ちゃぶ台返しのドラマ~GEAR戦士電童 その2~

 「GEAR戦士電童」の物語は、良くも悪くも「ベガ」という一人の女性が中心になっているお話だ。17年前に少女の姿で地球に漂着し、ガルファの情報を地球人にもたらした。北斗の母であり、GEARの副司令。そして敵であるアルテアの妹で、惑星アルクトスの王女。物語が進むにつれて、彼女の身の上話が圧倒的に多くなる。そして故郷を滅ぼされた彼女が、ガルファに復讐を果たすというのが、物語の根幹をなしている。

 ところが彼女は電童に乗って戦うわけではない。戦うのは銀河と北斗だ。彼らは地球に責めてくるガルファに対して戦いを挑む。その理由は地球の平和であり、GEAR本部がある星見町の平和だ。もっと言えば自分たちが住む町、自分の父母達が暮らす町を守りたいという思いだ。北斗の場合は母を守りたいという思いもあるだろう。銀河も北斗も父親よりも、母親との関係がピックアップされているのは、気のせいではない。そんな彼らの思いとは別に、ベガは復讐の心を抱いているのだが、主人公は銀河と北斗なので、すり替えられているのだ。

 こういった戦う理由のすり替えは、今に始まった事じゃない。「仮面ライダー」が自分の体を切り刻んだことへの復讐と人類の平和を天秤にかけ、いともあっさり復讐を捨てている。「伝説巨神イデオン」でも、地球人の主要キャラクターは、自分たちの仲間と居場所を奪った復讐からバッフクランに戦いを挑んでいるが、その圧倒的な戦力差故に、逃避行をせざるをえない状況になっている。だが戦う理由は生き延びたいからだ。
 いささか教条的ではあるが、復讐は連鎖しか生まない。この憎しみの連鎖はなかなか断ち切れないから、どこまでも戦うことになり、どこまでも凄惨なイメージがつきまとう。制作者たちがこれを恐れたことは想像に難くない。それを子供番組として放送することが、どれだけ酷いことか、おわかりいただけるだろう。だからもっと大きな物語に埋没させてしまうようにすり替えるのだ。仮面ライダーV3も、肉親を殺された復讐者として誕生したが、先輩ライダーの死に際で、世界平和を誓うし、ライダーマンだって最期は自分の犠牲によりミサイルを爆破し、人類を救う英雄となった。

 だが「電童」の敵ガルファは、惑星アルクトスの自然環境管理コンピューターであり、環境を保つために人間を排除する道を選んだのだ。デビルガンダムとか根源的破滅招来体とかといい勝負だ。最終話近くで地球に攻め込んできたガルファは、惑星アルクトスを引き連れて、攻め込んでくる。やっとのことで惑星に突入したベガは、ガルファの驚異におびえながら隠れて暮らす人間達を発見する。これまで悪の帝国であったガルファが、ただの自然管理コンピューターであったことが、明確に示される瞬間だ。それまでのドラマの中で、兄であるアルテアを取り戻し、ガルファを倒せるだけの戦力を手に入れていたベガの復讐は、完膚無きまでに終わりを告げることになる。

 物語前半を牽引するのは、6体の電子の精獣「データウエポン」の争奪線である。そもそもなぜガルファが地球に侵攻を開始したのかというと、当初は地球人類の抹殺であったのが、ベガと共に地球に逃れてきたデータウエポンをすべて回収することに変更されたのだった。この6体のデータウエポンをそろえることで、7体目のデータウエポンがあらわれ、大いなる力が発現するらしいのだが、実際6体をそろえた25話で、なんにも起きない。結局7体目のデータウエポンなどという話は、あくまでもガルファ側の戯言だったと思いきや、最終回付近でいきなりその設定が復活する。そして7体目はなんと北斗の頭(記憶)の中に潜んでいたというのだ。なんか無茶するなあ・・・。

 電童というロボットの魅力の1つに、「電池で動く」という点が上げられる。まあ普通の電池ではなくハイパー電池なんだけど、この電池のエネルギー容量がなくなると、電童はまったく動けなくなってしまう。またファイナルアタックも、1回の電池で1回が限界である。そのため電池交換を戦場ですみやかに行うために、セルファイターが活躍する。この電池交換シーンもバンクだが、「スーパーロボット大戦」シリーズでも再現されており、おもちゃとの連動もあり楽しいギミックの1つだ。7体目のデータウエポンの正体は、電池いらずの無限エネルギー供給システムなのだ。これにより大幅にパワーアップした電童が、ガルファを倒す。それもアルテアの乗る騎士凰牙とともに。この共闘にも実は秘密があるのだが、それはこれをお読みの皆さんのために、残しておきましょうね。

 こうしたいくつものちゃぶ台返しを秘めつつ、全38話を全うした「GEAR戦士電童」であった。いくつもの仕掛けがごちゃごちゃとあったのだが、伏線もきちんと回収されているし、なによりキャラクター主導のドラマが、見ているこちらの「子供心」を大変満足させてくれる出来映えであった。銀河や北斗は、日常の中の非日常的な戦いの中で、大きく成長する。いろいろな悩みを抱えつつも、躊躇せずに真っすぐ前を見つめている二人の視線の熱さが、この物語を引っ張っている。そこには理論もへったくれもない、原因と結果が示されるドラマがあるだけだ。それでもその理由が、二人の少年の思いや、彼らに託した大人達の思いがきちんと重なるドラマだからこそ、毎回バンクで表現される必殺技のシーンでも、そこに高揚感が生み出されるし、感動も味わえるのだ。僕たちはこんなロボットアニメをたくさん見たいのだ。

追記
 この作品のスタッフが、「舞Hime」や「ガンダムSeed」、「宇宙をかける少女」などへの流れを作っている本流であることも、忘れてはならない事実だ。そういう意味では、いまさらながら見返すのにはちょうどいいサンプルと言える。レンタルで置いている店も多い。興味を持たれた方は、ぜひご覧いただきたい。13巻もあるけどね。

 
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