スペクタクル映画の構成~「東京マグニチュード8.0」最終回に寄せて~

 徐々に今期のアニメシリーズが最終回を迎えている。昨日終了したのは「東京マグニチュード8.0」である。東京湾岸で海溝を震源とする大地震が発生、お台場に遊びに来ていた姉弟は、はたして自宅までたどり着くかという物語だ。第1話のラストで、いきなり大地震に遭遇する。そしてお台場から見える風景が壊れていく。この風景にものすごい興奮を覚えた。

 元々建設にたずさわる会社に勤務していた私にとって、地震災害はかなり身近なものであった。中越地震や能登地震の時には現場の視察にも行った。だから地震による被害の大きさが、記憶とダブるし、物語の途中で発生する余震の恐ろしさは、身をもって体感している。そういう意味も含めて、この作品には大いに期待していたし、その期待は序盤の数話における東京の被害風景で、十分に報われていると感じている。それはあり得ないとはいえない程の、そしていつかは覚悟を決めておかなければいけない事態を、アニメーションにより描いたことで、映像技術が現実を超えた実感が持てたことにも直結する。

 建設に関わる人間の目から見たら、この被害や震災風景はどのように見えているのだろう。国土交通省が発行している書籍などで公開している災害マニュアルなどを見ると、どうも本作で描かれた被害はかなり尋常ではない被害を映像化しているようにも見える。お台場あたりに建設されている建物の多くは、新しい建築基準に則って作られているし、耐震設計だって盛り込まれている。地盤に対する技術も年々高度化し、地盤改良によるより強固な地盤としての改良もなされているだろう。だが事は自然の起こすことだ。どこで液状化し、想定以上の地盤のゆるみが発生し、倒壊するかは、起きてみなければわからない。また東京タワーの倒壊も、本編の見所であったが、あの下町の雰囲気を残す人口密集地域には、耐震の考え方が行き渡ってはいない。あのようなタワーの倒壊が絵空事であったとしても、その危険性を感じることを、否定する言葉はないはずだ。レインボーブリッジの破壊シーンなどは、模型での風洞実験を超えるような揺れが、あのような破壊風景につながったと想像させる。それはレインボーブリッジの設計をある程度理解した上で、あのような破壊状況が組み込まれていることを示している。建設関連の現場では、様々な条件を抽出してシミュレーションをする。その成果があの破壊のシーンにそれとなくつながっているようにも感じられる。そうした感慨を元に、あの映像が具体性と説得力をもって私自身の目に飛び込んできたのだ。

 この物語はスペクタクル映画の列に入るのだろう。だが通常のスペクタクル映画がその構成上、最後に最大のスペクタクルが来るように配置されているのに対し、本作は先にスペクタクルを示しておき、その後にその状況におかれた人を活写する構成をとっている。日本が誇るSF大作である「日本沈没」が、いずれ日本が沈没する状況を想定し、日本人がそれに対処するまでを克明に描いた後で、日本が沈没する映像を見せて終わるという構成を考えれば比較しやすいだろう。スペクタクル映画の場合は、ラストに最大のエモーションを発生させるためにこのような配置になっている。この事実から考えても、本作がこれと同様にスペクタクル部分を見せるための作品ではないことがわかる。本作で主張したいもの、それは最大のスペクタクルに巻き込まれた人間が、どう生き残っていくかだ。

 物語は破壊のスペクタクルのあと、未来と悠貴という姉弟が、一人のお姉さん・真理と一緒に三軒茶屋に帰宅しようと、破壊された東京を移動する。その過程で倒壊寸前の建物の危険、救急医療の現場、災害救助の実態、情報や物資の流通など、大地震が起こった後のシミュレーションが描かれている。特に最終回までの流れとして、真理とのゆきちがいや弟の悠貴の生死などが交錯する。災害シミュレーションのドラマとしては、非常に見応えのあるストーリー展開であるのだが、アニメーションとしてはかなり重い。しかもラストシークエンスでは、悠貴は死んだことが発覚する。最終回のエピローグで、悠貴や姉・未来の学校の教室に、空いたままの席があるなどの描写は、やはり胸に突き刺さる。
 最終的には子供を顧みない両親と無気力な生活をしてきた今時の女子中学生が、大規模地震で弟を亡くしたことで、家族が再生する物語に見えるし、だれもが作品開始当初からそういう作品であることを想定しただろう。物語のまとめとしては、そうならざるを得なかったのだろう。それを予定調和だということも可能かもしれない。だがここではあえて、自身のとなりに控えている「大地震」という災害により、隣人がいなくなるという、あたりまえの可能性に考えを巡らせるべきだろう。

 災害の代弁者になりうる怪獣すら、その対象とならなくなり、そのくせ日常的に地震が発生する火山国に生まれながら、他所での災害を対岸の火事程度に考えている日本人にとって、この作品はやはり生まれるべくして生まれた作品だ。例えばこれを映画として2時間程度の尺にまとめるなら、映画の構成としても申し分ないものが作ることができる気がする。どうしても長く中だるみしたように感じられる部分も、2時間程度の尺に納められればベストだろう。またキャラクターが簡素であったから、その分演技やエピソードに比重がかかり、姉・未来のキャラクターが受け入れがたいものであった。だとしても、短縮版ならそれをカバーできる可能性もある。本当の意味で地震災害と隣り合わせで暮らしている事実を知ってもらうべく、本作をできるだけ多くの人に知ってもらいたいと願っている。

東京マグニチュード8.0 (初回限定生産版) 第1巻 [BD] [Blu-ray]東京マグニチュード8.0 (初回限定生産版) 第1巻 [BD] [Blu-ray]
(2009/10/28)
花村怜美小林由美子

商品詳細を見る

スポンサーサイト

テーマ : 東京マグニチュード8.0
ジャンル : アニメ・コミック

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

レインボーポップ

レインボーポップの最新動画や評価レビュー、攻略情報なら「レインボーポップ」へ!

コメント

非公開コメント

プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
Twitter再開しました!

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
namima2のつぶやき
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
リンク(リンクフリーです)
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
FC2 Blog Ranking
フリーエリア
blogram投票ボタン
ブロとも一覧

あにめにゅ~す の あににゅ

分水嶺☆大分のお土産といえば『ざびえる』

素足のアイドル達

有名人の珍言・名言集

宮廷アリス

TOY BOX
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

[FC2 Analyzer] http://analyzer.fc2.com/ -->