それはきっと「絆」~「青い花」最終回に寄せて~

 過去ログによれば、「攻殻機動隊2.0」を取り上げたとき、素子と人形使いの関係を、男にはわかりづらい女性同士の特殊な関係と書いていた。このときに念頭にあったのは、今回とりあげる「青い花」のことだった。その「青い花」も、今期のアニメに先駆けて、先週最終回を迎えた。開始当初より原作に忠実にアニメ化されていたが、そもそも原作が終了していない状況下での最終回であったから、当然賛否両論あってしかるべきだろうが、いやいや意外なほど正攻法できれいに終わってくれた。

 物語は高校生になった万城目ふみと奥平あきらのふたりを中心とした日常のドラマだ。ふみは子供の頃から引っ込み思案な少女で、幼なじみのあきらにいつも面倒をかけていた様子。その二人もふみが引っ越すことで別れてしまったのだが、異なる高校に通うことになった二人が、通学のために電車を利用するために駅で再会するところから物語は始まる。妹思いの兄を毛嫌いしながら、元気に高校生活を楽しもうとするあきらにくらべると、ふみの日常は他人に流されてばかり。だがそんな高校生活で出会った先輩・杉本恭己という女学生と出会う。そしてさも自然の成り行きのように、ふみと恭己は恋に落ちるのだ。ところがこの恭己という女学生にはいろいろ因縁がありまして、かわいそうにふみは、彼女に振り回されるのだ。そんな中で再会した幼なじみであるあきらとふみは互いの学校を行き来しながら、旧交を温めあう。恭己の出演する学園祭の演劇や、恭己の姉の結婚式などの裏側で、恭己の実らぬ恋ゆえに、振り回されたふみは恭己とわかれることになる。そして最終回でついにふみは、自分の初恋の相手があきらであったことを思い出す。ホワイトクリスマスに包まれた鎌倉の早朝に、ふみはあきらへのあたたかな思いを噛みしめて涙する。

 物語の開巻当初で、いきなりふみは従姉妹の千津との肉体関係をほのめかすシーンが出てくる。その瞬間、一回視聴を止めたおじさんでしたが、なんとか最後まで見通すことができました(ばんざーい)。いやあ今時の深夜枠は、ここまでやるのかと驚いたんだけど、まあ作品的にはその部分を押し出すような作りではなかったから、心安らかに見れました。このあたり、月刊アフタヌーン連載の「オクターブ」(秋山はる著)では、芸能活動に失敗した女性が、心の隙を突かれるように一人の女性との関係(肉体関係含む)におぼれていく姿を考えれば、ふみや恭己の姿は清廉と言うしかない。
 なによりふみ役の高部あい嬢の声には、度肝を抜かれた。うまくはない。でもこのシンクロ度合いは何事か。何よりこの声を聞いたが最後、この声以外は考えられなくなってしまう。それは絶賛発売中の「青い花 公式読本(太田出版)」の監督インタビューでも、監督自身が語っているので、間違いないことである。あきらとふみのクラスメイトだけが少しかしましいが、あとのキャストははしゃがない声ばかり。それでもふみの声は異常なほど透き通って聞こえるし、なおかつイメージが広がりやすい。これはもう特殊な例だと言うしかない。それはやはり出会いの奇跡という他はない。

 さて本作で取り上げている「女性同士の恋愛関係」であるが、その歴史は意外に古い。最近発売された「マンガ・エロティクス・エフ 2009 vol.59」の「特集・青い花トリビュート」に寄せられているイラストの中で、よりにもよって田中圭一氏によって指摘されているが、「エースをねらえ」や「おにいさまへ」、ついでに言うと「ベルサイユのばら」なんかもそうだが、直接・間接の別にかかわらず、女性同士の擬似恋愛を描いているのは間違いない。近年では「マリア様が見てる」なんてのはまさにこの分野を広げた作品だろう。また以前より私がブログで指摘していた女の子ばかりの4コマ漫画アニメは、男女の恋愛要素を抜くことで守られている世界で構築されていたが、同時にそれは女性同士の恋愛を描く流れを暗示していたのかも知れない。そういう意味では「青い花」が登場する土壌はすでに醸成されていたわけだ。

 男性諸氏(女性のみなさんも)は考えてみて欲しい。世の中には残念ながら男と女しかおらんのである。ここに単純な組み合わせを考えれば、「男×女」、「男×男」、「女×女」の3パターンしかない。しかもここに年齢のファクター(どちらかが上か、まったく同年齢か)を考慮しても、7パターンしかないのだ。そしてこの内、いわゆる世間的に認知されているカップリングは3パターンしかない。その割合たるや約43%だ。5割にも満たないはかないカップリングの上に、人間の種の保存は成り立っているのだ。と、すれば残り57%が存在することを否定できないじゃありませんか。あ、いや別にどうでもいいんですけどね、こんな話。ただし「青い花」の原作者・志村貴子は、より多様な人間関係を「どうにかなる日々」という漫画で描いているのだから、意識しないわけにもいくまい。

