殿様と家臣たち~侍戦隊シンケンジャー~

 過去の戦隊シリーズにおいて、主人公側のチームの人間関係に設定を持ち込むと、あまり面白くない作品となるような気がする。例えば「兄弟」という設定を与えられた「地球戦隊ファイブマン」や「救急戦隊ゴーゴーファイブ」などは、あまり面白いとは思えなかった。それは「兄弟」という設定に縛られることで、5人の人間関係が固定化し、主人公側のドラマがおざなりになるためだ。その点、同じ兄弟設定でも「魔法戦隊マジレンジャー」は、兄弟間の人間関係や、兄弟各人のキャラクターを掘り下げるドラマに主軸を据えたドラマが機能することで、消えた父母の行方探しや、兄弟各人の恋愛模様などのドラマが展開した、希有な例である。

 「秘密戦隊ゴレンジャー」や「電撃戦隊チェンジマン」などでは、主人公チームがすでに「軍人」だ。それゆえ団体行動や規律、チームの中の指示系統なども作用すれば、主人公側のドラマに、あまり時間を割く必要がなくなる。逆にメンバーが自然発生的に集合する「科学戦隊ダイナマン」や「大戦隊ゴーグルファイブ」なのでは、そもそもチームの人間関係でドラマが作りにくく、とってつけた印象になるドラマとなりやすい。それ故に、主人公側の人間性が希薄になり、ドラマの最後は敵方の騒動のどさくさで終わることになりがちだ。

 「ジャッカー電撃隊」では、主人公4人が、それぞれ事情を秘めてサイボーグ手術を受けるというところから始まる。しぶい。ものすごくストイックな作りであり、原作の石の森章太郎氏がの好みが炸裂しているともいえる。それゆえあまりに重すぎたドラマは、結果的に忘れ去られるし、方向転換を迫られる。その結果がビックワンである。

 翻って今年の戦隊最新作である「シンケンジャー」においては、主人公チームの設定は「殿様と家臣達」である。正直言ってなんだか窮屈そうなイメージだ。視聴前は、不安でいっぱいだった。だが完成作品を見るがいい。殿様に追従する者、殿様を目標とする者、一歩引いた位置で冷ややかにチームを見つめる者が渾然一体となり、ドラマを盛り上げているではないか。しかもその中心となる殿様の青二才っぷりがかなり魅力的だ。初期には仲間の死を嫌い、共に戦うことを拒んでみたり、主従の関係をこだわることを嫌ったりする。敵の必殺技に一敗地にまみれ、一度は失踪しながらも、ふたたび戦いの場に身を投じるシーンなど、あまりの青臭さに、見ているこちらが照れてしまうほどだ。だがその若さがいい。戦隊シリーズってのは、まだ芸能界の右も左もわからないような新人さんが、初のレギュラーとなるような番組である。だからこうした青臭い若者達が、さまざまな悩みを抱えながら、前を向いて進みだし、成長する姿をえがくことが、そのまま役に、そして役者の成長にシンクロする。そのシンクロの度合いが大きければ大きいほど、見る甲斐があるという作品群なのだ。

 また敵側である「外道衆」にも、その正体がつかめないふしぎなドラマが存在する。最近放送された回では、薄皮太夫という女性幹部が、なぜ外道に落ちたのかという過去のドラマが展開する。声を演じた女性声優が、顔出しで演技する迫力もあいまって、炎の中で愛した男を抱きかかえながら泣きわめく姿には、腰を抜かすほど驚かされた。同時にそうまでして外道に落ちたという人間の業が示される。この過去話はいずれ何かしらのドラマがあるだろう。また人間として生きながら外道に落ちたという腑破十臓も、これからのドラマを動かすダークホースだ。

 これはまるで、主従や侍という人間の持つ格式や形式にこだわる主人公達に対して、あくまで人間の業に忠実に生きることにこだわるという対比が、戦闘を繰り広げる構図となってるように見える。それは人間だれしもが持っている二面性に他ならない。正面切って正義と悪が戦っているように見えて、それはそのまま人間の葛藤の様子をドラマ化していることになる。それも恥ずかしげもなく、正々堂々と。だから「やり過ぎだ」と批判する人々にとっては、たぶんまぶしすぎるドラマなのかも知れない。

 それにしても今年の「シンケンジャー」は熱い。例年にもまして熱さを感じる。それはキャラクターの人間関係がドラマを生み、敵外道衆との関係性がドラマを生み、その相乗効果がかかっているとしか思えない。こういう年はまれである。そしてこの後で何が起こるかわからないというライブ感が、役者の皆さんの成長とあいまって、この「熱さ」を引き出しているのだろう。一見冗談としか見えない展開でも、見ているこちらよりも作り手が真剣に作り込んでいる、それが見え隠れするから、視聴者の側も楽しめる。ドラマはすでに折り返しを超え、6人目の仲間と、夏場のパワーアップを超えた。あとはキャラクター同士のドラマでどこまで畳み込めるかが勝負どころだ。今年は「シンケンジャー」という、このライブ感覚を心から楽しみたい。

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