劇場版「仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー」批評

<Side-A>
 テレビ版でも最後の盛り上がりを見せている「仮面ライダーディケイド」。その夏の劇場版が絶賛公開中である。どこのブログを見ていても評価が高いし、何よりすべてのライダーが出そろうという前情報を見る限り、期待はいやが上にも高まる。事前の宣伝も十分であり、「スマステ」などでの特集なども、この映画を見に行く人には貴重な情報提供になっただろう。自分の中のwktkを押さえられず、とうとう昨日見に行ってきて、その出来映えに十分満足して帰ることができた。

 結論から申し上げれば、劇場版のストーリーは、テレビ版の最終回ということになる。以前の「龍騎」のような、パラレルワールド的な最終回でもなく、「555」「ブレイド」のような後日談でもない。現在進行中のテレビ版の行き着く先を見せ、なおかつ全ライダーを見せるという大風呂敷を広げた上に、「ディケイド」という物語の地平で、意外なほどキレイに大風呂敷をたたんで見せるという離れ業だった。そもそも「ディケイド」の世界観を作った脚本家・会川昇氏ではないにもかかわらず、これだけの力量を見せる米村正二氏に感服するばかりだ。

 現在公開中である作品であるから、物語の詳細は避ける。ただ本映画においてなぜに門矢士がライダー世界を巡らなくてはいけなかったのかという、テレビ版のストーリーの根幹となる謎が明らかになる。そして士自身が、その理由を記憶喪失ゆえに失っていること、その旅の過程でディケイドライバーを喪失してしまったことが明かされる。だが彼らが到着した世界で、士はやおら記憶の断片を思い出し、すべてのライダーと戦うことを宣言するのだ。ここまでが物語の前半だ。
 その後、紆余曲折あって(こここそが物語の重要部分なので、伏せます)門矢士はだまされていたことを知る。ディケイドが倒したため、どこの世界にいってもライダーは存在せず、悪が跋扈し始める世界で、すべてを失った士は失意の中で、「結城丈二」という名の光を見る。そしてすべての悪の根幹となる大ショッカーに、敢然と立ち向かう。だが大ショッカーはあまりに大勢力だ。すぐに劣勢たたされるディケイド。そこにあらゆるライダー世界から、すべてのライダー達が集結する。今、戦いの時が来た・・・。

 物語については、士達が経験するその紆余曲折を、存分に楽しんで欲しい。その仕掛けはあっと驚くものである。特に「結城丈二」を演ずるGacktの登場シーンは、平成の世界にあっても、組織の裏切り者のレッテルとして右腕を切り落とされ、復讐鬼となっているライダーマンの有り様を見せてくれる。その生き様と戦う意志が、士を再び戦いにおもむかせる契機になる。短いシーンではあるが、そのドラマ展開はまさしく「熱い」という他はない。

 そしてなんといっても昭和と平成のライダーが入り乱れる、最後の大バトルシーンは、見ていて圧巻である。戦隊シリーズでは、画面いっぱいに広がる戦隊の皆さんと敵戦闘員という画面がよく見られるが、ライダーでこの画面を見られることになろうとは、夢にも思わなかった。画面のどこを見てもライダーがいるのだ。本来単体ヒーローである「仮面ライダー」にあるまじき画面である。これを見ているだけでも眼福である。巨大な「J」までフレームに登場しキングダークと戦うし、次回作である「仮面ライダーW」まで登場する。これはもうひたすら作り手のサービスに徹した製作に、頭を垂れるばかりである。

 以前「全員集合のお得感」の項でも書いたが、仮面ライダーの場合には、仲間のピンチに、地球のあらゆるところから駆けつけてくれるという、特有の地続き感が醍醐味であるのだが、今回は世界すら超えてしまうサービスッぷりである。そうした次元すら超える能力は、漫画ならあり得そうだし、漫画なら書いてしまいそうなアイデアだが、そんな「テレビマガジン」っぽい発想が、この映画の根底に流れている気がしてきた。ウルトラマンは「メビウス」という作品を得て、本当の意味で世代を超えた。仮面ライダーも、ついに「ディケイド」で世代を超えることができたのだと思いたい。この映画はそのモニュメントである。ぜひ親子で見に行って欲しい。

