「リング・オブ・ガンダム」の高揚

 Gyaoで無料配信中の「リング・オブ・ガンダム」をご覧になっただろうか? わずか5分映像であったが、フルCGで描かれた映像、モデリングされたガンダム、見たこともないモビルスーツ、「アムロの遺産」などの見知らぬ言葉がちりばめられ、なにかこう、自分の中で気持ちが高揚してくるのを抑えられない映像であった。

http://gyao.yahoo.co.jp/p/00762/v07933/

 物語はよくわからない。どうやらエイジという名の男性主人公が「メモリー」を奪取し、人類救済のために役立てようとしているらしい。エイジの目の前で突如開いたメモリーは、金色の長髪の美少女の姿で現れ、メモリーの解析のためには、「アムロの遺産」とリンクさせる必要があると告げる。
 タイトルが示された後でシーンが変わり、横になっていたガンダムが立ち上がる。どうやらエイジが隠されていたガンダムを起動させたように見える。ハッチは開いたままだ。必至にコントロールを試みるエイジ。そこに一人の女性兵士がハッチに飛び込んでくる。コクピットないでもみ合いになる二人。だがガンダムはおかまいなしに、頭上にビームライフルを発射して、そこから逃げ出そうとしている。
 コロニー内部と見られる夕景の中で、見たこともないモビルスーツと戦闘になる。そしてモビルスーツの爆発の余波で、コロニーの一部が破壊される。この期に乗じて宇宙に出るガンダム。「ああ、また怒った、また怒った」という声がする。宇宙に出たガンダムの背景には、月を中心としたリング上のコロニーが見える。エイジの語りによれば、メモリーは「ビューティーメモリー」という正式名称らしい。そしてメモリーが怒っていたという。エイジの膝に座る女性兵士は、今回の騒動で「アムロの遺産」が目覚める可能性を示唆する。
 宇宙に破棄されたようなマシンの上で、武装解除させられるガンダム。マシーンのハッチから出てきた小型の隕石をガンダムが手にしたとき、人類の謎が隠されたメモリーが現れた!

 とりあえずシーンを追うように説明しては見たが、いやもう、その映像だけでは、なんのことか全くわからない。だがフルCGでガンダムを動かしたり、MS戦を見せようというだけではなく、最初のガンダムから「ターンエー」までの世界からも、大きくかけ離れた世界で物語を構築しようとしていることは明らかだ。しかもどことなくサンライズという会社が作ってきたロボットアニメの遺産を、ふんだんにつぎ込んでいるイメージがある。
 
 例えば最初のカットで、エイジがビューティーメモリーを求めて、いやにとがった山を登るとき、エイジがマントをかぶっている。この姿、「メロウリンク」を思い出さないか? あるいは「ザブングル」でもいい。メモリーの女性の姿が消えた後で出てくるモビルスーツは、まったくこれまでと異なるデザインラインを見せてはいるが、やはりサポートマシンに乗っている。「Zガンダム」以降のMSの移動スタイルだ。ガンダムもほぼ純白のカラーでまとめられている。この「白いガンダム」って、まるでZガンダムの準備稿にある、永野護の書いたZガンダムのイメージを想起させる。外に飛び出そうと勝手に動いているガンダムがビームライフルを発射するシーンは、有名なラストシューティングに他ならない。そして隕石から現れたカプセルの中にいる女性、まさに「ボトムズ」の1話に出てくる「プロトワン」の姿に酷似している。

 本作は久しぶりの富野由悠希監督の登板である。いままで手書きの絵によるアニメーションを制作してきた富野監督が、いまこうしてフルCGの作品を作ることの意味を考えるべきだろうか? しかしこれはどう見ても、過去のサンライズロボットアニメのいいとこ取りをしようとしているかに見える。いや「ターンエー」を念頭におけば、すべてを包括しようとしているのか。当然のことながら、ただの借用では済まさないレベルに落とし込まれているのだが。その上で富野監督のやりたいことも表面化してはいる。
 コロニー内での戦闘に、ガンダムはビームサーベルを抜き払い、謎のMSの武器を破壊することで、無力化しようとする。これに謎のMSは、盾に仕込まれた武装で対抗しようとしている。この戦闘のやりとりは、「逆襲のシャア」以降では、よく見られた戦闘シークエンスである。そもそも内部武装がほとんど無いMSの性格上、敵を無力化するためにとる戦法であるのだ。これをCGで見せるのだ。
 CGで書かれたロボットには味がない。それはフレームでくまれた間接に従って動かすことが主体であるため、手書きで書く、「こんな動きは、あり得ない」という作画や演出上のサプライズを組み込みにくいためだ。最近物故された金田伊功氏の仕事を念頭におけば理解していただけると思う。今回のガンダムのMS戦も、ご多分に漏れずこの傾向にあるのだが、それでも若干のパースとカメラ目線の誘導により、迫力ある戦闘シーンに仕上がっているように思える。

