実写CG映画の検討課題~映画「ヤッターマン」~

 今年の春に劇場公開された映画「ヤッターマン」。映画としては出来が良く、三池監督こだわりの映像表現に、なによりも深田恭子演ずるドロンジョのルックスも手伝って、日本ではそれなりに大ヒットした映画だ。やや尺が長すぎるとか、深田恭子愛にあふれるばかりにラブストーリーを持ち込んでしまったりと、私自身が気になるところは多々あるけれど、大いに楽しんで見た映画だ。ほぼ同時期に公開されていた「ドラゴンボール エボリューション」の評判だけを信じれば、どちらがより楽しめたのかは、考えるまでもないだろう。
 そのDVDが先頃発売された。見直してもやはり尺の長さが気になるし、物語の中心にラブストーリーを据える理由が、ドロンジョよりも「深田恭子愛」に偏った結果としか思えない。ただしそれを補ってあまりあるビジュアルや、俳優陣のがんばりを考慮すれば、それとて大した問題点とはならないだろう。エンターテイメントとしては十分楽しい1作であった。

 この「ヤッターマン」を例に出すまでもなく、ハリウッドの大作を主軸として、昨今の劇場用映画では、こうしたCGによって作り出された迫力ある映像をメインに据えた作品が多く見受けられる。CG(より正確には3D-CG)を用いる映像技術は、ここ10年で飛躍的な進化をとげた。そのことにより、かつての特撮技術では表現そのものが不可能であったことが、安価でできるようになり、映画制作者のイマジネーションは、さらに拡大する。それゆえにアニメやマンガなどでしか表現できなかった映像が、かくもあざやかに実写映像と融合し、劇場用映画として見られることとなった。かつてさまざまな映像技術で私たちを楽しませてきた「スーパーマン」や「バットマン」、「スパイダーマン」などのアメコミヒーローの映画などがCGを利用して作られたり、日本でも「デビルマン」や「キャシャーン」が映像化される一方で、「宇宙戦艦ヤマト」が実写映画として製作されるらしい。
 その反対側で、こうしたCGを多用する映画が数多くある中でも、ダメな映画は確実に存在するのだ。では実写CG映画がきちんと成立するためには、何が必要なのか?

 実写である以上は、その映像は現行社会風景と地続きである必要がある。また人間の役者が演技することを必要以上に意識することだ。そのためにデザインの善し悪しは、映画の正否を大きく左右する要因となってしまう。
 映画「ヤッターマン」のすばらしさは、背景美術がきちんと作り起こされていることだ。開巻当初の渋谷ににせて作り込まれた町の様子は、オープンセットで作られ、そこで役者を演技させた映像素材に、さらに背景を加えることで成立している。舞台としての渋谷の町並みは、アニメの背景なみに作り込まれており、そこに映像を重ねるという手法そのものが、アニメと同様の手法で作られている。ここを省力化して、借景で作られたとしよう。ヤッターマンやドロンボーの格好をした人が、ごちゃごちゃと演技しているだけに止まってしまう。これでは単なるコスプレ劇だ。それを背景に嘘を仕込むように作り込むことで、アニメを実写化したような映像表現に昇華させることができるのだ。またヤッターマンの場合には、キャラクターデザインと背景デザインが食い違うこともない。これも見ている側にビジュアルコンセプトが伝わりやすく、受け入れやすいことにつながるだろう。これを大きく怠ったのが、東映で制作された「デビルマン」だ。日常の中に悪魔と人が入り乱れ、悪魔人間(デビルマン)となった生物が、日常の風景の中にいる表現をしたかったのかも知れない。この場合、空を暗転させるだけでもおどろおどろしさが増すはずなのに、晴天の下でデビルマンたちが活動している。怖さもへったくれもない。恐怖を演出するために、緑がかった暗い部屋を成立させた「リング」シリーズなどを思い起こせば、その差はより明確になるだろう。

 人の話はもっと単純だ。実写映画であるのだから、人間が演技をする。どれだけCGが活用されていても、キャラクターだけは人間が演じるのである。ところが背景などをCGで作り込むために、そういった演技は合成素材となり、実際の風景の中で演技できる訳ではない。その多くはブルーやグリーンのシートを広げた、合成素材を撮影するスタジオの中で演技することになる。人間の演技は背景と密接に影響し合う。「ここは海という設定です」と言われて、「山の中」で演技することを考えてもらえばいい。潮の香りを感じられない場所で、海にいる演技ができるだろうか? だからこそセットの中で撮影するテレビ作品があることを念頭におけば、それがいかに無理な話であることか。「スターウォーズ エピソード3」の映像特典でも、ラストのオビワンとアナキンの剣劇シーンを、グリーンの背景の広いスタジオで撮影している様子が収録されている。彼らのような演技が卓越した人でも、ああしたスタジオでの演技には苦労を強いられるという。「ヤッターマン」レベルの役者ではいわんをや。だから合成素材撮影用のスタジオでも、できるだけ雰囲気を残すように、セットが配置してあるのだ。こうした雰囲気作りだけでも、彼ら若い役者にとっては、演技の助けになるだろう。それをできないのであれば、監督自身のイマジネーションを信じるしかない。その結果、監督の独りよがりな映像が出来上がる。それでも「キャシャーン」のように、監督の脳内イマジネーションが確固たるものであれば問題ないだろうが、果たしてそれらがすべて観客に受け入れられるか、勝負しなくてはならなくなる。だがそれを観客に強いることは、すでにエンターテイメントではないだろう。

