でもその内容を確認して、あなたは作品を味わったと満足するだろう。これでもうあなたは新房監督やシャフトに、してやられた事になるのだ。

 「絶望先生」はそうでもないが、「化物語」では、キャラクターを動かそうと思えばいくらでもアクションができる。試しに第4話のOP映像や、暦が真宵を振り回すシーンを見て欲しい。大した文字もおかず、スタッフクレジットのみでキャラクターを原画で動かし続けるOP映像は、シャフトの原画マンの実力を示している。これほどアニメートできる実力を持っているスタッフが、作画の省略のためだけにこんなことをしているわけではないことがおわかりいただけるだろう。そして「化物語」では、この文字をデザイン化している映像も見受けられる。たとえば「蝸牛(かたつむり)」という文字を、シンメトリカルにデザイン化したシーンや、「蟹(かに)」という文字を分解してデザイン化したシーンなどを見れば、一目瞭然だろう。これはもう「文字」という情報伝達ツールを、見事に意匠化したと言える映像である。そのデザインセンスは、「犬神家の一族」などの市川崑監督作品で多用された、明朝体と文字の羅列がデザイン化されたスタッフテロップなどに匹敵する。いや、むしろさらに洗練されたと言えるのではないだろうか?

 ところがこれらデザイン化された文字のシーンそのものは、全く意味を持っていない。せいぜい「かたつむり」という漢字がどういうものであったかを示す程度の意味しか持たない。だがこういったデザイン化された文字をはさむことで、長台詞のシーンを単調に見せないような配慮がなされており、シーンの合間合間にはさまれる文字のシーンで、むしろ画面のテンポが上がっているのだ。わずかな止め絵としての文字のシーンが、長く単調な台詞中心のシーンのテンポを上げている。同じ種類のシーンとして、止め絵の実写もこれに属する。
 
 そういう状況を考えると、それぞれの止め絵の文字シーンを、わざわざVTRを止めて見直すというのは、シーンのテンポを下げる結果となる事がわかることだろう。だがどうしても気になってしまう。しかもその表示されている時間は、人間が文字を認識するよりも短い時間でシーンが変わるのだ。そこに人間の記憶が引っかかる。そういった仕掛けこそが、文字のシーンの意味であろう。だから「化物語」を見るときには、ぜひとも一時停止ボタンから指を離して観賞することをおすすめする。そのほうが暦の長々とした台詞や、ひたぎが暦に語りかける台詞の味わいが、より引き立つはずだ。

 とはいえ、ひたぎや真宵、翼たちが、異常なほど魅力的な女の子であることの理由にはなっていないのだが。それはまた、アニメ放送が終わった時に、大いに語ってみたいと思う。

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