<Side-B>
 っと、前段までは褒めちぎっておいたが、それも1つの真実だ。だがこの映画には、その美点さえ奪いかねない数多くの欠点もあることは、明記しておいたほうが良いと思われる。だからこれからこの映画を見に行く諸君には、ここから先は読まないことをおすすめする。またできることならこの映画を見ないという方にも読んでいただきたくはないのだが、なにせ読めるようになっているので、ご自身の判断にゆだねよう。

 突然だが、こんな物語が脚本に書かれていたとしよう。

 門矢士の提案で、全世界のライダー達を集め、ライダーの中でもっとも強いライダーを決めようとする「ライダーバトル」が開催される。「555」劇場版のように、とあるドーム球場にてライダー達と戦い続けるディケイド。そしてディケイドは優勝し、他のライダー達は世界から消えていく。
 ところが門矢士はだまされていたのだ。そしてライダーがいなくなった世界で跋扈し始める大ショッカーの皆さん。士は失意の中で戦意を取り戻し、大ショッカーと戦うために、他のライダーに呼びかける。

士「大ショッカーの脅威があらゆる世界に迫っています。さあ、一緒に大ショッカーと戦いましょう!」

 その時、あなたがライダーならどのように応えるだろう?

A:「そうか、わかった。君と一緒に大ショッカーと戦おう!」
B:「ライダーバトルで人のことフルボッコにしておいて、いまさら何言ってやがる。戦いたいんなら一人でやれや!」

 心が狭いと思われてもいい。私がライダーなら「B」のように応える。「A」のように応える事ができるほどお人好しではない。よしんば「正義と平和」をお題目に戦っていたとしても、彼ディケイドと共闘できるとは思えない。

 だがこの映画は、疑いなく「A」を選べるみなさんの映画である。欺瞞を感じるより先に、この脚本を通したスタッフに問題があるとしか思えない。それならばディケイドとの共闘を勝ち取るための、別のライダーバトルが必要だろう。「ディケイド」という物語の根幹こそ外していないものの、人間の生理を無視してドラマが構築できるはずがない。だが世代を超えようとするファミリーピクチャーに、こんな要求は無茶なのか? だが「龍騎」や「555」の劇場版のような静かで熱い、それでいてこちらの生理に沿ったドラマが作れたスタッフだ。この脚本の採用そのものに疑問を持たざるを得ない。

 またラストバトルにおけるライダー達の表現にも、こだわりが感じられない。再生怪人の皆さんには、自分が誰と戦ってきたのか、それすら記憶にないと思われる。それなら文句なくデルザーの改造魔神を復活させればよいのだ。ドラスはどうした! 大ショッカーの皆さんの復活させた怪人の判断基準が知りたくなる。こだわっているのかいないのか、全く意味不明だ。テレビでもアポロガイストが出てきているのに、パーフェクターの本来の所有者であるXライダーは未登場だ。ピックアップの仕方がいちいちカンに障るのだ。途中のドラマ部分のお粗末さには目をつぶって、バトルシーンだけ楽しもうと思っていたのだが、それすら拒もうとする。もうしわけないが、昭和ライダーとのつきあいも長いので、これは勘弁してくださいとしか申し上げられない。

 力演・怪演を見せていただいた大杉漣氏、石橋蓮司氏の両氏には申し訳ないのだが、彼らが地獄大使、死神博士としてそれぞれが怪人に変身するシーンのギャグも、まったくもっていらない。いやシャドームーンとビシュヌ以外の大ショッカーの皆さんには、コメディリリーフしか感じられない。再びで申し訳ないが、私がライダーなら、こんな大ショッカーなら、自然崩壊を待つ方がよっぽど苦労がない。またも戦う理由が消滅してしまうのだ。

 パンフレットの表紙にもあるように、文字や色合いを、昭和の映画風にした努力をするくらいなら、ほかに力を入れる部分があるだろうと憤る気持ちが抑えられない。これならシンケンジャーにもう少し時間を割いて、初代シンケンレッドの謎解きに時間をとってもいいんではなかろうか? 毎回ライダーに時間をとられてすっかりお味噌扱いの戦隊に、もう少し日の目を見せても罰は当たらないと思えるのだが、どうだろうか?
 
 いずれDVDになるだろうし、ディレクターズカットも出るだろう。再度見直して、ネタバレ全開で、再批評する機会もあるだろう。そのときまで、私の中ではなかったことにしておきたい、そんな映画であった。たとえ<Side-A>に示した美点があったとしても。
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