 「ヤッターマン」は、そうした点をきちんとクリアしている。できるかぎりを作り込むことで、役者やスタッフがその気になるし、なによりそういう世界観に観客が素直に引き込まれる。そうした努力を怠らなかった作品は、いかに荒唐無稽で、デタラメで、つじつまなどがあっていなかろうが、ちゃんと観客に受け入れられることを証明している。「ヤッターマン」という素材の良さが、的確なスタッフによりうまく調理され、上手に受け入れられた。それはエンターテイメントとして幸せなことだ。「X-MEN」シリーズや「ファンタスティック・フォー」、最近では「アイアンマン」など、こうしたハリウッド作品が日本でも受け入れられていることを考えれば、「ヤッターマン」は日本映画で初めてその境地に達した映画だとも言えるだろう。そうなるとあとは脚本の問題だけが残る。だがこここそは日本人のメンタリティが成せる重要部分であるから、大味のハリウッド映画のまねをすることはない。胸をはって日本映画であることを主張するほうがいいだろう。

 日本映画では、「カムイ外伝」などの時代劇でもCGが多用される。ただしそれが無理なくアクションをするためのワイヤーアクションをごまかすだけのCGでは、全く意味がない。日本の風土に根ざした映像を作るのであるなら、まだまだ研究の余地はあるだろう。しかも「宇宙戦艦ヤマト」まで控えている。少しの期待と多くの不安を持って、その映像の完成を楽しみに待ちたいと思う。


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櫻井 翔深田恭子

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テーマ : DVDで観た映画
ジャンル : 映画

コメント

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映画を視聴してない身として大変恐縮ですが。

ヤッターマンはタイムボカンシリーズでありながら独自の流れを作っていると思うのです。例えばリメイク版や夜ノ~はタイムボカンシリーズの冠を付けてなかったと思います。

実写のような勝負を打てるのもそれだけ知名度を持っているからというのもありますし、自由にやれる柔軟性に富んでいるとも言えますね。
元祖タイムボカンを実写化したりしたらそれは難航したでしょうね。(24も観始めてます)

そのチャレンジ精神はリメイクの劇場版にもみられる気がします。
『新ヤッターメカ大集合!オモチャの国で大決戦だコロン!』は、おもちゃのテーマパークを経営する王国が裏切り者の大臣に乗っ取られ、ヤッターワンの兄弟機ゼロがヤッターマンと戦うことになる。
ゼロを作った父が裏切ったのではと苦悩するガンちゃん。
サイコな独裁者、肉親との対立(ゴロー将軍のよう)、ドロンボーの一時的協力。あまりヤッターマンに見られないテイストであり、夜のヤッターマンとの共通点もあり興味深い作品でした。
ドロンボー抜きでも成立しそうなヤッターマンという画期的作品です。

ヤッターマンというコンテンツ

TTさま
 コメントありがとうございます。
 ヤッターマンというコンテンツがタイムボカンシリーズを逸脱してちょっと特殊な位置を確保し始めたのは、最初のアニメが1年を超えるロングランを果たした時点で、そう決定づけられてたのかなとは思います。シリーズが継続したこと、シリーズ終了後でもスピンオフができたこと、ひな形が出来上がっていれば、正義と悪がひっくり返っていても物語が成立すること(ex.きらめきマン)など、ヤッターマンが成し遂げた項目は圧倒的であるとすらいえます。
 劇場版はレンタルで見ましたが、とても興奮したのと、これを見たのが私自身がもっと小さな子供だったら、この興奮はもっと大きかっただろうと思います。映画ドラえもんでのび太に手を貸すジャイアンがいるように、カリオストロでルパンに手を貸す銭形がいるように。だからこの作品の感想としては、どうしても自身のオタクとしてのすれっからし感(笑)しか感じなかったので、記事にはしませんでしたw

 コメを寄せていただいた実写版ヤッターマンですが、これもシリーズから逸脱した点では、TTさんのおっしゃるようにリメイク版や夜ノと同じだと思えます。その証拠に、シリーズを知らなくても楽しめるコンテンツだからです。もちろん知っていればより楽しめる。しかもそれとなく、シリーズを見続けてきた人にしかわからないネタも織り込まれているあたりの用意周到さなど、ツボは押さえまくりの作品です。櫻井翔が嫌いとか出なければ、決して見て損しませんよ。
プロフィール

波のまにまに☆

Author:波のまにまに☆
東京都出身
43歳になりました 
妻一人

戦隊シリーズをこよなく
愛する、男オタ。
特撮は主食、
アニメは副菜。
後期必殺を好み、
スタートレックは
ピカード艦長が大好物。
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