 だからこの「青い花」で語られている「百合」というのは、人間同士の関係性の1種だとわかる。あったりまえだろとおっしゃるかも知れませんが、世の中には「BL」に嫌悪感をおもちの方々だっていらっしゃるだろう。だが先のカップリングの順列組み合わせを念頭におけば、「BL」ですら人間同士の関係性だと断言できる。そしてこここそが主張したいのであるが、その関係性において求められる感情そのものは、人それぞれなのである。それは友情であったり愛情であったり、連帯感であったり同士であったり。それを表現する言葉はいくらでもあるだろう。それを「絆」とよぶ。人が自分以外の他人との間に生まれた絆を、否定する事なんてできないだろう。たとえそれが負の感情であっても、それをひるがえすことすら容易ではない。そして「青い花」の主人公であるふみは、世間をおそれながらも、普通にその愛情を口にし、人との「絆」を心から信じ込める女性である。普通は隠してしまったり押し殺してしまう感情を、うまくコントロールしたりできなくても、恭己やあきらへの想いを素直に感じることができるヴィヴィットな感性の持ち主であるのだ。奇しくも先の公式読本には、OPの映像を監督した幾原邦彦氏がインタビューにて、この物語を「あなたはあなたのままでいい」という奇跡であると話している。つまり「青い花」とは、ふみがふみらしくいられる物語だということだ。実際この物語の結末は、ほとんどのキャラクターが自分を取り戻しておわるのだが、ふみだけは最初からスタンスが変わっていない。(ただし、ふみは受け身なので、一見するとずるい娘に見えるかもしれないが)

 本編では、ふみの想いを受け止めながら、自分の断ち切れない想いを抱えたままの恭己や、恭己の思い人に同じように恋をしながら何もできなかった恭己の姉達が登場する。結果的には比較的たおやかな二女が、おいしいところを全部かっさらっていくのであるが、この顛末1つとってしても、ふみの立場がない。だからといって恭己や姉たちの思いを否定する理由にはなりはしないだろう。だからこそドラマが成立しているといっていい。端から見るとほほえましいのだが、その中身が案外とどろどろしているなんて事は、現実にもありそうな話じゃないか。結局たった10話の物語の中で、2回も失恋したふみだったのだが、彼女の想いはあきらによって報われるというラストで幕を閉じる。これでよかった。だって恭己を恨んで泣き叫ぶふみなんか、だれも見たくはないからだ。

 公式読本の監督インタビューなどによれば、原作に足りない要素を付け足しながら、比較的情緒的な部分に時間を割いて作られたという。それは美しい鎌倉の風景や、女学生達の通う学舎の風景などが、背景と同時に彼女たちの過ごす時間まで活写しているからだろう。物語を追うだけであれば意外なほど切羽詰まった時間構成なのであるが、それを感じさせないゆったりとした描写と演出によって、鎌倉に流れる空気感まで表現されているようだ。
 そうした背景の中で生き生きと動くあきらやふみの物語は、幼なじみへの想いを再確認する物語であったというオチがつく。でもふみが感じた恭己への想いが嘘であったわけでもなし、そうしたふみの想いを受け止めた理由が、ふみのような気持ちではなくてもいいのだ。鎌倉という舞台で二人で過ごした時間こそが大事なのだということを、ラストの廃校の校舎が告げている。ドラマ「東京ラブストーリー」では、どうしてもカンチに届かないリカの想いが、愛媛の校舎に託されている。だから学校の柱に書いたカンチの名前の横に、リカは名前を刻みたかったのだろう。この逆が今回の例だとも言える。

 原作ではまだ連載中であるが、このアニメのラストの後であきらとふみがどうなるのかは、誰も知らない。だがふみの回想の中で、ふみよりも背の高い小学生のあきらの髪型は、ボーイッシュであった。それはそのままふみのあこがれの対象であり恭己の写し身だが、逆に小学生のふみの姿は、母性をくすぐる、あきらの「あこがれ」でもあったはずだ。そしてふたりの想いはめぐり、再会したということになる。第二期を望む声もあるだろうが、それはもう野暮というものだ。どんな結末を迎えるにせよ、ふたりがいつまでも仲良く暮らしてくれることを、切に願うばかりである。


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テーマ : 青い花
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コメント

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いままで借りるのが恥ずかしくてスルーしてましたが、マリ見てを見ないとこの世界を語れない気がするので見てみます。

No title

>とぴろさま
 コメントありがとうございます。私も「マリ見て」は第1シーズンしか見てませんよ。ただ最近「百合」ものが多くなってきている傾向にあります。「かなめも」なんかはかなりきわどくやってますし。漫画も最近はその手のものが気になります。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
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後期必殺を好み、
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