 そして特筆すべきは人がふれあうシーンだ。私が気がついたぐらいだから、見ていただければすぐにわかるだろう。ガンダムのコクピットに乗っているエイジと女性兵士のシーンで、女性兵士はエイジの片膝にまたがって座っている。そして女性兵士の左手が、エイジの膝におかれている。わずか数秒のシーンであるが、CGにもかかわらず、なんと暖かで、なまめかしいシーンであろうか。ぶちゃけエロいんだよな。「逆襲のシャア」で、月のアナハイムから戻るアムロとチェーンが、ガンダムのコックピットにいるときを思い出して欲しい。補助具をつけていたでしょ。これに比べると、あのシーンがどんだけなまめかしいか。女性兵士の左手は、エイジへの信頼も含んでいるだろう。また顔を見合わせず、女性兵士が背中をエイジに預けて話すシーンも同様だ。人のつながりを信じられると、ふと感じてしまうシーンだ。

 そしてメモリーは語る。「新しい地球に、アムロの遺産とリンクして得られた記憶を届けられる。絶望しなければね」と。メモリーのカプセルが螺旋状の光をまとっていることも、人の遺伝子を想起させる。
 なにかこれからの社会を想像させるシーンである。たとえば人間の遺伝子は、驚くほど余計な情報を持っているという。現在アーカイブ化された情報は、ネットワークの中でいつでも参照できる仕組みにはなっているが、それが実生活に必要のない余分な情報となったと判断されたとき、それはネットから隔絶された、失われた情報になるのではないか? 「アムロの遺産」は故意ではなく、なんとなく時代に埋もれていったのではないだろうか? そして再び人間が人間らしい生き方を模索し始めたとき、「アムロの遺産」が役に立つ情報になるのではないかと悟った、新しい人類の物語ではないのか? まったくの手探りながら、ふとそんなことを考えてしまう。

 なにせ無料であるので、見られる間に見ておいた方がお得である。いずれは何かのDVDなどに収録される事もあるだろう。きっとテレビモニターで見る方が迫力もあるだろう。けれどとりあえずは、今このときしか見ることができない映像を、今見ておくことが肝要だ。それは同時代での共通体験である。ネットの時代となった今では、すべてがアーカイブ化され、過去の映像を見ることが可能である。だがその時に時代のフラッグとなるものは、その時代にしか存在しないお祭りだ。しかも富野由悠希という希代のアニメ監督が仕掛けたお祭りである。その祭りに参加しない手はないだろう。祭りとはまた、コミュニティの持つ共通体験であり、人が呼び覚まされる高揚感そのものだ。いかにネットが広大だろうとも、それを操る側の人間が、大きく変わるはずもない。そんな祭りの時ぐらい、人は流れに乗ればいい。
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テーマ : 機動戦士ガンダム
ジャンル : アニメ・コミック

コメント

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自分は小説からガンダムにハマったのですが、この世は自分の思った通りにはならないし色んな思想が世界を動かしているんだというメッセージが隠されている気がしました。 

基本的にCGは苦手なのですがマクロス0は感動しました。 ストーリーは…ですけど。 

こんな作品があるなんて知りませんでした。 
見てみます。 

本当に感謝です。

No title

「様々な思想が世界を動かしている」というくだりには感銘を受けます。そんな思想や考え方の食い違いが戦争を起こしている。戦争とはエゴのぶつかり合いだと教えてくれたのは、教科書ではなく、ガンダムでした。
 実はマクロス0が未見なもので、ソフト自体はあるのですが、これをきっかけに見てみます。お互い様ですね。こちらこそありがとうございます。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
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